書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

プリーモ・レーヴィ著 竹山博英訳 『休戦』

2018年05月23日 | 文学
 出版社による紹介

 竹山氏訳でレーヴィはいくつか読んでいたが、これは始めて。「訳者解説」の、レーヴィの死の理由についての考えられる“理由”が、もしそれが自殺であったとするならばだが、短いが端的と思える。

(岩波書店 2010年9月)

別の件でフアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』(杉田晃/増田義郎訳)を開いたら・・・

2018年05月23日 | 思考の断片
 別の件でフアン・ルルフォ『ペドロ・パラモ』(杉田晃/増田義郎訳、岩波書店1992/10)を開いたら、いまやっている仕事ともろにかぶる(私的に。こういう先達もあったかと学ぶ)ところがあって、驚愕。始めて読んだといえば無知無学がばれる。

ウォルター・クロンカイト著 浅野輔訳 『クロンカイトの世界』

2018年05月23日 | 伝記
 いつもながら浅野輔氏の訳は原文を彷彿させる――たとえ原文を知らなくてもこうであろうと当否は別として想像できる――、すばらしさである。私の好みをここから抜けば、つまりは訳文くさくない、しかし日本語日本語もしていない、英語のハードとソフトの要素を取り入れた、清新な日本語の文体ということになるのだろう。

(阪急コミュニケーションズ 1999年8月)

小野信爾 『京大生・小野君の占領期獄中日記』

2018年05月23日 | 現代史
 宇野田尚哉・西川祐子・西山伸・小野和子・小野潤子編。
 出版社による紹介

 暗雲のたれこめる今日、戦争反対のビラを撒いただけで逮捕され、まともな裁判もなしに刑務所に放り込まれるというような時代の再び来ないこと承前)を切に願うばかりである。
 (小野和子「あとがき」本書296-297頁)

 ツイッターで「時代と乖離」という表現を見た。ある芸術家についての形容だが、時の流れを意識する必要のある職業もしくは生き方には、生き死にの重大さのある有無だろう。歴史家もある部分、あるいはある程度まで、そうであると思う。本日は「時代と乖離」した大御所のお言葉を聴かされて(読まされて、正直なところ辛かった。

(京都大学学術出版会 2018年2月)

先日、伍子胥や孫臏の復讐譚と唐代の陳・韓・柳の例の論争を並べて・・・

2018年05月23日 | 思考の断片
 先日、伍子胥や孫臏の復讐譚と唐代の陳・韓・柳の例の論争を並べて中国の復讐という現象を論じる論著を見た。前者と後者はほどんど千年離れているのだが(司馬遷による漢代における物語の一旦のretellを考慮しても事情はたいして変わらない)、そういう点の考慮はあまり見いだせなかった。新渡戸稲造の『武士道』と同じである。『武士道』は時系列的な対象の内実の移り変わりの観点がまったくない。一種のファンタジーである。