書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

島田正郎 『遼代社会史研究』

2013年05月23日 | 東洋史
 遼(契丹)といえば「北面官・南面官の二重統治体制」というのは与えられた答えの条件反射である。「なぜそうなったのかが」が答えるべき本当の問いではなかろうか。そして、「なぜ遼だけそうなったなのか」が次の問いであろうと、私は思う。
 この「北面官・南面官の二重統治体制」について、この研究書では、「なぜそうなったのか」に関し、私とは別の視点からそのなり立ちをわずかに論じている。「なぜ遼だけそうなったのか」については、おそらく著者の意図せぬ結果としての暗示的なかたちで言及がある。
 同書は著者の遼・契丹研究の総論的位置を占める存在らしい。各論たる個別研究(書)にはさらに詳しい形で載っているかもしれない。

(嶺南堂書店 1978年9月)