書籍之海 漂流記

看板に掲げているのは「書籍」だけですが、実際は人間の精神の営みすべての海を航海しています。

司馬遼太郎 『侍はこわい』

2005年01月14日 | 文学
 今日は脳味噌の休日とする。
 短編集。全8作、すべて単行本・全集未収録だそうである。面白い作品ばかりで、理由がわからない。大阪もの「みょうが斎の武術」(昭和35年)、忍者もの「忍者四貫目の死」(昭和36年)、賤ヶ岳七本槍の一人平野長泰の一生を描いた「権平五千石」(昭和40年)など、傑作の部類に入ると思うのだが。
 この人の短編にはまだ取りこぼしがあるのかもしれない。

(光文社 2005年1月)

浦沢直樹・手塚治虫 『PLUTO』 1

2005年01月14日 | コミック
 アトムだけではありません。ブラックジャックまで出てきます。

(小学館 2004年11月)
 
  ▲脳味噌の休日だから力づくで話をつなげるが、過去、映画・テレビのアニメ版『ブラックジャック』においてブラックジャック役の声を演じた伊武雅刀、野沢那智、大塚明夫三氏のうち、誰が一番適役か。  
 私は大塚氏が好きで、はまり役だと思う。しかし原作のブラックジャックが持つ暗さと悪の部分を考えると、「ありがとう諸君」の伊武氏が本当は一番ふさわしいのではないかと思ったりもする。野沢氏も同じ理由で適役なのだが(この人が吹き替えるアラン・ドロンの若い頃の暗さと悪さを想起せよ!)、百鬼(丸)博士が出てくるエピソードが制作不可能になってしまうから駄目だ。 

 ▲京都では寒い季節には泥酔しないように。コンクリート床の上に毛布もかけずに放置されることがある。死ぬこともある。

 ▲業務発明に対する「相当の対価」を惜しむような会社はつぶれてしまえ。


戴季陶著 市川宏訳 『日本論』

2005年01月14日 | 東洋史
 20年ぶりに読み返してみる。原書は1928年に中華民国時代の上海民智出版局で出版された。原題も同じ。巻末にある 「主要著作」欄によれば、革命後の1954年に中央文物供応社からも出ている。
 戴季陶は日本に留学して日本の大学を卒業した人物である。孫文の秘書としてその日本訪問には常に同行して通訳を務めた。自身の実地の日本・日本人経験に加えて、真摯な勉強家であった著者が有する、該博な日本知識にもとづく透徹した分析や、日本の朝野の著名人と接触する対日関係担当の国民政府要人つまり政治家でもあった彼の、日本および日本人に対する冷静冷厳な評価と批判に比べれば、きょうびの仇日中国人の日本論など、犬の糞のようなものである。

(社会思想社 1983年2月)