書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

ニーアル・ファーガソン著 仙名紀訳 『文明 西洋が覇権をとれた6つの真因』

2016年07月01日 | 世界史
 全体の論旨にはかならずしも首肯しないながら、次のくだりについては、我が意を得たりと膝を打った。

 非西洋諸国は、西洋が優位に立てた理由の方程式――つまり、私有財産の権利、法の支配、真の代議政治――を拒否した形のままで、西洋の科学的な知識だけをダウンロードして利益を得ることができると考えているのだろうか。 (「第2章 科学」本書173頁)

 これらが“真因”かどうかは私には判らないが、すくなくともこれらが西洋とそのもたらした近代国家という制度の、もしくは“近代”そのものの前提となっていることは確かだろう。その前提を否定して、なおかつ近代国家の枠組みを保とうとするのは不可能ではないかと、私は常々思っているのである。

(勁草書房 2012年7月)