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イタリア産ボサながらボサ感が後退して優雅なジャズボーカル作品に

2017-02-06 21:12:08 | 音盤ノート
Donati "Mundo Simples" Cool d:vision, 2008.

  イタリア産ジャズ&ボサ。Donatiの三作目。ジョアン・ジルベルトの演奏で知られる'Eu quero um samba'や、オリジナル曲ながらジョビンへ捧げた'Antonio Carlos'が収録されているものの、他の収録曲においてはもはやボサ要素がほとんど失われている。アコギが出てきてもバチータではなくコードストロークであり、裏打ちリムショット風の打楽器使いもほんの少々。ボーカル・ジャズのアルバムと言ってよいだろう。

  バックの演奏にも少々変化がある。前作前々作では隙間多めの音使いだったが、今作では曲によってはわずかながら厚みが増して流麗になっている。エレクトリックギターが派手に乱入してくる曲があるのも今作の特徴。また、相変わらず男性ボーカルの比重が高いのに加えて、4曲歌うゲスト女性ボーカルの声が非常に太くて低いのが耳をひく。シモーネ系の特徴的なアルト声である。

  全体として、優雅かつなめらかでシルクのような手触りであり、牧歌的な雰囲気もあるものの、清涼感はない。それでも各曲のクオリティは高いので最後まで聴かせる。けれども、聴く方としてはもう少しボサノバ曲をやってほしかったな。ジャズ作品としてはあまりオリジナリティを感じない。Donati名義での初志を貫徹をしてもらったほうが喜ばしかった。これが最終作のようだが、売れなくてレーベルから契約を切られたのだろうか。
コメント
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