十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

2018-07-30 | Weblog
滝壺に突き刺さりたる水柱
朴ひらく天与の高さありにけり
蜻蛉の水より生れて空のいろ
落し文風の返書の二つ三つ


*「阿蘇」8月号、岩岡中正選

【選評】 正面からの力強い写生句で、乾坤を一刀両断する一句である。滝壺めがけて一気に刺さる水柱の大音響としぶきまで見える。一読して眼裏にしっかりと残像がのこるのが、良い写生句である。(中正)

「阿蘇」に入会してはじめての探勝会が、山都町の五老ヶ滝。ゆっくりと水飛沫を上げながら、凄まじい勢いで落ちてゆく滝の迫力に、形容する言葉は何も見つからなかった。掲句は、平成28年の作、「・・・水の音」を、平成29年に「・・・水柱」と推敲して、やっとこの夏、投句へと辿りついた一句。(Midori)

ハンモック

2018-07-28 | Weblog
熊本大地震から3年目の夏、やっと菊池渓谷への道が開通した。我が家から車で1時間半。この猛暑、天然のクーラーを求めて出かけてみようか・・・。(Midori)

   ハンモック樹間に星の生まれけり

夏帯

2018-07-25 | Weblog
どかと解く夏帯に句を書けとこそ     高浜虚子

虚子47歳の句。席題として出された「夏帯」に対して、過去実際にあった出来事を句にしたものであるという。間違いなく名句であると思えるのは、何と言っても、「どかと解く」というオノマトペによって、夏帯の質感や女性の大胆な仕草がリアルに伝わってくるからだ。『虚子百句』より抄出。(Midori)

2018-07-20 | Weblog
面脱ぎて嫉妬の汗の美しく    高浜虚子

「面脱ぎて」であるから、能である。稲畑汀子著作、『虚子百句』によると、能の題目は、「葵上」。六条御息所の嫉妬が、シテの演じる「嫉妬の汗」となってしたたり落ちたのである。それを、「美しく」と捉えた虚子の美意識の高さは言うまでもないが、御息所の美しさへの敬意の現れでもあったのだろう。「嫉妬の汗」は、シテの演じる渾身の汗であると同時に、御息所の汗でもあるという二重性が巧み。虚子80歳の作品。(Midori)

春の闇

2018-07-18 | Weblog
ちゆく人工知能春の闇      杉村紫暁

「人工知能」は、科学技術の発展に大きく貢献すると思われるが、人類の知能を越えるものである限り、いくらかの不安は拭えない。そんな漠然とした感情が、艶やかで不確かな「春の闇」という季語の斡旋に繋がったのだろう。最先端の題材を詠まれて、ちょっとしたアイロニーが感じられた。「阿蘇」7月号より抄出。(Midori)

白日傘

2018-07-13 | Weblog
「日傘」は夏の紫外線を避けるためには欠かせないもの。母の時代は、白いレースの日傘がお洒落だったが、今の猛暑ではほとんど役に立たなくなった。歳時記の「日傘」を見ると、「絵日傘」「白日傘」「パラソル」はあっても「黒日傘」はない。やはり日傘は、白。私は白にこだわり、内面に遮光布が張ってある日傘を愛用している。夏の吟行には欠かせない。(Midori)

白日傘くるりと孤独なる宇宙 
   *6月探勝会、岩岡中正特選

たかんな

2018-07-11 | Weblog
読経に裏のたかんなぞくぞくと    つのだともこ

「読経」という、仏事に相反するかのような、「たかんな」の生命力が何とも可笑しい。「裏のたかんな」の「裏」のちょっとした控え目さが、一句に物語性を与えているが、何と言っても、「ぞくぞくと」のオノマトペがいかにも大寺を思わせてユニーク。同時掲載句、“鐘一打筍山の動きけり”も、好きな一句。「阿蘇」7月号より抄出。(Midori)

明易し

2018-07-09 | Weblog
夜明け前の地震!次に本震が来るのかと動けずにいたら、朝になっていた。6日の豪雨も不気味だったけれど、紫の雨雲ではなかったらしい。「これまでに経験したことのない大雨の恐れ」という警報に対処する術もなく、神の采配に委ねるしかない。豪雨のあとは、皮肉にも梅雨明かと思うような青空。猛暑の中、被災地の復旧作業の無事を祈りたい。(Midori)

    明易し玩具のやうな未来都市

雪柳

2018-07-04 | Weblog
雪柳真昼の怒濤ありにけり     岩下律子

雪柳は、たくさんの細い枝をしならせて白い小さな花を無数に咲かせる。その様を、「真昼の怒濤」と形容。雪柳の強靭な生命力そのものが詠まれて、独創的。今春、雪柳の苗を頂いて植えてみた。真昼の怒濤のように逞しく大きく育ってほしい。「阿蘇」7月号巻頭句。(Midori)



雲雀

2018-07-02 | Weblog
大空の死角を落ちてゆく雲雀
海の面を焦がす夕日や鳥の恋
山藤のむらさき深みゆく水音
さよならのあとのふらここ揺れ止まず


*「阿蘇」7月号、岩岡中正選

山々を間近にした小さな町に住んでいると、嶺々を遠くした大地は、殊のほか広々と感じられるもの。掲句の雲雀の句は、そんな場所で詠んだ句。雲雀の声が聞こえる大空は、どこまでも雲ひとつない青空だった。(Midori)