はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

喜寿むなし

2006-10-24 08:12:42 | はがき随筆
 10月はじめ喜寿を迎えた。
 仏壇に灯明をあげて、一人でサバの刺し身と、焼酎で乾杯する。
 戦争の恐ろしさも体験した。戦後、不治と言われた病も得たが助かった。
 よく生きのびてきたものだ。
 戦死した友の顔や闘病の果てに逝った友を思うと、なぜかむなしくなる。
 窓際で鳴いていたちちろが、はたとやみ宅急便が来た。娘からだ。包みを開くと、エッセー教室に通うのに、欲しいと思っていた黒いカバンだ。
 子供一同とある。あいつら父がいることを忘れてはいなかったらしい。
 喜寿むなし一人の宴にちちろ鳴き
   鹿児島市 福元啓刀(77) 2006/10/24 掲載