十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

底紅

2018-10-31 | Weblog
底紅やパーマネントの母若し
梵鐘の余韻に一葉落ちにけり
あさがほや子規の遺せし空のいろ
大いなる闇を舞台に花火果つ


*「阿蘇」11月号、岩岡中正選

選評の前に、最近決まって言われることに、「俳句がパターン化している」ということである。俳句そのものが、五七五の短詩形であり、「や」「かな」などの切れ字による「切れ」を持つ韻文であるため、いくらかのパターン化は致し方ないと思うが、伝統俳句独特のパターン化は確かに存在する。無意識のうちに陥っている「パターン化」、自己パターン化も合わせて、心に留めておきたいもの。(Midori)

今年米

2018-10-29 | Weblog
新米を頂いた。「今年米」とも言って、生産者でなくても新米を頂く喜びは大きい。それまでの米は「古米」、その前の米は「古々米」。それぞれに季語としての感慨は大きい。(Midori)

    ひと粒に山河のひかり今年米
     

花火

2018-10-25 | Weblog
炎天に風のぬけ殻ありにけり 
ひまはりや戦火は刻を焼きつくし
仙境に架かる吊橋ねぶの花
青春のヒュンとロケット花火かな


*「阿蘇」10月号、山下しげ人選

2018-10-22 | Weblog
汝も我も村の生まれや蟇      徳永文代

村に生まれて、村を離れることもなく、村に生きる作者にとって、同じ「村の生まれ」の蟇とは、同郷である。そのように視点を変えれば、蟇だけでなく、全ての小さな生き物が、何だか愛おしく思われる。「阿蘇」10月号より抄出。(Midori)

2018-10-21 | Weblog
最近よく思うことは、一読して、すぐに映像が立ち上がってくる句は優れた俳句だということである。そういう句は、大抵一句一章であることが多く、当然、季題を詠むことにも繋がる。となると、季語の説明であったり、類句類想に陥ったりと、そうそう容易いものではない。しかし、二句一章のように、後日になって、季語は何だっけ?という本末転倒なことにはならない。(Midori)

    手鏡の中の魔界や月天心
     *土曜例会、岩岡中正選

2018-10-19 | Weblog
好きなことしてゐる汗と思ひけり    坂田美代子

「汗」と言っても、運動や勉学、労働による汗と、いろいろだが、今、作者の「汗」は、「好きなことしてゐる汗」だという。「汗」に対するちょっとした不快さを、心地よいものに変えているのは、「思ひけり」という心の動きではないだろうか。「阿蘇」10月号より抄出。(Midori)

古代の森Ⅱ

2018-10-16 | Weblog
主宰の講評では、「どこに焦点を絞るか、どこを見るかは、それぞれの個性である」というような事を述べられたが、確かに吟行と言っても、見る場所には好みがあるもの。私は、装飾古墳館の展示室の土器や土笛、副葬品の数々を丹念に見て回ったが、古代と現代がふとリンクする瞬間があったような気がする。(Midori)

  Ψ 蟷螂の土師器のいろに枯れてをり
     *岩岡中正主宰選

古代の森

2018-10-14 | Weblog


火の国探勝会が、山鹿市鹿央町の「古代の森」で行われ、雲ひとつない青空に前方後円墳や円墳が美しいシルエットを見せてくれました。(Midori)

   方円に末枯れてゐる墳墓かな
   *岩岡中正主宰選

油照

2018-10-12 | Weblog
油照草木虫魚みな必死     井芹眞一郎

今年の猛暑は、命の危険さえ感じる程だったが、それは人間だけでなく、あらゆる生きものとて同じだった。「必死」という言葉の緊迫感がまさしく、「油照」のさまを物語る。平易な漢字と、「みな」という平仮名だけの作品は、どこか心経のようである。「阿蘇」10月号より抄出。(Midori)

溽暑

2018-10-09 | Weblog
恐竜のたまごが孵る溽暑かな      磯 あけみ

現実ではあり得ないと分かっていながら、あり得るかもしれないと思わせるのは、「溽暑」という季語の力である。溽暑という不快な暑さの中、「恐竜のたまごが孵る」という発想は、実にユニーク。「阿蘇」10月号より抄出。(Midori)

2018-10-05 | Weblog
炊煙のごと一すぢの朝の霧      岩岡中正

上天草市松島での秋の研修会二日目の主宰の一句。「炊煙のごと」であるから、実際の景ではないが、「朝の霧」に、かつての島人の暮しを偲んだものである。「炊煙」という比喩によって、ガスや電気の無かった島の暮しを映像化することを可能にしている点が、何と言っても秀逸である。5句選の句会で、一番に頂いた句であるが、私だけだったのでちょっと意外で嬉しかった。「阿蘇」10月号より抄出。(Midori)

万緑

2018-10-02 | Weblog
ハンモック樹間に星の生れけり
渓音となる万緑の雨しづく
しろがねの雨脚ほそし合歓の花
嶺々ひかる瑞穂の国や田水張る


*「阿蘇」10月号、岩岡中正選

大自然の中で経験したハンモックは、まさしく宇宙を実感。二句目、三句目は、たまたま雨の吟行で得た句。4句目となった句は、第42回野原八幡宮御田植祭で、熊本県俳句協会賞を頂いた句だが、主宰の選では4番目。(Midori)