十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

芋の露

2017-11-30 | Weblog
ゆらゆらと張力ゆがむ芋の露
露草の藍にはじまる水音かな
にごり酒旅の終はりは月に酌む
老境の入口に咲く曼珠沙華


*「阿蘇」12月号、岩岡中正選

【選評】 まるで理科の観察みたいによくよく見てこれを正確に記した写生句であって、しかも同時に「芋の露」という「モノ」を置いて、全体として即物の詩情のある一句。徹頭徹尾よく見て、「張力ゆがむ」の一語が出た。立派だと思う。(中正)  *11月号 秋季研修会句評より

理科、化学、物理的な変化や現象への小さな興味は、小学生の頃からずっと持ち続けていたが、俳句という詩の世界において、主宰の選を頂いたことはこの上なく嬉しい。しかし互選ではゼロ。主宰には特選で採って頂いた貴重な一句。(Midori)

神の旅

2017-11-28 | Weblog
熊本市動植物園は、地震のため未だ部分開園が続いている。動物たちの中で、最も地震の影響を受けたのがチンパンジーだとか・・・。地震に遭った寝室に戻ることを拒み、入室できるまで半年かかったという。また大きな余震のたびに互いに抱きしめ合う行動も増えたともいう。地震は、人間だけでなくこんなところにも大きな影響を与えていたとは、知らないことばかり。元気なチンパンジーの姿を見られる日が待ち遠しいもの。(Midori)

    一望はひかりの海や神の旅   *南関句会、指導者兼題特選☆ 11.22

「阿蘇」例会

2017-11-26 | Weblog
昨日は、熊本市内の百貨店を覗いて、本部例会へ・・・。50名参加の250句出句。伝統俳句であるため花鳥諷詠が主流。季題を詠むという観点からすると発想のオリジナル性を追求するのはとても難しい。それでも、視点の捉え方や、表現力、写生力の高さからか、一歩踏み出た句に出会うとハッとさせられる。 

   蟷螂の祈り解かざるまま枯るる

さて、「枯蟷螂」の私の一句。「蟷螂」に「祈り」は、たくさんあることは承知した上での出句だったが、先日見た枯蟷螂の姿はどこか感動的だった。(Midori)


朝霧

2017-11-24 | Weblog
閂をはづし朝霧流しけり      小林邦子

「朝霧流しけり」という措辞から、「閂」は馬柵などに取り付けられている金具だと思われる。閂を外したからと言って、「朝霧」は牛や馬のようには行かないが、現実と詩の世界は違う。あたかも一箇所にとどまっていた朝霧が、閂が外された途端に流れて行くような錯覚を覚えるのは、やはり「朝霧」という季語の力かと思われる。「滝」11月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

2017-11-21 | Weblog
聖堂の冷合唱をつつみけり     谷口加代

聖堂を領していた「冷」は、「合唱」という生命の集合体を得て、「聖堂」という器の中で、次第に膨張したり凝縮したりするのだ。「合唱をつつみけり」と、詩情高い作品でありながら、「聖堂の冷」という現実に、ストイックな精神性も感じられた。「滝」11月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

秋の蝶

2017-11-19 | Weblog
川風に乗りかへてゆく秋の蝶     石母田星人

「乗りかへてゆく」と置かれて、「秋の蝶」の小さな旅を思わせる。どんな「風」に乗り換えて行くのかと想像が膨らむが、「川風」を配した作者である。「川風」には昔懐かしい日本の原風景が感じられる。時間の経過と景の広がりのある、「秋の蝶」のドラマティックな一句に心惹かれた。「滝」11月号〈瀬音集〉より抄出。(Midori)

画壇

2017-11-16 | Weblog
切り分けて画壇にとほきラ・フランス     成田一子

ラ・フランスと言えば、フランスの印象派の油絵を思い出す。あの硬質の容は果物というより、画材と言った方がいいのかもしれない。しかし、「切り分けて」しまえば、それはただの果物。「画壇にとほき」という把握は、西洋梨の印象を見事に切り取った措辞ではないだろうか。主宰のこういう句に出会うと、私の細胞が次々に若返ってゆく。「滝」11月号 〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)


林檎

2017-11-15 | Weblog
手のひらに回す宇宙や林檎剥く
拾はるることのうれしき木の実かな
創世のひかりを曳いて銀杏散る
草叢に戦火の匂ひ星月夜


*「滝」11月号、成田一子選

【選評】 林檎を剥きながら回すことで、「宇宙」を回している、という大胆な発想に驚かされた。今、宇宙の中心はこの手のひらにある。俳人は林檎という小さな物体を介して宇宙とつながることが出来る。そんな素晴らしさを感じる句。 同時作、「創世のひかりを・・」、こちらは目の前の銀杏から時空を超えて創世へとつながった。「林檎」「銀杏」―、それらのものを介して俳句では時間も空間も軽々と超えることが出来る。作者の句からは俳句をやる人のよろこびと誇りが感じられた。(一子)

 時空間を超えて心を遊ばせることはとても楽しい。楽しいだけでなく、こうして主宰に評価して頂けるとは、無上の喜びです。☆(Midori)

風鈴

2017-11-14 | Weblog
風鈴の風に古りたる句短冊     山本由布子

「風鈴の風に古りたる」という詩的表現に惹かれるが、古くなったのが自分の作品である「詩短冊」とは、何とも切ない。時代にとり残されたような寂寥感は、「風鈴」という昔ながらの風物詩の「風」だからだろうか。「阿蘇」11月号より抄出。(Midori)

松山城

2017-11-12 | Weblog
松山や秋より高き天主閣      正岡子規

松山城は、勝山の頂上にあり、ロープウェイで1分。そこからさらに天守閣の最上階までは狭くて急な階段を3階まで登らなくてはならない。壁にはずらり銃眼が並び、戦乱の世が偲ばれる。「秋より高き天守閣」とは、「秋高し」という季語を織り込んだ一句と思われる。子規の力量の高さも伺える一句ではないだろうか。(Midori)


 平成29年11月6日

宝厳寺

2017-11-10 | Weblog
色里や十歩はなれて秋の風     正岡子規

時宗の開祖、一遍上人が剃髪したとされる宝厳寺(ほうごんじ)までは、道後温泉から歩いて10分ほど。かつては遊郭だったと言われる坂道を登りきったところから、10歩の所にある。かつて山門の下に子規と漱石が並んで座った著名な場所。同じ場所に腰かけて写真を撮って来なかったことが残念だが、病身の子規を気遣う漱石の優しさに触れることができた。(Midori)


 平成29年11月4日

石手寺Ⅱ

2017-11-08 | Weblog
南無大師石手の寺よ稲の花    正岡子規

子規が夏目漱石の下宿先、愚陀佛庵に滞在している時に、石手寺で詠まれた一句。三重塔には四国霊場八十八箇所のお砂が奉納され、これに触れると八十八の霊場を巡ったことになると言われています。一番から順に八十八番、最後に高野山のお砂にタッチしてきました。(Midori)



 
    

石手寺

2017-11-07 | Weblog
 福岡空港より空路40分、四国松山まで2泊3日の旅に行ってきました。八十八箇所巡りの第51番の札所、石手寺(いしでじ)は、松山市道後温泉駅から歩いて15分。たくさんのお遍路さんで賑わっていました。(Midori)

    鈴の音に秋気澄みゆく札所かな

台風

2017-11-03 | Weblog
台風来雁字搦めの船溜り      田中美津子

もちろん台風に備えての漁師たちの智恵である。その様が「雁字搦め」とは、言えそうでなかなか言えない。言葉の発見の句であり、作者の感動もここにある。「阿蘇」11月号より抄出。(Midori)