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ブルーバックス気候史二点、難しいのとわかりやすいのと

2022-02-21 13:00:40 | 読書ノート
横山祐典『地球46億年気候大変動:炭素循環で読み解く、地球気候の過去・現在・未来』(ブルーバックス), 講談社, 2018.
中川毅『人類と気候の10万年史:過去に何が起きたのか、これから何が起こるのか』(ブルーバックス), 講談社, 2017.

  『地球46億年気候大変動』は、気候の歴史というより気候「研究」の歴史であり、科学者の名前が大量に出てくる。特に過去の気候をどう再現するかという、観測方法の進展の話が中心となっている。大きな話から小さな話まで振れ幅が大きく、地球の公転や地軸の変化から、プレートテクトニクスや海流、放射性同位体、空気中の二酸化炭素量を推定するための化学式なども出てくる。率直に言って難解であり、登場する科学者らが「〇〇億年前の気温は〇〇度ぐらいだった」と最終的に推定するに至ったロジックは、一読しただけではよくわからない。わかったのは、過去の気候の再現は科学者の英知の結集のおかげであることと、地球の気候は安定しておらず標準と呼べる状態がないことの二つだけである。

  『人類と気候の10万年史』は、上の書籍より短いタイムスパンでの気候変動史である。福井県にある水月湖の湖底堆積物の調査から、気温のみならず周辺の植生なども推定している。それによれば、ここ10万年ぐらいの地球は寒冷で氷期を経験することが多く、温暖な時期はごくまれに短期間だけ持続した。この10万年間、寒暖の変化は激しく、植生はしばしば変化した。しかし、1万1600年前あたりに突如温暖化し、以降安定した気候のままであるという。その原因はよくわからないものの、工業化以前さらに言えば農業が普及する以前に起こった変化であり、人為的なものではないことは確かである。最後に、気候が安定したことが、作物の収穫量を予想のつくものととし、狩猟採取よりも農耕を有利にしたのではないか、と推論している。こちらのほうは、気候推定のロジックが単純で(堆積した花粉等から推定される)、また登場人物の数も少なく、わかりやすかった。
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