新・ほろ酔い気分

酔っているような気分のまま、
愚にもつかない身辺雑記や俳句で遊んでおります。
お目に留めて下されば嬉しいです。

心の色

2009年02月25日 07時16分20秒 | 身辺雑記

 先日、同じ地域に住む先輩が、奥さんと一緒に、わざわざ拙宅を訪ねてくれた。

 明日の飛行機で、四国へ引っ越すとのこと。四国には娘さんがいるのだ。

 奥さんはアルツハイマーによる痴呆症。発症は3年前だった。

 四国へ嫁いで行った娘さんの強い勧めで、そちらへ引っ越すことになったという。

 先輩は私より2~3歳ほど年上。奥さんはまだ60代のはずだった。

 玄関に入る前から、奥さんの表情は柔らかだった。

 私たちとは旧知の間柄だったせいもある。特にカミさんとは仲良しだった。

 しかし、彼女の心を穏やかにしているのは、先輩に対する信頼感だった。

「子供が成長したら、私は離婚します!」

 ひところはそのように言っていた彼女。今は険しかった時代を越えて、夫に頼り切っている。笑顔が何よりの証拠だ。

 傍若無人だった先輩も、奥さんだけに心を配っていて、目元がとても優しい。

 奥さんが発症してから、私たちは3度目だ。奥さんの表情はますます穏やかになった。

 先輩の強い意向で、私たちは会えずにいた。奥さんを会わせたくなかったらしい。

「病気の進行が、かなり緩やからしいんだ」 今日の先輩の解説だ。

「一時は地獄だったよ。私がイライラするとワイフは脅えるし・・・。イライラを解消するのはとても難しかった。自分では抑えられなかったんだ」

 発症当時を振り返りながら、先輩が言った。

「イライラが始まったら、鎮められない。そうか、だったらイライラしないようにしよう。そう思いついてから、だいぶ気分が楽になったな」

 私には分からない部分もあった。しかし当事者の言葉だけに、やけに説得力があった。

「私がトイレに行っても、2~30秒もするとトイレに来るんだよ。そして、トントンするんだ。不安だったのだろうね」

 先輩夫婦には娘さんが3人。四国に住む娘さんには子供がいなかった。そんな事情もあったのかもしれない。夫婦の四国行きは、急に決まったようだ。

 帰りは私が車で送った。晴れていたが、寒い日だった。

 帰り道、さまざまなことが私を去来した。

 先輩の心は懺悔だろうか。諦めなのだろうか。それとも新たな妻恋なのだろうか。

   紫は懺悔の色や冴え返る    ひよどり

 いかになんでも、懺悔ではあるまい。

   妻恋は菜の花の色咲くを待つ  ひよどり 

   諦めの色は・・・

 先輩の心の中には、深い愛情にもとづく肌色が、限りなく溢れているに違いない。

 末永いご健勝を祈りたい。 

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コメント (14)
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