十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

5月号ⅱ

2019-04-30 | Weblog
椿落ちて後悔あらうはずもなし     岩岡中正

「三月二十一日、イチロー選手引退」という前書のある一句。イチロー選手の現役引退会見の中の、「後悔などあろうはずはない」をそのまま一句にした句である。彼の選手生活を振り返る時、この言葉ほど力強く響いてくるものはなく、何度聞いても胸が熱くなる思いである。さて、斡旋された季語は、「椿落ちて」である。敢て字余りとした作者の意図は、イチロー選手を惜しむ気持ちとも受け取れる。いよいよ平成最後となった今日、「後悔あらうはずもなし」と言えるほどの努力もしてこなかったことに後悔を覚えるが、明日からの「令和」に、何か新しい風を感じていたいもの。「阿蘇」5月号より抄出。(Midori)

5月号

2019-04-28 | Weblog
祈る手に無量のひかり涅槃西風
野を辷る風の匂ひや廏出し
一日老ゆ水餅の水替へるたび
人の世の角を曲れば春の月

*「阿蘇」5月号、岩岡中正選

【選評】 「無量のひかりに思いが深い。「無量無辺」といえば、はかり知れないという仏教用語であって、「祈る手」を通して人は、大きな救いあずかる。まことに「涅槃西風」にふさわしい安心(あんじん)の一句。(中正)

今年2月に玉名市の廣福寺の涅槃図を見に行った時の句。と言っても写生や直感で句は簡単に詠めるわけでなく、「無量」という仏教用語の力を借りたもの。土曜例会では、主宰並選であり、本誌には5番目の投句だった句。(Midori)

4月号ⅷ

2019-04-25 | Weblog
嚔して別の日向に移りけり     荒牧成子

「別の日向」とは、何とも楽しい。いくつかのベンチがあって、それぞれに違う「日向」があるのだろう。嚔したのは、その日向の所為ではないのに、「別の日向」に移ったという俳諧味のある一句。「阿蘇」4月号、山下しげ人選。(Midori)

4月号ⅶ

2019-04-23 | Weblog
冬座敷茶柱立ててもてなされ     原田順子

何でもないような句だが、この句の面白さは、「冬座敷」と「茶柱」の取合せにある。「茶柱」の「柱」が、いかにも「冬座敷」の一部を構成しているかのように思えるからだ。こうした語感のイメージが、句となり得ることの良いお手本ではないだろうか。「阿蘇」4月号より抄出。(Midori)

リラ冷

2019-04-21 | Weblog
島崎普著、『らくらく読める聖書』を読了。クリスチャンではないと言っても、欧米の文化は、すでに日本にも深く浸透しており、経済的効果も高いのが現実。「国際人であるためには、聖書に関する知識はあるに越したことはなく、多すぎて困ることはない」と、島崎氏による本書のまえがき。(Midori)

リラ冷のひかりの中で読む聖書     *土曜例会 中正選

リラの花は、監物台植物園で、幼木ながらいい香りを放っていました。

2019-04-18 | Weblog
兼題は、「花」。花といえば桜だが、桜の傍題は多い。「花」は、初花から、残花、葉桜へと、季節とともに変わり、同じ「花」でも、気分は随分違う。今年も満開の頃、地元の花の名所、大津山へ出かけた。いつもの桜に、心を動かされることはないと思っていたら、桜が咲いていない虚空から突然の花吹雪が・・・!やはり一期一会の「花」との出会いはあるものだと実感。(Midori)

異界よりふぶいて来たる桜かな       *中正選(in NHK)

4月号ⅵ

2019-04-15 | Weblog
活断層枕に眠り寒の月     伊藤広子

4月16日で、熊本地震本震から3年を迎える。桜の頃と重なるため、桜を見ると地震を思い出すという人も多いと聞く。さて掲句。「活断層を枕に」とは、何とも大胆!地震の恐怖は時間と共に諦観へ変わって行くのか?「寒の月」が冴え冴えとしてちょっと寂しい。「阿蘇」4月号より抄出。(Midori)

4月号ⅴ

2019-04-13 | Weblog
遅れ着く初荷に市場殺気立つ      今村征一

「遅れ着く」の措辞には、初荷を待つ人々の様々な感情が省略されているが、きっと期待感と不安感の入り混じったものだろうか?それだけに、「初荷」へ喜びは大きい。「殺気立つ」に、競市の臨場感が伝わって来た。「阿蘇」4月号より抄出。(Midori)

4月号ⅳ

2019-04-11 | Weblog
乗車位置ぴたりと決まり初電車     豊田規容子

乗車位置が決められている電車乗り場にとって、「乗車位置がぴたり」と決まるのは当たり前だと思っていたが、こうして改めて句にされると、その運転技術の高さと乗客への心配りに感謝である。「初電車」らしい緊張感が何とも心地よい発見の一句である。「阿蘇」4月号より抄出。(Midori)

4月号ⅲ

2019-04-09 | Weblog
風邪といふふいの休暇をもらひけり      高峰 武

有給休暇が保証されていても、なかなか休めないのが職場。「風邪」を理由に「ふいの休暇」を貰えば、ちょっと得をしたような気分になるのは不思議。「風邪」という季語の違った側面を見つけた思い。「阿蘇」4月号より抄出。(Midori)

麦青む

2019-04-07 | Weblog
復興の風当村の麦青む      岩岡中正

「風当」は、「かざあて」というルビが振られている。熊本に長年住む私だが知らない村の名。調べると、「熊本県阿蘇郡西原村小森風当」とあった。ここは、3年前の熊本地震の激震地の一つだと思われる。たくさんの被災地の中でも、「風当村」というちょっとメルヘンティックな村の名が選択されて、さらに「麦青む」という復興の証が、何とも嬉しい一句。「阿蘇」4月号より抄出。(Midori)

梨の花

2019-04-05 | Weblog


荒尾市の梨園では、今梨の花が満開!真白な一面の梨の花は、水平に仕立てられた梨棚による美しさであるが、それも「梨の花」の一つの特徴として捉えていいのかな?と思う。(Midori)

しろがねの日矢に匂へる梨の花    *中正選(in NHK)

4月号

2019-04-03 | Weblog
寒紅を引けばきのふと違ふ空
早春の風の触れゆく恋の絵馬
うたかたを吐ける四温の鯉の口
蝶凍てて月の光につつまるる

*「阿蘇」4月号、岩岡中正選

新元号は、「令和」と決まった。出典は、日本最古の和歌集、『万葉集』だとか。日本文化を見直すためにも、正しい歴史的仮名遣いや古文法を心がけたいもの。(Midori)