はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

孫の成長

2008-05-13 21:15:36 | はがき随筆
 鹿児島市少年空手道大会が県体育館であった。日ごろの練習の成果を、と小学4年生の孫も出場した。
 同じ日、6歳の弟のサッカーの試合があり、その応援へ出向いた娘のもとに、勝ち進んでいく空手道会場からのメールが届き、興奮する。娘は「行かないで」と涙の弟を置いて、応援に桜島から駆けつけた。急ぎ電話をもらった私もタクシーを飛ばし、決勝戦を応援した。
 微熱、頭痛をおしての準優勝は立派なものだった。
 「継続は力なり」と、県大会へのさらなる意欲を見せる、孫であった。
   鹿児島市 竹之内美知子(74) 2008/5/13 毎日新聞鹿児島版掲載

07年はがき随筆年間賞

2008-05-13 18:29:14 | 受賞作品
年間賞に松永さん
 07年「はがき随筆」年間賞に阿久根市大川、松永修行さん(81)の「充実の一日」(昨年10月27日掲載)が決まった。表彰式は18日午前10時半から、鹿児島市勤労者交流センターである。松永さんに喜びの声を聞いた。【馬場茂】
母校の運動会、鮮やかに描写
 「立派な賞を頂くことになり、うれしいやら驚くやら……」。少し照れながらも顔をほころばせる。
 受賞作は母校・大川小が舞台。50歳を迎えた大人たちが小学生と健脚を競う同市恒例行事「華の50歳組」運動会だ。〈児童の足が黒光りして〉の描写が示す細やかな観察眼、的確な表現力が評価された。「子供たちは毎日暑い中、よほど練習したんだろうと足を見て分かったんです。人数も少ないから大人より何回も多く走らされ、大変だったねえ、と」
 学徒通信兵として知覧の陸軍部隊で終戦を迎えた。「特攻基地にいたのに出撃を知らなかった。極秘だったから。同年代が見送る人も少ない中、死んでいった」。戦後、福岡外事専門学校(現・福岡大)で学び直し、40年近くの北薩の中学で英語を教えた。
 妻を亡くした4年前の夏、庭で羽が傷ついたセミを見つけた。このままでは死ぬ。羽をテープでくっつけ枝に戻した時の様子を描いたのが掲載第1作。「たとえ小さくても、命がとても大切に感じられたのでしょうか」
 少年時代から本好きで、今も図書館で月10冊以上借り、ジャンルを問わず読破する。日課は好きな詩吟を朗詠しながら近くの渚を裸足で歩くこと。足の裏で水温上昇、地球温暖化を感じるという。
 「若い時見えなかったことが年を取ると見えてくる。題材はたくさんあるのに書く時間がなくて」。旺盛な好奇心と鋭い観察眼の持ち主は、表彰式当日、82歳の誕生日を迎える。
 
持ち前の感性光る
 [評]
 松永さんは、母校と思われる阿久根市・大川小の運動会に参加しました。
その時、元気な子供たちと青々と長く伸びたヘチマが目に飛び込んできたのです。そのことを「出迎えてもらった」と感じました。いいですね。持ち前の感性で文章を表現しました。〈児童の足が黒光りして〉と細やかに描いています。
 プログラムの内容は、児童たちや〈華の50歳〉を迎えた卒業生、地域住民の総参加の様子を、分かりやすくしかも映像でも見ているかのように鮮やかに映し出しています。
 松永さんはこの日の運動会を〈特筆できるイベント〉とまとめました。少子社会の子どもたちへ、力強く元気に育つことを期待しています。今のせわしない世の中で「充実の一日」を味わう、まさに幸福の一日でもあったのですね。
(日本文学協会会員、鹿児島女子短大名誉教授・吉井和子)

年間賞作品
 充実の一日
 10月7日、大川小の運動会に参列した。68人の元気な児童と2階まで伸びたヘチマが出迎えた。9時、紅白の応援合戦がエール交換で開幕。本年は酷暑の中、児童の足が黒光りしていた。かけっこ前に名前を呼ばれて挙手する姿がほほ笑ましい。阿久根市が誇る「華の50歳組」運動会は昭和44年卒と45年卒が午前、午後に分かれて実施。児童との追いつ追われつ、韋駄天ぶりを存分に発揮。趣向を凝らし、地域住民総出の大声援の中、学校史に特筆できるイベントだった。大川っ子も脚力、総力がついたことでしょう。この感動を明日の糧にいつまでも!!
阿久根市大川 松永修行(81)