はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

別れのとき

2006-10-22 21:39:14 | はがき随筆
 夫が急性心不全であの世に旅立って、25年目に入った。
 まだ帰ってくるような気がして、遺品の多くが手付かずになっている。
 3人の子どもたちが、
 「そろそろ片付けようかねえ」と、口をそろえて言った。
 この本は見ないだろうか。ピアノは捨てがたいなあ。家具は要らないかな。この家には誰かが入らないだろうか。
 子どもたちと相談をしながら始めるが、はかどらない。
 「思い切らないと大変だよ」
 思い出の品々との別れは、風に傷められたコスモスを見る思いがする。
   阿久根市 別枝由井(54) 2006/10/22 掲載

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