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生涯学習を推奨するも制度的には成功していないとも

2022-02-04 08:06:07 | 読書ノート
アンドリュー・スコット, リンダ・グラットン『LIFE SHIFT2:100年時代の行動戦略』池村千秋訳, 東洋経済新報, 2021.

  キャリア形成・人生設計を扱う内容であり、ビジネス書および自己啓発書にカテゴライズされる。同じ著者二人による『LIFE SHIFT』(東洋経済新報, 2016)の続編だが、どちらも原題は"Life Shift"ではなく、前著はThe 100-year life: living and working in an age of longevity (Bloomsbury. 2016)で、この2はThe new long life: a framework for flourishing in a changing world (Bloomsbury, 2020)である。著者は二人ともロンドン・ビジネス・スクールの先生。前著は未読。

  長寿化の進展とAIによる労働力の代替によって、これまで一般的だった人生プランは通用しなくなる。だからもう一度キャリアについて考え直してみよう、というのがその趣旨である。家庭での役割分担や人間関係の話などもあるがメインは仕事の話であり、「同じ仕事を老年期まで続けて引退後は悠々自適の生活」などという人生はもはや不可能で、高齢になって働けなくなるまで仕事を次々変えて食いつないでゆく必要があるという。そして、企業や教育機関、政府などに、変化するキャリアに合わせた制度を設計するよう求めている。

  個人的に関心があったのは教育の話。働きながらの生涯学習やリカレント教育が勧められ、またオンラインでの独学教材が増えていることが伝えられている。しかしながら、”多くの国では成人教育産業が苦戦を強いられている。学位を授与しないパートタイムの教育では、その傾向が特に甚だしい”(p.283)とのことである。その理由は分析されていない。またこれまで、日本以外の先進国では年齢差別はないなどという話を信じていたが、少なくとも英国ではまだ企業への就職に年齢制限があるようだ。

  以上。深刻にならないようサラッと書かれてはいるが、長すぎる人生をサバイブするために絶えず努力し続けなければならないという厳しい話となっている。生涯学習の結果が労働市場で評価されない理由については、非常に興味をそそるところである。
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