桜 2012-03-31 | Weblog 西南の役の激戦地、田原坂に桜吟行に行ってきました。 1877年、ここで官軍、薩軍の多くの兵士が戦死しました。 今は、田原坂公園として、美しい自然が残されています。 花のいろ白と思へり田原坂 平川みどり
春 2012-03-30 | Weblog 春永や乳首にもどる花のいろ 西嶋あさ子 自らの病を詠まれた句で占める8句の中の1句。 コートに包む身体は、息を吸うのも吐くのも困難で、 胸の手術を受けられる。麻酔より覚めて飲む寒九の水に、 生きていることの実感を得る。窓から見える冬の山を、 一日見て過ごし、一日分傷が癒えたと思う。そして、春・・・。 乳首に花の色が戻り、木々の一枝一枝にも命が張りを感じている。 そんな一連の句に感動を覚えた。 「俳句」4月号〈作品8句〉より抄出。(Midori)
四温 2012-03-29 | Weblog 三寒の岩を呑み込む四温波 棚山波朗 三日ほど寒い日が続いた後に、四日ほど暖かい日が続き、 これが交互に繰り返されることを「三寒四温」と言い、 掲句のように同時に起こる現象ではないが、よく見られるレトリック。 しかし、寒さが残る岩を四温の波が包み込む情景は、 もう春潮となる日が近いことを教えてくれる。 対象的な動と静の取合せもよかった。 「春耕」主宰。「俳句」4月号〈作品16句〉より抄出。(Midori)
朝桜 2012-03-28 | Weblog 山神に荒塩すこし朝ざくら 伊藤通明 土俗性の強い作品だが、朝ざくらが、 清々しい空気感と彩りを与えている。 見たままの景がすっと切り取られて句となった。 「俳句」4月号〈作品16句〉より抄出。(Midori)
春野 2012-03-27 | Weblog 施死有無の有無を語らず春の野は 中原道夫 原発の安全神話が崩壊したあの日から、 セシウムは「施死有無」と化してしまった。 何も語らない春の野だからこそ、罪は深い。 「俳句」4月号〈特別作品21句〉より抄出。(Midori)
年越ゆる 2012-03-26 | Weblog 年越ゆる赤いドレスの裾つまみ 冴ゆる夜のページに星の匂ひして 手鏡のなかの歳月雪降れリ 前髪のヘアピンを抜く二日かな 平川みどり *「滝」3月号〈滝集〉に掲載されました
揚雲雀 2012-03-25 | Weblog 哀しみを突きぬけてゆく揚雲雀 石母田星人 人々の心を、そして作者の心を覆い尽くしてしまった深い哀しみは、 時間とともに、かたちを変えることはあっても、決して消えはしない。 どんな哀しみも、その場所に留まっていては哀しみは深まるばかり。 哀しみを突きぬける勇気を得たとき、哀しみはまた一つ形を変える。 揚雲雀は、作者自身だ。 「滝」3月号〈渓流集〉より抄出。(Midori)
寒卵 2012-03-24 | Weblog 寒卵割る一波乱ありさうな 鈴木清子 「寒卵割る」と、「一波乱ありさう」の間には何ら因果関係もなさそうだが、 「寒卵」と「一波乱」のともに、強烈な生命力を感じさせるものの出合が面白い。 「寒卵」という季語に新しい表情を与えてくれた作品。 「滝」3月号〈滝集〉より抄出。(Midori)
雪虫 2012-03-23 | Weblog 独り言みな雪虫となる日暮 相馬カツオ 『ハムレット』の第3独白では、彼の深い苦悩が伝わってくるが、 一般的に独り言が多くなるのは、多忙によるものかもしれない。 日暮となると、一層その感が強まるようだ。 さて、独り言が、「みな雪虫となる」という断定がいい。 比喩の意外性も見逃せない。 「滝」3月号〈滝集〉より抄出。(Midori)
雪もよひ 2012-03-22 | Weblog 鉄板を運ぶ四五人雪もよひ 遠藤玲子 工事現場だろうか?男性作業員が黙々と鉄板を運ぶ姿が見える。 ただそれだけの景ではあるが、「四五人」という人数にインパクトがあるのだ。 鉄板の大きさとか重さを一瞬にして想定できるからだ。 見たままを切りとっただけの何も語らない作品であるが、「雪もよひ」の 季語を得て、どこか不安感を覚える一句となった。 「滝」3月号〈滝集〉より抄出。(Midori)
冬 2012-03-21 | Weblog 名付けられ冬の金魚のよく動く 牧野春江 名前を付けられる前の金魚は、ただの「金魚」でしかなく、 ごく普通の金魚としての生態を持つと思われるが、 名前を付けられた金魚は、もうただの「金魚」ではなくなってしまう。 飼い主との関係もずっと深まり、固有の個性を持ちはじめるからだ。 名付けられた金魚と作者との楽しい会話が聞こえてきそうだ。 「滝」3月号〈渓流集〉より抄出。(Midori)
桜 2012-03-20 | Weblog さざなみの中に馬立つ桜かな 菅原鬨也 太陽の光を浴びて輝くさざなみの中に立つ一頭の馬。 水辺には、満開の桜が咲いている・・・。 あまりにも美し過ぎる構図の中で、馬はやはり幻ではないだろうか。 大震災に続く原発事故によって、季語の本意すら変わってしまった、 と言う俳人もいるが、「桜」もその中の一つかもしれない。 日本の原風景が失われつつある今、象徴性の高い一句が、 とても尊いものに思えてきた。 「滝」3月号〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)
春雷 2012-03-19 | Weblog ゆふべは星けふは春雷みせる窓 野口る理 ガラス窓を隔てて、いろんな表情を見せる空。 変わらないのは、作者? 「俳句」3月号〈20句競詠〉より抄出。(Midori)
接木 2012-03-18 | Weblog 接木でも挿し木でもよし残るなら 高橋将夫 接木も挿し木も植物の生育や栽培に関わる技法だが、 これらを人体に取り入れると仮定したらどうだろう? 「接木でも挿し木でよし」という一見突き放したような比喩だが、 「残るなら」の生への執着。こんな飾らない死生観が好きだ。 「槐」主宰。「俳句」3月号〈作品12句〉より抄出。(Midori)
春 2012-03-17 | Weblog 三尺のスカイツリーや千葉の春 鳥居美智子 今年2月29日に竣工したばかりの東京スカイツリーは、 東京タワーより、はるかに軽量化、耐震性ともに優れているとか? 全高634mで、世界一の電波塔となったスカイツリーも、 千葉から見ると、ほんの三尺だという。 千葉の春・・・、スカイツリーがまるで土筆のようだ。 「ろんど」所属。「俳句」3月号〈作品8句〉より抄出。(Midori)