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金も人も増やさないけれども教育者は工夫と忍耐で危機を乗り切れ、と

2021-06-01 11:43:27 | 読書ノート
  教育関係の新書をちょこちょこ読んでいるのだが、十分な支援は与えないのに教える側に忍耐と工夫を要求するというのをよく見かける。下記がその例。下の本とは無関係に、教育の必要性を訴える文脈で社会の高度化への対応がしばしば言われるのだけれども、低いコミュニケーション能力と低度な職業スキルでも生きている社会を作る、というのは駄目なんだろうか。そっちのほうが難しい?

宮口幸治 『どうしても頑張れない人たち:ケーキの切れない非行少年たち2』(新潮新書), 新潮社, 2021.

 『ケーキの切れない非行少年たち』の続編。支援者に重点がある内容である。非行少年(あるいはそうなる可能性がある者)は「そのままでよい」わけではなく、良好な社会生活を送ることができる程度に認知機能やソーシャルスキルを向上させる必要がある。しかし、本人にそのための努力をする力がないということがしばしばだ。そこで、彼らの支援者には、発言への細心の注意と忍耐力が求められる。本書はどのような振舞えばよいかについて詳しい。しかしなあ、支援者にもリソースの限界があるからねえ、と読んでて思うところではある。堪忍袋というべきか。

妹尾昌俊『教師と学校の失敗学:なぜ変化に対応できないのか』(PHP新書), PHP研究所, 2021.

  コロナ禍で日本の小中高等学校が柔軟な対応をできなかったことをもって、日本の教育制度の失敗と断じ、改革を訴えるという内容。一方で、現場の先生は疲弊しているという。学校には柔軟な対応ができるようなリソースがないのである。ならば教育のための予算を増やすべきという結論に必然的になるはずだ。が、その面の議論は薄い(ないわけではない)。教育委員会や校長らの権限を持っている人がなんとかしろというのが主な主張だ。しかしでも、リソースがないまま新しいことを試みても現場の先生が疲弊するんでしょ、と読んでいて思う。著者は野村総研出身の教育コンサルタントらしい。教育行政の管理職を仕事相手にしているとこういう議論になるのだろうか。
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