はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

ホンデリング

2013-11-21 21:55:14 | アカショウビンのつぶやき

ある団体から、「ホンデリングはじめます!」
と言う連絡がきた。

初めて聞く言葉に?

「本で広げる支援の輪」

 ホンデリングとは、みなさんから本を
寄贈していただき、その売却代金相当額
を寄付として、当センターの支援活動に
役立てるものです。

とある。
いつか暇ができたら、読もうと買いこんだ本は、ツンドク状態。
時々処分はするのだが、いつの間にか本棚からあふれそう…。
終活も目前の歳になったアカショウビン。

早速、段ボール箱一杯を寄付することにした。
鹿児島犯罪被害者支援センターから、取りに来て下さった。
寄付額は640円。
僅かだが、後ろめたい思いで処分するより、
誰かの役にたった事がうれしい。

友人にも声をかけ、少しずつ支援の輪を広げていきたい。と願う。

2013-11-21 21:35:45 | はがき随筆
 久しぶりに可愛い孫を抱き、娘のお供をして、鹿児島市の天文館を歩いた。
 すると、果実店の前で、籠の器に柿が5個入っており、300円と書いてあった。
 安いので、「買おう」と言ったら、娘から言われ、300円の下に小さく(1個)と値段がついていたのに初めて気がついた。
 ああ、もう少しで1個300円の柿を買うところであった。
 田舎に行けば、軒先の柿の木に数えきれないほど、柿の実がなっていることを思い出し、安堵した。
  鹿児島市 下内幸一 2013/11/21 毎日新聞鹿児島版掲載

あの日の日記

2013-11-21 21:21:28 | はがき随筆


 小さな棚田で稲の脱穀を手伝ってもらい、新米の収穫が終わった。籾から外れたワラを囲み、お茶しながら昔話に花が咲いた。秋の遊び道具といえば、ワラコズン。僕たちはドシとこのワラコズンに登っては、トッオジイの繰り返しで遊んでいた。
 すると「コラ! ワイドマ、ナイゴツか?」とガラレタものである。子ども会での努力目標は「ワラコズンに乗らない」だったが、守ることなく、友達が集まると何かが始まっていた。
 心の豊かな時代で時間がゆったりと流れ、多くのことを自然と遊びから学んだ気がする。この時代の流れに驚いている。
  さつま町 小向井一成 2013/11/20 毎日新聞鹿児島版掲載

写真

2013-11-21 21:16:09 | はがき随筆
 たれた眉、しわの目立つ張りのない顔。この世に恨みでもあるかのようなさえない表情。自分の写真にがっかりする。「きっと、写りが悪いだけ」と孫の写真を見ると、実物と全く変わらない。どれを見ても生き生きとして実物そのものである。
 ということは、私の実物は写真そのものと認めざるをえない。できれば処分したいが、昔の人のようにそこに魂があるようで、それはできない。
 普段もこんな顔しているのだろうか。先人たちの苦難の歴史のはてに、やっとたどり着いた平和で豊かな世。笑顔で生きなくては申し訳ない。
  出水市 塩田きぬ子 2013/11/19 毎日新聞鹿児島版掲載

朝はどこから

2013-11-21 21:06:00 | はがき随筆
 朝はどこから来るかしら。あの山越えて、野を越えて……。朝はカタカタ野菜を刻む音から始まる。真心こもったおみそ汁をこしらえる。父さんの朝食は食パンと牛乳、目玉焼きに果物と、私はできたてのおみそ汁、白飯一膳をいただく。
 「至福のひととき」。いつも明るい台所の家庭から朝が来る。近所のごみ収集場にごみを置く。空に目をやると、スズメたちが電線を貸し切ったように横一線にはばかっている。楽譜の五線上に“フラット”が並列に……。スズメたちよ、朝は山や川や電線から来たのだろう。おはよう、おはよう!
  姶良市 堀美代子 2013/11/18 毎日新聞鹿児島版掲載

皇帝ひまわり

2013-11-21 15:41:44 | はがき随筆

 晩秋に花開く皇帝ひまわりを仰ぎ見る。天高く伸び、きっと空から夫も眺めていると信じて。
 そんな中、キャリーバッグを引いて孫娘が来た。「昨夜から何も食べていない」と元気がない。歩いてきたようで、すわっ、「家出か」と胸が騒ぐ。高校2年、文武両道の自慢の孫である。娘に電話すると「うん、ちょっとね」と言葉を濁す。母親と感情的にぶつかったらしい。2日程寝食を共にし、本人曰く「“山村留学”楽しかった」と帰って行った。
 ひまわりも一層輝きを増し、皆を見守っているかのよう。
  出水市 伊尻清子 2013/11/17 毎日新聞鹿児島版掲載

ヤー、久しぶり

2013-11-21 15:33:58 | はがき随筆
 10月半ばの早朝、家内が大きな声で「お待ちかねの方が、来てますよ!」と私を呼ぶ。時計を見るとまだ午前5時半にもなっていない。「誰が?」と聞くと「ほら、ほら呼んでますよ」と言う。びっくりして起きて行ってみると、何とお待ちかねの方は、ジョウビタキであった。
 毎年、秋の深まりとともに夫婦で訪れ、冬が終わるまで我が家に滞在してくれる。
 姿はとても美しいのに、呼んでくれる声はそうでもない。
 でも、会う度に泣きながら、頭を下げてあいさつをしてくれるから好きだ。
 来年まで、またよろしく!
  志布志市 一木法明 2013/11/23 毎日新聞鹿児島版掲載

28年目の独り

2013-11-21 15:26:21 | はがき随筆
 秋も順調に深まり、朝夕の気配はまるであの猛暑を忘れてしまう。11月1日で結婚52年目。しかし、夫の早逝で子供たちとの生活。
 花屋で赤紫のトルコキキョウに出合い、4束買い、お供えする。上品な色調にすっかり感慨を深め、夫への供華と、一人喜んだ。
 3人が9人になった家族の絵を椅子に置いて「こんなに増えました」と独りごち。明るく、今しばし灰の降らない昼の光に窓も開けた。
 そのうえ、モクセイは時を得て、花と香りの風情を加えて心満ちる28年目の独りである。
  鹿児島市 東郷久子 2013/11/15 毎日新聞鹿児島版掲載

告知

2013-11-21 14:54:35 | はがき随筆
 常に穏やかな人柄に好感を持っていた知人から、不治の病であると知らされた。
 思いがけない事実に我が耳を疑った。手術後、転移が分かり、天に召されるのも遠くないと知る。自分も気落ちし、驚きと寂しさ、残念な気持ちが入り混じった複雑な心境だった。
 今も、病気とご夫婦で闘っておられ、私のできることは笑顔で励ますこと? すさまじいまでの抗がん剤の副作用に、ただただ頑張れと心の中で応援するしかない。「何かあったら夜中でもたたき起こして。すぐに車を出すから」とだけ伝えるのが精いっぱいだった。
  鹿屋市 中鶴裕子 2013/11/14 毎日新聞鹿児島版掲載