『精神科にできること』

2010-12-08 10:25:03 | 本の話
野村総一郎著。講談社現代新書『神経科にできること』

何か証券会社のようなお名前ですが、
私と同年に広島県でお生まれになり、著書多数
さもありなんという分かり易さです。


精神医学や心理学はどうもウサンクサイところがあり
私はあまり信用していませんでした。

が、どこにそういう見方をされる原因があるか、
精神科とはどのような立場で、現在どれほどの仕事を
されているか、などを明確に書いておられるので
先ほどの失礼な観念を改めねばならないようです。


とても正直に書いておられるのではないか、という印象
をうけました。

(一般の人間は、精神病というと特殊な人の罹る病気だと
いう印象をもつことも多いであろう。
が、実はきわめて一般的な病気なのである。)
として、色眼鏡で見ることの不合理や損失を説かれます。

もっとも、この本は2002年に出版されているので
現在では精神科への偏見も、当時より少なくなっては
きていると思います。

ただ、たとえば精神科への受診を子供が拒否するとか
高齢者が嫌うなどという話もまだ頻繁に耳にしますね。

精神科といっても、大きく二つの流れがあったそうです。
一つは脳神経医学、脳の機能に原因を求めるもので
医療は薬や脳に働きかけることで行われます。

もうひとつは脳の障害と言うよりも、心の病気であると
捉える心理学的な立場。
治療法は患者の心を解放する方向に求められ、長時間の
カウンセリングなどが中心となるものです。

脳科学や遺伝子研究の進歩、また薬の開発などで
治療法の遅れていた脳精神医学が、近年長足の進歩を
遂げているそうですね。

もちろんハードな対応ばかりでなく、患者一人ひとりの
心理を受け止め解放してあげる治療とのマッチが
大切だというのが現在の医療の方向らしいのです。

典型的な精神疾患の、統合失調症・うつ病・パニック障害
あるいは自律神経失調症と呼ばれるものまで、
架空ながら典型的な例示をしつつ説明されるので
本当に分かりやすくなっています。

まずこの本から勉強を始めようというものですね。


この本には、もうひとつ大切な指摘がなされています。
精神科の問題を上げておられることです。

ひどい病院もまだあるとか
若手医者の就職が安易にすぎるのではないか
薬はこの程度しか効かない、
児童精神科や青少年の引きこもりなど未整備分野
などなど医療の問題。

薬事行政のオソマツさ、医療現場の大変さ。
福祉としての精神疾患への対応の少なさ。

患者との建設的な連携の重要性、患者同士も。

その他。


ところで、私も予備軍のような気がして。。。