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各学部にとって望ましかった分散的な図書館システム

2018-08-16 08:26:40 | 読書ノート
河村俊太郎『東京帝国大学図書館:図書館システムと蔵書・部局・教員』東京大学出版会, 2016.

  戦前の東京大学の図書館システムをつまびらかにして、日本の大学図書館システムの問題を探ろうという試み。天野絵里子氏による書評が『日本図書館情報学会誌』62(3)に出ている。

  焦点が当てられるのは、中央図書館と各学部・各研究室に設置された部局図書館との関係である。部局図書館は予算においても管理運営においても中央図書館の統制に服さず、設置した各学部各研究室の意向で運営されてきた。書籍は教員が選択し、独自の分類がなされた。一方で中央図書館は研究においても教育においても軽視される、という状態が続いたとのこと。分権的な運営が常に勝ってきた、というのが著者の見立てである。

  大学図書館の問題は学部に分散した権限の問題である、ということなのだろう。中間共同体が実権を握って中央の統制に服さない、というのは、ときには反権力的行為としてロマンティックに語られることもあるけれども、その弊害もまた大きい。なお、今でも本書で描かれたような大学図書館がたくさんあるようだ。利根川著とはまた違った分析で興味深い。
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