十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

梅雨

2017-08-31 | Weblog
心にも喫水線がありて梅雨     岩岡中正

「心」という抽象的な概念に、「喫水線」という具象。句跨りのリズムの果に置かれた「梅雨」によって、いかにも雨に溺れてしまいそうな、ぎりぎりの心の在りようがイメージされる。「阿蘇」9月号より抄出。(Midori)

田の神

2017-08-30 | Weblog
たましひは凋花の如し五月闇
蛍火やあの世この世と櫂の音
夜夜鳴いて田の神を呼ぶ蟇
ロザリオに息づくひかり青葉潮


*「阿蘇」9月号、岩岡中正選

 「凋花」とは、文字通り凋んでしまった花のことです。菖蒲園で、凋花を摘む作業が良く見られます。
 この度の新幹線の旅で、一番印象的だったのは、どこを走っても変わらない青田が広がっていたことでした。日本古来より続く営みの尊さ、そして何よりも平和の有難さが心に沁みた旅でした。(Midori)

黄昏の富士

2017-08-28 | Weblog

黄昏の富士は、雲から頭を出していましたが、夜になるとすっかり晴れて、空には満天の星!闇に浮かぶ富士の2合目、5合目、8合目には、山小屋の灯りが点々と輝いていました。(Midori)

    虫の音や富嶽八合目の灯り

富士山

2017-08-26 | Weblog
富士山を見に、山梨まで行ってきました。東海道新幹線、新富士駅を下車して、河口湖へとバスで2時間少々。河口湖越しに見る富士山は、それはそれは美しく、刻々と変わる雲の形や富士山を見るのは、飽きることなく、河口湖に映る逆さ富士も見事でした。最も好きだった富士は、夜明け前の青い富士と、夜明けの赤い富士でした。(Midori)  

夜明け前の富士山はこんなに青かった!

夜明けの富士山は、赤富士と言われるものでしょうか?

静かな河口湖に映る富士山。
この日富士山が見えたのは、何と51日ぶりだとか。ラッキ~!

    暁の富士は秋思の色をして

昼顔

2017-08-23 | Weblog
昼顔の中に潜むは睡魔なり     谷口加代

「睡魔なり」と、断言されると、納得するしかないが、確かに真昼間に咲く可憐な昼顔を見ると、睡魔が潜んでいるかもしれないと思わないでもない。「昼顔」から、「睡魔」への巧みな距離感も流石だが、作者ならではの発想の奇抜さに、目が覚める思いがした。「滝」8月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

未草

2017-08-21 | Weblog
未草晩年といふ自由席     今野紀美子

晩年をどう生きるかは、各々の自由である。これまで勤めてきた職場や、守り支えてきた家庭を「指定席」に例えるならば、晩年は、まさしく「自由席」である。上五に配された「未草」に投影された作者の思いは、さて何なのか・・・?「睡蓮」としなかったということは、未の刻に開く「未草」に、晩年を重ね合わせたのかとも思う。「滝」8月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

土曜例会

2017-08-19 | Weblog
6月以来、久しぶりの本部例会。8月は、原爆忌、終戦忌そしてお盆と鎮魂の月である。決して避けて通れないテーマでありながら、苦手意識もあって今回はすべて外しての出句。主宰からは、「精神性の高さ、上手い俳味、真情のある句、それに技術」との評価の基準が示される。そうそう意識してできるものではないが、結果的にそんな句に選が集まった気がする。(Midori)

   信仰は海を越え来し草の花

万緑

2017-08-18 | Weblog
水汲みに行く万緑の底の底     加藤信子

「万緑」は、短期間で成長する杉などの植林ではなく、枝を拡げ、大地に深く根を張る広葉樹だと思われる。万緑、紅葉そして落葉という自然のサイクルは、山々の保水力を高め、森は天然の水甕となる。掲句を読んで、万緑の底を流れる渓流の冷たさが、ふと蘇った。今月号の巻頭句、「少年の髪にバリカン麦の秋」のノスタルジーを感じさせる作品も素晴らしい。「滝」8月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

2017-08-16 | Weblog
夕ぐれのとほき鐘の音汗ぬぐふ      庄子紀子

それまで一心に何かに打ち込んでいた作者。ふと遠くから聞こえてきた鐘の音に、時間の経過を感じ取ったのである。「汗ぬぐふ」に、心地よい疲労感の中にも、一日の充足感が感じられる一句である。「滝」8月号〈渓流集〉より抄出。(Midori)

終戦忌

2017-08-15 | Weblog
終戦記念日、今日の社説によると戦前生まれの人口は2割を切ったという。いずれ戦争体験者が存在しない時代を迎えれば、先の戦争は、文字通り「史実」でしかなくなってしまうとも。戦中戦後を生きぬいた父母の話をもっと真剣に聞いておけばよかったと悔やまれるこの頃です。(Midori)

   星月夜戦火をくぐり来し記憶

2017-08-09 | Weblog
太白星や名のなき滝を神として    池田智惠子

俳誌「滝」の表紙には、毎月会員の輪番制により、「滝」の句が掲載されているが、「滝」と言っても、著名な滝もあれば、そうでない多くの滝がある。「名のなき滝を神として」とは、実際の景であり、作者の心情であると思われるが、「滝」の一会員としての切なる思いにも重なる。「太白星」は、言うまでもなく金星のことであり、「太白」は創刊主宰の生まれ育った地名でもある。亡き創刊主宰への密かなオマージュとして心惹かれた一句である。「滝」8月号より。(Midori)

風鈴

2017-08-08 | Weblog
風鈴に顔をひらたくねむりたる     成田一子

「風鈴に」の「に」の方向性に、風鈴と作者の位置関係が見えてくる。風鈴の鳴る方向に、顔を横向きに眠っているのである。それを、「顔をひたらく」というのだ。机に頬をぺたりと乗せて寝ている様が容易に想像できる。「ひらたく」眠る姿は、無防備で平和そのものの。風鈴の鳴る懐かしい昭和がふと蘇って来た。「滝」8月号〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)

短夜

2017-08-07 | Weblog
生を語れる短夜のラジオ
回廊をめぐる夜風や業平忌
せせらぎに草の匂ひや蜻蛉生る
修羅の世を咲き昇りたる凌霄花


*「滝」8月号〈滝集〉成田一子選

主宰から頂いた選評に、「同じ内容の話を聴くにしても時間帯によって感じ方が変わるように思う」とある。学生時代、ラジオパーソナリティーが、やさしく語りかけてくれる、あの透明感のある言葉は、深夜という一人だけの時間帯にとっては、未知の人生への憧れだったような気がしている。(Midori)

向日葵

2017-08-06 | Weblog

 地域に配られた向日葵の種、5個が、私の身長を遥かに超えて、大輪の花を咲かせました。真直ぐに伸びた向日葵の茎は、それほど太いという訳でもないのに、大きな花をしっかりと支えて立っています。
 このブログも、今日で3000回目。3000句以上の句を紹介させて頂きました。検索機能を利用すれば、何かと便利にもなりました。
 今日は、8月6日、原爆の日。このブログのささやかな記念日とは何ら関係はありませんが、今から72年前の今日、広島にも向日葵の花が咲いていたのかなと思いました。(Midori)

   向日葵の花の量感俯ける