書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

森永恭代 「清代四川における移民開墾政策--清朝政府から見た『湖広填四川』」

2013年11月29日 | 東洋史
 『史窓』68、2011年2月、187-209頁。

 明末清初の四川地方の人口激減は、張献忠の大殺戮のみによるのではなく、ほかの流賊によるそれもあり、またそれらに反発する地元の紳士層、そして四川を統治下に置こうと侵入してきた清軍さらにはそれに与した現地諸勢力のやったことの総和であることは、これまでにも部分的にせよ言われていたことであるし、門外漢の私も多少聞いていた。だが、それらを精密具体的に示された著者のこの論文で、減少した人口数が、純粋に殺害された被害者の数(あるいはそれに起因する社会の荒廃に基づく飢饉・疫病の発生による死者をも含めたそれ)とイコールなのか、それとも難を逃れて地域の内外に逃竄流亡した生存者数をも含めたものであるのかについて、後者であることを知った。