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「文庫本貸出し禁止論」に持っていかれた図書館大会

2017-10-13 22:18:23 | 図書館・情報学
  第103回全国図書館大会に行ってきた。会場は代々木公園のオリンピックセンター。僕は出版流通委員会の委員なので、午前に当委員会主催の分科会の運営、午後に書協主催の分科会のお手伝いをした。午前の分科会は、運営委員ながら僕が登壇して基調報告者となった。昨年の日本図書館情報学会にて安形輝(亜細亜大)が発表した「公立図書館における図書購入の実態」を、今度は図書館員向けに説明するというものである。書籍購入時の割引率など、金の話だ。一応名刺を交換した間柄の人も含めて、僕が話を聞くことができた人たちの名を以下に挙げるけれども、「内輪の話」感を避けるために敬称略で記すのを許していただきたい。

  出版流通委員会として、これまで出版社の話ばかり聞いてきた──特に書協との関係を重視してきた──のだが、そういえば小売書店と図書館との関係を議論したことがなかった、ということでこの企画となった。僕以外の登壇者は高島瑞雄(日本書店商業組合連合会)、田中伸哉(白河市立図書館長)、永江朗(日本文藝家協会理事)である。論点を明確にするために「出版社がつぶれたら図書館は困るが(地域の)小売書店がつぶれてもそれほどではない」というスタンスで僕は議論した。このため、コスパ至上主義者かのような反感をもった聴講者もいたかもしれない。図書館への納入をめぐっては、ひとくちに「小売」といっても、本社が東京にあるような大手業者と地元の零細な小売書店とでは対立があるようだ。図書館は後者とどう関わっていくべきか。すぐに答えが出る話ではなかったけれども、まずは小売書店が、出版社とは異なる独自の利害を持った存在として、はじめて議論の俎上に上がったということ、これが重要だろう。

  午後は書協主催の分科会で、持谷寿夫(みすず書房社長)、根本彰(慶應義塾大学)、松井清人(文藝春秋社社長)、岡本厚(岩波書店社長)という登壇者である。特に論点を決めず、図書館関係者と出版関係者が言いたいことを言ってお互いを知る、という方向感の企画である。前日に、文春社長が「文庫本の貸出し禁止を求める」内容の報告をするということで、すでにニュースになっていた。というわけで、会場には複数の新聞社のみならず、TBSとNHKのテレビカメラまで入っていた。文春社長の弁によれば前日のそれは意図的なリークではないとのことだが、ちと怪しい気がする。今日の話は夜にはNHKのニュースになっていて──ただしラジオで確認した──、翌日の新聞にも出るだろうから、これは彼の狙い通りなんだろう。この提案の中身はさておいて、話題の作り方が非常に「上手い」と思う。この件で我らが出版流通委員会委員長・瀬島健二郎(文化学園大学)がNHKのテレビインタビューを受けていたが、どう使われたのだろうか。テレビを見て知っている人がいたら教えてほしい。

  毎年ルーティンでやっていることではあるものの、今回の大会は個人的には楽しいものだった。登壇したり、昼食時に議論したり、話題の分科会に参加できたということもある。なかでも特に、僕が学生時代からいくつかその著書を読んできた、永江朗と同席できたことが喜ばしいことだった。
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