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スタジオを基準に音を聴くという新たな切り口

2015-11-13 10:14:09 | 読書ノート
高橋健太郎『スタジオの音が聴こえる:名盤を生んだスタジオ、コンソール&エンジニア』DU BOOKS, 2015.

  1960年代から70年代にかけてロックやソウルの名作が録音された音楽スタジオを紹介するエッセイ。誰が建ててエンジニアは誰で、使った機材はどこ社製でどういう音が鳴るのか、という記述が中心の、実にマニアックな内容である。著者は音楽評論家でかつプロデューサー。自身のスタジオも所有しているという。洋楽についてもう少し踏み込んで知りたい、という人のニーズを満たすものだろう。

  採りあげられるスタジオは、特定のミュージシャンまたはプロデューサーが好んで使ったか、あるいはミドルマイナーなレーベルの所有のスタジオばかり。Abbey Roadなど大手レーベル所有のスタジオは、長期にさまざまな人が入れ替わり立ち代わり使用しており、スタジオの音としての個性が無いということで省かれている。最初に出てくるのは米東海岸のBearsville(Todd Rundgren)、最後は西海岸のThe Village Recorder (Steely Dan)。この他、ソウル系ではフィラデルフィアのSigmaや南部のMuscle Shoals StudioやFame、英国ではTridentやOlympic Studio、ドイツのConny Plankのスタジオ、1990年代以降ではシカゴのJohn McEntire(Tortoise)のスタジオなどが紹介されている。珍しいところではバハマのナッソーにあるIsland社所有のスタジオ。プロデューサーがAlex Sadkinで、そういえば1980年代に流行ったなーと思い出した。

  スタジオ単位で音を聴くという発想は斬新で面白い。エンジニア単位というのはこれまであったけれど、コンソール云々という話はスタジオ録音の経験がある人ならではのものである。こういう話についていける人は多いのだろうか、と疑問に思ってAmazon.co.jpを見たらけっこうレビューが付いていた。でもレビュワーはみんなおじさんだろう。若い人にはついていけない世界だと思う。
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