十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

ほととぎす

2011-07-31 | Weblog
  よもつくにより明けてゆくほととぎす    岩岡中正

世の中は、現世だけでなく、「よもつくに」もまた一つの世だとすると、
「現世」と「よもつくに」が、まるで隣り合わせに存在しているかのような、
不思議な親近感を抱かせる。「よもつくに」に太陽が昇り、ほととぎすが、
鳴きはじめる頃、現世は、まだ眠りの中にいる。
「俳句」8月号「作品12句」より抄出。(Midori) 

言葉

2011-07-30 | Weblog
    雀つぎつぎもんどりうつて冴返る     菅原鬨也

「俳句」8月号、『詩といのち』ー言葉の可能性をめぐってーと題して、柳田邦男×細谷亮太の特別対談の中の紹介句の一つだ。大震災という凄惨な状況の中で、俳人としての自分を取り戻した時、もう一人の自分がいて、世の中を見ている。これぞ俳句だという細谷氏。一方、雀をメタファーとして自分がもんどり打つような驚天動地を詠んでいるという柳田氏だが、ある距離を持って自分を見ることができたとする点では同じのようだ。「俳句、短歌、詩など表現手段を持っている人は強い。それは立ち直りも早いということだ」「カオスの中にいる自分を見るもう一人の自分。そこから自己否定的ではない時間がはじまっていく」という柳田氏の言葉が印象的だった。(Midori)

山法師

2011-07-29 | Weblog
長老は華あるお人山法師    加古宗也

「華ある人」とは、どんな人だろう。
傍にいるだけで、あるいは、見ているだけで、
幸せな気持ちになれる人?長老であれば、
その華に一層の深みと、人を惹きつけるオーラが加わって、
人望と尊敬を一身に集めている。そんな長老に、
「山法師」がまるで化身のように気高く美しい。
「俳句」8月号「作品8句」より抄出。(Midori)

大文字

2011-07-28 | Weblog
大いなる闇を舞台の大文字    塩川雄三

京都東山の如意ケ岳で行われる送り火、「大文字」
8月16日の京都の夜空を彩る伝統的な行事の一つだ。
「大文字」の舞台は、もちろん如意ケ岳の山腹であるが、、
詩人の目が捉えた舞台は、「大いなる闇」だ。
「俳句」8月号「作品8句」より抄出。(Midori)

不死男の忌

2011-07-27 | Weblog
飲む水にリアリティーあり不死男の忌    八田木枯

鳥わたるこきこきこきと罐切れば
ライターの火がポポポポと滝涸るる
といったオノマトペ俳句で知られる秋元不死男。
この飲み水は、単なるH2Oではなく生きている水。
「不死男」の名に相応しく、この夏、水は全身を蘇らせる活力だ。
7月25日は不死男の忌だった。
「俳句」8月号「作品16句」より抄出。(Midori)

とうすみ

2011-07-26 | Weblog
とうすみの重なる意思の透きとほり   宮坂静生

求愛の方法は、それぞれに違うが、
生物によっては、オス同士の激しい戦いとなることもあるようだ。
しかし、灯心蜻蛉はどうだろうか?ことさら自己主張しなくても、
相性は水のように透きとおっているというのだろうか?
「俳句」8月号「特別作品50句」より抄出。(Midori)

星祭る

2011-07-25 | Weblog
住み古りし仮のすまひや星祭る    島谷征良

どんなに長年住み慣れた住居でも、それは仮のすまい。
いつかは、住み変わり、誰からも思い出されることもなくなる。
「住み古りし仮のすまひや」の無常観・・・。
しかし、「星祭る」の変わることのない宇宙のロマン。
この対照的な取合せが、とても好きだった。
「俳句」7月号「作品12句」より抄出。(Midori)

蛞蝓

2011-07-24 | Weblog
煌として夜半しろがねの蛞蝓    高橋睦郎

蛞蝓は、夜間に活動する軟体動物。
「くわう」とルビが振られた「煌」として・・・
煌々と輝く月光に、艶めく蛞蝓なのだろうか?
調べの良さ、幻想的な蛞蝓の描写に魅了された。
「俳句」7月号「特別作品50句」より抄出。(Midori)

冷奴

2011-07-23 | Weblog
冷奴箸におもたき誕生日    片山由美子

年鑑で調べてみると、7月17日生まれの作者だ。
誕生日は、特別な日、幾つになっても心弾むものだが、
彼女のこの日の誕生日は、少し違っていた。
見た目の涼感と、つるりとした食感が魅力の冷奴だが、
この日の冷奴は、「箸におもたき」だった。
いろんな期待をしっかりと受け止めようとする、
そんな気概が感じられた。
「俳句」7月号「特別作品21句」より抄出。(Midori)

露台

2011-07-22 | Weblog
人偲ぶこととなりたる露台かな    対中いずみ

露台は、西洋建築様式の一つで、バルコニーのこと。
椅子やテーブルなどを置いて、夏の暑さを凌ぐ場所とされる。
さて、「人偲ぶこととなりたる」ということは、それまでは、
そうではなかった、ということだ。同時発表句の、
「花過ぎて端午を過ぎて昏々と」という句が気にかかる。
「俳句」7月号「作品16句」より抄出。(Midori)

2011-07-21 | Weblog
身を容れて闇くびれたる櫻どき   恩田侑布子

「入れて」ではなく、「容れて」によって、闇の質感が変わる。
闇が、まるで流動体のように自由自在に形を変えて、
女体のようにくびれる。花の闇らしい妖艶な詩情が感じられた。
「俳句」7月号「作品12句」より抄出。(Midori)

火恋し

2011-07-20 | Weblog
火戀しく放火しけりと調書かな   高橋睦郎

放火の動機は、ただ「火が恋しかったから」
そのように書かれた調書が、かつてあったのだ。
「戀」の旧字体が、過去の調書だということを物語る。
本当の動機は、屈折した心の奥底にあるのかもしれないが、
案外、火が恋しかっただけだったかもしれない。
ふと、三島由紀夫の『金閣寺』を思い出した。
俳句なのか、サスペンスなのか、異色な作品。
「俳句」7月号「特別作品50句」より抄出。(Midori)

2011-07-19 | Weblog
駆け上がりずるずる滑る夏の子ら   四ツ谷 龍

かつては、こんな場所があり、こんなことをした記憶がある。
それは、自然の中に見つけた格好の遊び場だった。
しかし、今ではどうなんだろう?
具体的な場所など何も説明していないが、
運動靴を泥だらけにして遊ぶ子どもたちの元気な姿が見えてくる。
「俳句」7月号「作品12句」より抄出。(Midori)

五月雨

2011-07-18 | Weblog
トンネルのうへに樹木やさみだるる    山口優夢

トンネルは、山腹を貫いて造られた建造物だから、
トンネルの上に樹木があるのは当たり前と言えば当たり前。
しかし、こう言われてみると、メルヘンティックな絵本の世界を、
想像してしまうから不思議だ。
「さみだるる」に託された作者の思いは果たして何だろう?
「トンネルのうへに樹木」という発見が、楽しい一句。
「俳句」7月号「角川俳句賞作家の四季」より抄出。(Midori)

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2011-07-17 | Weblog
⌒/\               暑中お見舞い申し上げます
-/| \   ⌒⌒         2011 夏 by Midori      
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のうぜんやあの世この世の蝶番
閂の外れし牙城ジギタリス
薔薇の香に錆びゆく思想ありにけり
船体はゆつくり離れ若葉雨     平川みどり


*「滝」7月号「滝集」に掲載