書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

「イラク戦争、市民の死者は6万人超 機密暴露サイト公表」 から

2010年10月23日 | 抜き書き
▲「asahi.com」010年10月23日11時43分、ロンドン=伊東和貴。 (部分)
 〈http://www.asahi.com/international/update/1023/TKY201010230129.html

 民間ウェブサイト「ウィキリークス」が22日、イラク戦争を巡る米軍などの機密文書約40万件を公表した。事前に情報提供を受けていた米英メディアは電子版で、市民の死者数は民間団体の集計より1万5千人多く、米軍がイラク当局による拷問を黙認していたと報じた。

 ウィキリークスは7月にアフガニスタン戦争を巡る米軍などの機密情報を公表。個人名の公開が人命を危険にさらすと批判を受けた。このため今回は、報復に発展しそうな文書からは名前を削除したという。

 数の大小で問題の重大さが変わるわけではないが、6万人とは大きすぎる人命の数ではないか。「正義のためにはやむを得ぬ犠牲だ」と言い切れる人は、次は自分が率先して犠牲になってほしい。あるいは、自分がそうなったらと考えてみて何のためらいもないかどうか、試してみてほしい。ためらいがないのなら、あなたは特別な人だ。私は何も言わぬ。
 しかし私個人の倫理と国家(を動かす立場の公人)の倫理とは異なるのもまた確かである。ウィキリークスの配慮は、私人の倫理が公人の倫理に配慮したものだ。社会関係上は配慮すべきだし、また運営者自身の個人としての利害からいっても配慮せざるをえなかったのだろうが、それが正しいことかどうか、私にはまだ分からない。

桂米朝 『特選!! 米朝落語全集』 第7集 「百年目 焼き塩」

2010年10月23日 | 芸術
 「百年目」(平成元・1989年11月21日 於大阪コスモ証券ホール)、「焼き塩」(平成元・1989年10月17日 於大阪コスモ証券ホール)。
 「百年目」は平成14・2002年の東京・歌舞伎座での口演をテレビで観たことがある。「焼き塩」は今回のDVDが初めて。
 この平成元年収録の「百年目」だが、平成14年度版のほうが、最後のほうで一カ所筋運びの順序を間違えるというしくじりを犯したとされるものの、全体としての完成度ははるかに高いと思った。語り口から醸し出される噺のふくらみと厚みが格段に違うのである。失敗というなら、この平成元年のほうは、森ノ宮の花見のところで酔った治兵衛と旦那が道を通す遠さぬでもみ合いになる場面で、役柄がくるくる入れ替わる忙しさに負けて、扇子で目隠しをしているのは番頭の治兵衛のはずなのに、その恰好のままで旦那の台詞をしゃべっているところがある。このほうが他人目にも明らかな失敗である。

(東芝EMI 2002年10月)