十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

文学は知識とは違ふ

2018-02-28 | Weblog
川上未映子著、『乳と卵』。南関町図書館で、すでに新刊ではない「か行」の書架の一番下にあったものを何気なく手にした本。大阪弁そのまんまで語られた数日間の出来事だったが、女と生まれれば素通りできない現実が、繊細な会話を通じて提言されていた。文体は、「、」で繋がる文節はどれも長く、「。」になるまで、何と8行もあったりと、学校で習った作文のイロハなど知らないかのようである。世に溢れ返っている既成の言葉ではなく、彼女自身の平明な言葉で綴られているにも関わらず、第3者である読者の五感に新鮮にリアルに伝わってくるのは、物事への関心の深さと、何でも当たり前のこととして片付けてしまわない感受性の高さが根底にあるからだろう。これは俳句にも通じることだと改めて実感!第138回芥川賞受賞作だけある素敵な作品だった。(Midori)

梅✿

2018-02-26 | Weblog
梅咲いて庭中に青鮫が来ている     金子兜太

Eテレ、「94歳の荒凡夫~金子兜太」の放送を見て、彼のいくつかの代表作の背景を知ることができた。掲句はその一つ。退職後、妻、皆子さんの勧めで、土のある熊谷市に引っ越して、兜太の俳句世界が広がったというが、ある朝、戸を開けると、白梅。庭は海底のような青い空気に包まれていて、「春が来たな」と思ったら、海の生き物で一番好きな青鮫が、庭のあちこちで泳いでいたという。幻覚のような話だが、この句が全く理解できなかった私にとっては、「ただそれだけのことだったのか」という正直な感想と、思ったことは自由に表現しても良いのだという安堵につながった。合掌。(Midori)

紅梅

2018-02-25 | Weblog


熊本県玉名市の蓮華院誕生寺の梅園。良く手入れの行き届いた紅梅、濃紅梅が5分咲きとなって一番の見頃を迎えている。(Midori)

   紅梅の百重に千重に香を放つ

里神楽

2018-02-22 | Weblog
生国の星は大粒里神楽     及川源作

夜空が近くて、空気が透明、人家の灯も少なく・・・。星が大粒なところと言えば、そんな山里だろうか。大粒の星さえ、「里神楽」の一役を担っているようにも思える。「生国」への誇りとロマン溢れる一句である。「滝」2月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

氷柱

2018-02-20 | Weblog
大氷柱かくまで太き都落ち     成田一子

九州では、あまり見ることのなくなった氷柱だが、作者は宮城県在住である。氷柱も時に「大氷柱」となる日もあることだろう。ところが、「かくまで太き」となると、さらに北上しないと見られないと思われる。「都落ち」とは、そんな都心部からさらに遠く居ることへのアイロニーであり、諦観なのだろうか。一方で、作者らしい楽しさがある句であることは言うまでもない。「滝」2月号〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)

春愁

2018-02-18 | Weblog
昨日の本部土曜例会は、51名の参加。主宰に選を頂く貴重な機会なので、早春の句を自選しての5句出句。主宰からは、「ナルシスティック」との評を頂いた。俳句はもともと一人称の文芸なので、少々のナルシシズムは許されると思っているが、ビミョ~なところ・・・。(Midori)

    手鏡のなか春愁の眉二つ  
  *主宰特選   

猫柳

2018-02-16 | Weblog
ネットより
町公民館での南関句会の兼題は「猫柳」。この綿毛の部分は、ずっと木の芽だと思っていたが、花穂だと初めて知った。(Midori)

    さざなみに掉さす舟や猫柳
    *指導者入選句

追悼★

2018-02-14 | Weblog
3月10日、熊本県在住の作家、石牟礼道子さんが亡くなった。90歳。
代表作、『苦海浄土』
「彼女は彼らに成り変ることができる」
「天性の語り部」
「一種のシャーマンだもんね」
これらは、彼女を良く知る人の言葉である。
法名は、「釈尼夢劫(むごう)」
約35年前に彼女自ら決めたという。合掌。(Midori)

祈るべき天とおもえど天の病む     道子
にんげんはもういやふくろうと居る    〃  
  

二月

2018-02-11 | Weblog


昨年世界遺産に登録された熊本県三角西港。一号橋を渡れば、もう天草。釣鐘島とも言われるユニークな形の島が印象的です。(Midori)

    白波の翼広げて来る二月

大根

2018-02-09 | Weblog
大根を抜けば浮世の穴ひとつ
晩秋の鐘の音ひとつづつ暮るる
一瀑を荘厳したる冬紅葉
鹿鳴くや紫紺の闇を慄はせて


*「阿蘇」2月号、山下しげ人選

【選評】 大根を引き抜くと穴が出来るのは当たり前のこと。その当たり前のことをわざわざ「浮世の穴」と言ったことで何とも言えない俳味となっている。(しげ人)

今年は野菜の高騰で、白菜泥棒まで出てくる始末。大根を詠むにも力が入るが、掲句は以前に大根を抜かせてもらった時を思い出して詠んだ句。(Midori)

神迎

2018-02-07 | Weblog
稜線に心あそばせ神迎      山下接穂

出雲から長い旅を終えて帰って来られる神様を、今か今かと待ちわびている作者である。しかし、神様はいまだ「稜線」の向う側。「稜線に心あそばせ」という中七に、「神迎」の喜びがしみじみと感じられる一句である。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

冬帝

2018-02-05 | Weblog
天気図にある冬帝の陣構へ      土屋芳己

天気図において、西高東低の気圧配置と言えば、厳しい寒さになることを意味する。その気圧配置を「冬帝の陣構へ」とは、言い得て妙。「冬帝」という物語性のある季語を具現化することに成功しているのではないだろうか。天気図に、「冬帝の陣構へ」を見出した作者の想像力とユーモアに拍手。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

萩刈る

2018-02-03 | Weblog
萩刈られ名もなき坂となりにけり     永村美代子

熊本にも隠れた萩の名所があるのだろう。萩の季節になるとたくさんの見物人で賑わう坂も、花が終われば、「名もなき坂」となってしまう場所。「名もなき坂となりにけり」と淡々と叙された措辞に、俳味も感じられるが、日常に戻った一抹の淋しさも感じられる一句ではないだろうか。余韻のある作品に心惹かれた。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

鹿の声

2018-02-01 | Weblog
鹿の声透きとほる夜の不整脈     本田久子

夜は夜でも、「鹿の声」が「透きとほる夜」である。いかにも繊細で透明感のある鹿の声に、張りつめた空気感が漂う。「の」の繋がりによって、「不整脈」へと絞られてゆく昂揚感・・・。自らの「生」と一時向き合っている静かな夜なのではないだろうか。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)