はがき随筆・鹿児島

はがき随筆ブログにようこそ!毎日新聞西部本社の各地方版に毎朝掲載される
「はがき随筆」は252文字のミニエッセイです。

折りふしに

2008-05-02 07:16:09 | はがき随筆
 毎年、寒気の中に咲いているコブシの花に、春を見る。やや遅れて、白モクレンの開花を見る。そして決まって母の記憶がよみがえる。
 大寒の日に逝った母。四十九日はのどかな春日和で、庭の白モクレンが満開だった。苦痛からやっと開放された母の寝顔が花の中に現れた気がした。今年はひときわ白く鮮やかだった。
 紫色のモクレンも終わり、さらに春が進むと、思いはおのずと霧島の山々に向かう。もうシキミは咲いためうか。オオヤマレンギはどうしているだろう。
 庭では、オガタマのつぼみたちがじっと出番を待っている。
   出水市 中島征士(63) 2008/5/2 毎日新聞鹿児島版掲載