はがき随筆・鹿児島

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「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

吾が子飛ばしつ

2006-10-26 12:51:08 | はがき随筆
以前読んだ万葉集の山上憶良のばん歌を再読してみた。……命絶えぬれ 立ち躍り 足すり叫び 伏し仰ぎ 胸打ち嘆き 手に持てる 吾が子飛ばしつ……。病死した我が子を抱いて、憶良の悲しみはすさまじい。狂わんばかりに身体を動かしている。「吾が子飛ばしつ」を私はあの世に霊を飛ばしてしまった、すまないことをした、と受け取った。当時、異界はどのように表象されていたかは知らない。しかし、彼の情はそれを突き抜け、時代を超えて私たちに届く。ある母が我が子を邪険にして橋から突き飛ばしたという報道を見た。うそであってほしい。
   出水市 松尾 繁(71) 2006/10/26 掲載
写真はH.ozakiさんよりお借りしました。 

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