十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

迎春

2013-12-31 | Weblog
ブログ開設以来、1924の作品を紹介させていただきました。
また来年も俳句との出会いを楽しみに頑張ります。
どうぞよろしくお願いいたします。
皆さまにとって素敵な2014年がやって来ますように・・・。(Midori)

言の葉をつなげば年の改まる    みどり

日記買ふ

2013-12-30 | Weblog
我が生は淋しからずや日記買ふ     高浜虚

「我が生は淋しいかもしれない」という不確かな不安感。ここには、大悪人虚子とは思えないような人間虚子の一面が垣間見られる。まるで日記をつけるように自在に句を詠む虚子だが、一体日記に何を記すのだろうか。「新ホトトギス歳時記」より抄出。(Midori)

年の暮

2013-12-29 | Weblog
捨てられぬ本動かして年の暮     小島 健

増え続ける本を処分するには、捨てるしかないが、本への愛着は、「捨てる」ことへの逡巡につながり、結果、「捨てないでおく」ということになることも多い。捨てられぬ本を動かして、本にまた新たな場所を与える。これもまた煤払いの一つと言えそうだ。2014年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

松飾る

2013-12-28 | Weblog
ばさと伐りむずと結はへて松飾る    大谷弘至

松を飾る一連の作業を、端的に言い表して男性的な一句。ばさと伐りむずと結わえる作者のきりりとした眉や一文字に結ばれた唇までが見えるようだ。2014年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

湯豆腐

2013-12-27 | Weblog
湯豆腐の底だぶだぶの大昆布      相子智恵

昆布を敷いた鍋の中に豆腐を入れて、温まったところを掬って食べる湯豆腐は、とてもシンプルな日本食。それだけに、こだわりの湯豆腐の食べ方が色々ありそうだが、変わらないのは、あの出汁が出てしまった後の鍋の底の昆布。「だぶだぶの大昆布」と形容されて、誰もが納得する。2014年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

木犀

2013-12-26 | Weblog
ねむれません金木犀がうるさくて    長岡ゆう

眠れない理由が他にあるのか、あるいは何もなくて、ただ何かの所為にしてしまいたかったのか・・・。それにしても、その理由が、「金木犀がうるさくて」とは、あまりにも理不尽だが、それも一つの詩。もしかしたら、作者には金木犀の声が聞こえているのかも?「滝」12月号〈滝集〉より抄出。(Midori)



晩秋

2013-12-25 | Weblog
晩秋の海瓦斯灯に消えゆけり     池添怜子

レトロな雰囲気の港町だろうか。晩秋の瓦斯灯が点る頃、やがて海は闇に消えてしまう。それだけの情景を詠んだ句ではあるが、「瓦斯灯に消えゆけり」という、省略の利いた表現の巧みさによって詩情深い作品となっている。「滝」12月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

秋澄む

2013-12-24 | Weblog
秋澄むや地軸に回るベアリング     佐々木博子

知覚することはできないが、地球は物凄いスピードで回っている。地球が誕生して以来ずっと回り続けているのだから、物体としての地軸があるとしたら、とっくに摩耗してしまっていることだろう。しかし、「地軸を回るベアリング」とは、何とダイナミックな発想。まるで、地球は高性能な機械装置であるかのようだ。秋澄む日本に美しい四季があるのは、ちょっと傾いた地軸のお蔭だ。「滝」12月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

冬の雁

2013-12-23 | Weblog
冬の雁マッチ擦る間の修司かな     あいざわ静子

「マッチ擦る間の修司」とは、かつて若者のカリスマ的存在だった寺山修司。『マッチ擦るつかのま海に霧ふかし身捨つるほどの祖国はありや』と詠んだ修司だが、今こそ作者の心に深く響いてくるのかもしれない。「冬の雁」に寄せる思いもまた国を思う気持ちにつながっているようだ。一瞬の情感が詠まれて、修司ファンならば見逃せない一句。「滝」12月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

猪鍋

2013-12-22 | Weblog
猪鍋や灯せば深き山の闇      加川則雄

山里の日暮れは早い。灯る明りもまばらで、静かな闇がすぐに辺りに立ち込める。「灯せば深き山の闇」とは、そんな闇だろうか。猪鍋の山里ならではもてなしに、山の闇が一層濃く深く迫ってくる感じが、上手く表出されている。「滝」12月号〈瀑声集〉より抄出。(Midori)

蓑虫

2013-12-21 | Weblog
蓑虫のゐる樹に祀る酒二合     赤間 学

蓑虫は、樹木の葉を食い荒らす厄介な生きものだが、「蓑虫のゐる樹」というと、そうでもない。包容力があるというか、命を育んでいるというか、一樹のやさしさが感じられるからだ。酒二合という現実的な措辞ではあるが、何かしら素朴な詩情に心惹かれた。「滝」12月号〈瀑声集〉より抄出。(Midori)

葛湯

2013-12-20 | Weblog
湖の入日引き寄せ葛湯溶く     酒井恍山

「湖の入日」は、美しくも儚いロケーション。「引き寄せ」とは、その入日を惜しんでいる作者だろうか。そこから、「葛湯溶く」への展開。入日が葛湯にゆっくりと溶け込んでゆくような、時間の経過が美しいイメージの世界。「滝」12月号〈渓流集〉より抄出。(Midori)

天の川

2013-12-19 | Weblog
注文の梯子の長さ天の川     阿部風々子

用途に応じていろんな長さの梯子があるが、一体、どのくらいの長さの梯子が注文されたのだろう。「注文の梯子の長さ」とだけでは、その長さは読者の想像に任せるしかないが、「天の川」とあれば、まさか天の川に届く梯子?と考えてしまう。宮沢賢治の「注文の多い料理店」を彷彿とさせるような不思議な世界に引き込まれそうだ。「滝」12月号〈渓流集〉より抄出。(Midori)

冬萌

2013-12-18 | Weblog
冬萌に論語の素読韻きけり      菅原鬨也

「会津へ」と題された10句の中の1句。旧会津藩校、日新館では、かつて10歳になると会津藩士の子弟は日新館に入学し、その生徒の数は千人を超えていたというから驚きだ。「子曰く」ではじまる『論語』の素読が、今もなお聞こえて来るようだ。「冬萌」に、人材の育成を重んじた会津藩が偲ばれ、会津吟行ならではの魅力的な作品となっている。「滝」12月号〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)

ゆたかの海

2013-12-17 | Weblog
鹿鳴けり紫紺の闇を慄はせて
桃の香にくもれるダイヤモンドかな
月の面のゆたかの海や黒葡萄
颱風を引張つてゐる尾翼かな      平川みどり


*「滝」12月号〈滝集〉菅原鬨也選