十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

青芭蕉

2010-07-31 | Weblog
    幹でなく茎でなく青芭蕉林    正木ゆう子

熊本市江津湖で、はじめて芭蕉林を見た時の印象というと、
日本でないどこかジャングルに迷い込んだような気がしたものだ。
芭蕉は、一枚の巨大な葉っぱで、まさに幹でなく、茎でもなかった。
こんな風に、飾らない感動をパッと詠めたらいいなと思う。
「紫微」所属。「俳句」8月号より抄出。(Midori)

朝曇

2010-07-30 | Weblog
    身支度を時報がおそふ朝曇    望月 周

「この時間までは家を出なければならない」と、自ら決めた時間は、
その時々によって違っていても、いつの頃もあったようだ。そして、
その時間が近づいていることを知らせる時報ほど、残酷なものもなかった。
「身支度を時報がおそう」というシュールな感覚は、朝曇の気欝な思いに、
一層拍車をかける。「百鳥」所属。「俳句」8月号より抄出。(Midori)


万緑

2010-07-29 | Weblog
    君の息より万緑の揺れはじむ    木暮陶句郎

待ち合わせの場所に、息を弾ませながらやって来た彼女?
新緑から万緑へと、万物のエネルギーが最も横溢するこの季節、
「君の息」より、揺れはじめたのは、万緑ではなく、作者だったのかも・・・。
「ホトトギス」「ひろそ火」所属。「俳句」8月号より抄出。(Midori)

夏めく

2010-07-28 | Weblog
    夏めくや彼方よりくる波の色     鳴戸奈奈

沖よりずっと遥か遠い彼方から届いた波が、足元を少し濡らす、
と想像するだけで、ちょっと不思議な気持ちになる。
波打ち際の波は、砂粒がはっきりと見えるほど透明で・・・。
海の表情は、光の量によって、さまざまに変化するが、彼方から
届く波の色は、夏らしいグラデーションを見せてくれる。
「俳句」8月号より抄出。(Midori)


捩花

2010-07-27 | Weblog
   ゆつくりと智慧巻き上げてねぢれ花    有馬朗人

螺旋状に小さな花をつける捩花を見ていると、いつも感心するばかり。
捩花は、DNAそのものの形にも似ているが、DNAの情報伝達の確かさにも
驚嘆する。「智慧」は、捩花のDNAの能力にも値するのか・・・
智慧を巻き上げるほどに、捩花の造化の美は極まってくる。
「天為」主宰。「俳句」8月号より抄出。(Midori)


水母

2010-07-26 | Weblog
星空のやうな水母を夢に飼ふ    正木ゆう子

水母をひとつの天球だとすると、夜に浮かぶ水母は、
まるで、星を散りばめたアクアドームのようだ。
「夢に飼ふ」のしなやかな発想を学びたいと思う。
「俳句」8月号より抄出。(Midori)
 

噴水

2010-07-25 | Weblog
暑中お見舞い申し上げます。
熊本も一歩外に出れば、やけどしそうな連日の真夏日が続いています。
暑い夏は、思いっきり汗を流してアクティブに過ごしたいものですが、
何といってもこの猛暑、じっとしていても汗が出てきます。
3分の2は水でできている体ですが、蒸発してしまわないように、
充分な水分補給を心がけたいものですね。(Midori)


妖精の翼の如く夜の噴水    平川みどり

夜の秋

2010-07-24 | Weblog
  空間を時間素通り夜の秋    加藤静夫

抽象的で概念の句でありながら、なぜか惹かれる。
四次元の世界なのに、まるで空間と時間が別々の次元にあるような、
錯覚を覚えたからだろうか。「夜の秋」には、時間によって古びない透明感が
あるような気がした。「平成秀句選集」より抄出。(Midori)

2010-07-23 | Weblog
    何故の蛇の決心河わたる    泉田秋硯

蛇が対岸へわたるとき、河そのものに目的があるようには思えない。
目的は、やはり川向うにあるようだ。きっと蛇にしかわからない何かが、
蛇に河をわたる決心をさせたのだ。「何故の蛇の決心」という疑問は、
誰もが意識外の部分で問うていたはずだ。だからこうまで共感を覚えるのだ。
「苑」主宰。平成22年「俳句手帖」より抄出。(Midori)


涼し

2010-07-22 | Weblog
   レンズより星座それゆく涼しさよ     恩田侑布子

7月7日の七夕の夜、ベガ、アルタイル、デネブの3つのα星を
結ぶ夏の大三角が、南の空高く輝いているのを見ることができた。
何光年も離れた星は、口径の小さな望遠鏡で覗けば、すぐにレンズの中に
見失ってしまう。夏の夜、天文学的時間を超えて届く星の輝きに、
一時の安らぎを覚える。句集「イワンの馬鹿の恋」に所収。(Midori)


白南風

2010-07-21 | Weblog
ゴールドだった時は、それ程の価値があるとは思ってもみなかったが、
ブルーになってはじめて気づくことの方が多かった。
保険料が若干上がったところを見ると、いくらかの信用も失墜したらしい。
現在の私の自動車免許証の帯の色だ。このほど、道路交通法の改正により、
運転免許証の裏面に臓器提供の意思表示欄が設けられる。(Midori)

白南風やシャンパンタワー崩れさう     平川みどり

ダリア

2010-07-20 | Weblog
   子ら走るダリア掠めてダリア見ず    相子智恵

ダリアは、華やかな原色の存在感を持ちながら、その庶民性ゆえに
あまり顧みられることの少ない花なのではないだろうか。
子らの眼中にダリアはなく、あるのはダリアによって狭められた
空間だけなのだろう。「ダリア掠めてダリア見ず」に、揺れているダリアの残像が、
鮮明に浮かんできた。「澤」所属。「俳句」7月号より抄出。(Midori)


真夏

2010-07-19 | Weblog
   真夏てふ大球体と飼育員     石母田星人

真夏のはち切れんばかりのエネルギーの塊りを、「大球体」と捉えた。
大球体の球面は、内へのエネルギーと外へのエネルギーが、
パンパンに保たれ、今にも弾けそうだ。それは、まるで、
ガラスの球体に収斂された巨大な動植物園のようだ。(Midori)
「滝」7月号より抄出。


2010-07-18 | Weblog
   阿修羅像わが汗の手は何なさむ     行方克巳

阿修羅は六本の手を持ち、前面の手は合掌し祈りのポーズをしている。
一方、わが汗の手は何をなさむ?と、一身に模索している作者だ。
汗を代償に、何かを手に入れたいという切なる願いは、                          阿修羅も同じだったのではないだろうか。
「平成秀句選集」より抄出。(Midori)


夏空

2010-07-17 | Weblog
  夏空を開きしペーパーナイフかな   庄司縫子

四季それぞれに、空の趣は異なっているが、夏空というと、
何と言っても、その明るさと逞しさだろうか。
夏空をペーパーナイフで、すーっと切り開く・・・
めくれた夏空から、また別の夏空が現れそうな気がする。
まるで、ペーパークラフトのような軽やかさがとてもいい。
「滝」7月号より抄出。(Midori)