十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

葉桜

2012-04-30 | Weblog
葉桜や鍋と男の磨き甲斐    小川軽舟

今月「俳句」5月号でグラビアページを飾っている作者。
この春より、関西に単身赴任となられ、男を磨くより、
鍋を磨くことの多くなった毎日ではないだろうか?
「葉桜」の季語の斡旋がよかった。
「鷹」主宰。2012年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

チューリップ

2012-04-29 | Weblog
ゴーギャンとゴッホの喧嘩チューリップ    岸本尚毅

チューリップは、赤や黄の原色が可愛らしい花だが、
ゴーギャンやゴッホの絵は同じ原色でも強烈な印象を与える。
赤と黄が競い咲くさまは、赤がゴーギャンならば、黄がゴッホだろうか?
Gではじまる著名な画家の並列が面白い。
第四句集「感謝」より抄出。(Midori)

紅椿

2012-04-28 | Weblog
紅椿踏んで猫の目かつと金    加治幸福

落ちたばかりの紅椿は、まだ艶麗さが残っていて、
踏むことなど考えもしないが、猫は非情。
一瞬を捉えて、「猫の目かつと金」がユニーク。
「天為」所属。2012年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)


朧月

2012-04-27 | Weblog
確率てふあやふやなもの朧月    戸恒東人

「雨の確率10%」といっても、もし雨が降れば、
10%の確率が見事に的中したということになるのだろうか?
確率100%以外はどれも当てになどならないと思っていただけに
共感を覚えてしまう。この日はきっと雨になる確率が高かったのだろう。
「春月」主宰。2012年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

著莪の花

2012-04-26 | Weblog
そこだけは昔のままに著莪咲けり   安食彰彦

家が建て替わり、住む人も変わったとしても、
昔から変わることのないもの・・・。
それは、幼い頃、見るとはなしに記憶していた花。
著莪の花は、そんな花だ。
2012年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

蝌蚪

2012-04-25 | Weblog
水面に蝌蚪ぶらさがり余震なほ   大木あまり

すぐに映像を結ぶことができたのは、「ぶらさがり」という、
具体的な言葉の斡旋によるものだろうか?大地の揺れに、
こんな反応をした小さな生き物がいたことが愛おしくも思えた。
2012年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

弥生尽

2012-04-24 | Weblog
感情が液状化する弥生尽    安西 篤

春から初夏への季節の変わり目、感情の液状化がはじまるという。
自然のエネルギーの横溢に、閉鎖的だった感情も、少しずつ開放的になる。
「海程」所属。2012年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

鶯餅

2012-04-23 | Weblog
へこませて鶯餅となりにけり    勝又民樹

鶯餅は桜餅と違って、その形は微妙。
楕円形に近いのだが、それだけでは鶯餅とは言えない。
へこませて、やっと鶯餅となるのだ。
「新樹」主宰。2012年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

朧夜

2012-04-22 | Weblog
朧夜や充電中の赤ランプ    成田清治

では最後に「遺伝子組み換え人間でない」のところの「はい」にチェックを  牛 隆佑
今朝のNHK短歌で3席に選ばれた一首だが、まさかそこまで?とは思えない未来。
さて、充電中なのは何なのか?
「朧夜」の季語の斡旋によって、近未来の危うさが感じられた。
「滝」4月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

連翹

2012-04-20 | Weblog
連翹やポストに溢れゐる手紙    加藤信子

連翹の咲く頃は、もう春本番というところ。
目に映るもの全てが、陽光に輝いて眩しいくらいだ。
さて、ポストにはたくさんの手紙が届いている。
作者も、これからが本格的な始動だ。
「滝」4月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

吹雪

2012-04-19 | Weblog
出郷や吹雪く底より津軽三味   相馬カツオ

やはり、大震災あるいは原発事故によって、
故郷を出ていかざる得なかった人たちを思う。
吹雪く底より聞こえてくる津軽三味が切ない。
「滝」4月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

2012-04-18 | Weblog
瓦礫よりかすかに雛の笛太鼓    遠藤玲子

3.11から一年が過ぎたが、瓦礫の処理はどれほど進んでいるのだろう?
瓦礫を受け入れる自治体も少ないと聞くが、傷跡を残したままでは、
いつまでも、心の傷も癒されはしないのではないだろうか。
さて、瓦礫の中からかすかに聞こえてきたという、雛の笛太鼓・・・。
きっと、大津波に流されて瓦礫となってしまった五人囃子なのだろう。
喪失感の中にも、どこか復興の兆しが感じられてよかった。
「滝」4月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

朧夜

2012-04-17 | Weblog
朧夜のくちびるを恋ふ瓶の口   石母田星人

飲料水が入ったガラス瓶が、一本あるというだけの朧の夜。
ただそれだけの景だが、「瓶の口」になって考えてみると、
こういうことになるのだろうか。瓶の口の、ペットボトルとも、
スチール缶とも違う質感が、作品のポイントだろう。
誰もが、唇に触れるあの感触が蘇るに違いない。
「滝」4月号〈渓流集〉より抄出。(Midori
)

立春

2012-04-16 | Weblog
音譜読む指さき春の立ちにけり 
ひとひらの言葉蔵せり薄氷
頬杖を解いて北窓ひらきけり
龍天に昇り水面の月痩せぬ     平川みどり


*「滝」4月号〈滝集〉に掲載されました