『宇宙の果てまで』

2010-12-06 10:26:51 | 本の話
小平桂一著『宇宙の果てまで』ハヤカワ文庫

天文ブームのようですね。
「あかつき」は明日金星軌道に投入ですが
新聞ではもうさわぎ始めています。
成功を祈りますが難しい条件も多そうで、さて。。


衛星にばかり目が行っていますが
日本の望遠鏡も大活躍です。

ハワイ・マウナケア山に大望遠鏡「すばる」が
設置されています。
これも世界に誇れる日本の科学技術ですから
天文ブームでまた脚光を浴びるかもしれませんね。

今月のナショジオ、人物ファイルは安井千香子さん
天文学者。
若くしてすごい研究をされ現在はALMA推進室研究員。


こんな後輩も「すばる」を実現させた大先輩のおかげを
うけているとも言えます。

その大先輩、中心人物が著された一般向けの読み物です。

著者のあとがきから引用します。
『これは日本が初めて外国領土に造ることになった
大型科学施設、ハワイの大望遠鏡「すばる」が
できるまでの計画推進の軌跡を、著者の目から
綴ったものである。』

この本を初めて手に取った時は
望遠鏡製作の記録にしては400頁は長いなあ、と。

ところが、読みやすいのでぐんぐんと進めます。
そして内容は幅広く深い。

これらを一冊にまとめると云うのはたいへんな筆力ですが
天は二物を与えられるようで、天文学の先生が、詩心あふれる
文章で書いておられます。


いろいろ勉強になります。

天文の基礎知識はもちろん、異文化交流、組織論、機械論
官僚との折衝などなど、と共に家族というものまでも
それぞれ深く語られます。

先の見えない不安と闘いながらひたすら実現に向かう姿に
感動を覚えます。


ああ、私にはこの優しさがなかった
この目配りが不足していた
多くのことに気づかされます。

大きな仕事をする人は私とはぜ~んぜん違う、という
ばかばかしいほど明白なことを改めて実感した次第。