十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

四恩

2017-12-30 | Weblog
猪垣に脈打つ闇のありにけり
仮の世の手鏡とせむ今日の月
朝露に四恩のひかりありにけり
一村はひかりの坩堝稲熟るる


*「阿蘇」1月号、岩岡中正選

【選評】 俳句は「詩」であり、「詩」は実在の奥にあるものを詠むこと。つまり、「脈打つ闇」を詠むような行為である。そこにたしかに「脈打つ」実在がある。それが見えない分だけ、想像(詩)は生き生きとふくらむのである。(中正)

  わが町は、なだらかな山々に囲まれた小さな町。農作物を荒らす猪は勿論、猿も出没する。人家の灯りも途絶えて、生き物が息づく闇は、私の想像力を刺激するには充分!(Midori)

日記買ふ

2017-12-28 | Weblog
「日記買ふ」というと年末の季語だが、「日記」は古文書として歴史的にも貴重な資料となっているというから、それほど新しい習慣でもないようだ。しかし、「買ふ」となると、さていつ頃からだろうか?(Midori)

   一行で足りる日記を買うて来し

年の市

2017-12-26 | Weblog
店頭は、クリスマスツリーから門松へと正月バージョンへと様変わり。年用意も年々略してしまいがちだが、父母が大切にしてきたものをできるだけ引き継いでゆきたいもの。先人の暮しや智恵に触れる一時でもある。(Midori)

   神々の私語もまじれる年の市
  *平成28年作

浮寝鳥

2017-12-21 | Weblog
第4水曜日は、地元、南関句会。車で3分という近距離は大変有難い。いろんな理由で次第に会員が減ってゆく中、今回は一人の新会員を得た。さて、様子を見て早めに結社への加入を勧めてみようかと思うが、俳句を楽しむスタンスもそれぞれ違う句会なので、なかなか難しいところ・・・。(Midori)

    夢の世にとり残されし浮寝鳥

月下の橋

2017-12-19 | Weblog
月下の橋入口かしら出口かしら     長岡ゆう

口語のリフレインが、一句をリズミカルにしているが、一方で幻想的な風景が立ち上がってくるのは、「月下の橋」という具象によるものと思われる。「月下の橋」の向うには、どんな異界が広がっているのか?「入口かしら出口かしら」の軽妙な自問に、ふと不思議な世界に引き込まれそうになる。

躓きて花野の母に追ひつけず     〃

この句も、一見平明であるが、「躓きて」いる作者と、「花野」の母は、時空を異にしているのではないだろうか?どこまで行っても母との距離が縮まらない焦燥感が、「躓きて」に表出されているような気がしてならない。以上、「滝」12月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

2017-12-17 | Weblog
霧濃くて眠りの中にしのび込む    谷口加代

霧が、「眠りの中にしのび込む」には、作者が外気に触れているということだろうか。「霧」という具象が、「眠り」という生理的な概念の中に、「しのび込む」というアンニュイな感覚が非常に魅力的な一句。「滝」12月号〈渓流集〉より抄出。(Midori)

冬の宴

2017-12-15 | Weblog
濤の音をはるかに冬の宴あと     成田一子

引潮とともに波音が一気に遠ざかり、すでに波音を遥かにしているのだ。「冬の宴あと」とは、そんな引潮にも似た寂しさを覚えるものだろう。「冬の宴あと」という、一種独特な情感を、上五中七の情景とともに詠まれた一句に、華やぎのあとのしんとした余韻が感じられた。「滝」12月号〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)

義士会

2017-12-14 | Weblog
12月14日は、四十七士の討ち入りの日。赤穂浪士47人が本所の吉良邸に討ち入りし、主君の仇討ちを成し遂げた日である。本日の熊日新聞の『熊本藩と忠臣蔵』によると、事件後、3代細川藩主綱利は、大石内蔵助はじめ17人の浪士を預かったというからびっくり!山鹿市の日輪寺に赤穂浪士の遺髪塔があることにも、ようやく繋がった。(Midori)

   討入りの日や音もなく星の出て

大濠公園

2017-12-12 | Weblog
たまたま御縁を頂いた結社「阿蘇」は、伝統俳句。という訳で、師系は虚子へと繋がって行く。さて、このほど、九州ホトトギス大会が、福岡市天神で開催された。吟行地は、大濠公園、福岡城址。約30年ぶりの大濠公園は、ジョギングのコースができ、高校生の駅伝大会の開催中。湖には、たくさんの鴨や都鳥がいて、見るものを楽しませてくれる。前日句会のあとの親睦会、そして本大会と、楽しい2日間も俳句という縁のおかげ♪(Midori)

    冬ざれの湖面を辷る鳥の影    *稲畑汀子選



2017-12-08 | Weblog
弱者いたぶる奴等狼に喰わす    金子兜太
満月の首都ベルリンの愛の時間     〃


現代俳句協会が創立70周年を迎え、名誉会長の金子兜太氏が特別功労者として表彰されたという。また、主宰する俳誌、「海程」は来年9月で終刊すると公表しているとか。(12.8 熊日新聞)。 さて、当ブログより「金子兜太」を検索すると、掲句の2句がヒット。たったの2句?と正直思ったが、俳句総合誌を読まなくなって久しいので仕方がない。社会詠でありながら、やはり兜太流のロマンに出会って嬉しい。(Midori)

夜の長し

2017-12-06 | Weblog
看取りの灯しぼりし妻に夜の長し    山下接穂

「看取りの灯」は、それ程明るい灯りではないと思われるが、さらに「しぼりし」である。それはいつまでも消えることのない「看取りの灯」。妻へのいたわりと感謝の思いが、「妻に夜の長し」の「に」に込められた一句ではないだろうか?「阿蘇」12月号より抄出。(Midori)

滔天忌

2017-12-05 | Weblog
着ぶくれて滔天語る鉱山男     坂口三千代

12月4日に荒尾市で開催された、第53回滔天忌俳句大会応募句で天賞となった句。選者は現代俳句協会の野田遊三氏。宮崎滔天は、辛亥革命で孫文を助けた、荒尾市が誇る名士である。「鉱山男」は「やまおとこ」と読み、荒尾市がかつて炭鉱の町として栄えたことも物語る。当日は、熊本県内外から42名の参加があり、席題「大根」で一句投句。互選の上位10名には、賞状及び副賞としてご当地「ふもと窯」の小岱焼が贈られた。(Midori)

「阿蘇」探勝会

2017-12-03 | Weblog
久しぶりの熊本城は再建中ではあるが、観光客にもよくわかるように歩道帯もできて、再建方法まで掲示されている。二の丸では、音楽ライブなどもあり、たくさんの観光客で賑わっている。そんな中、城内の「監物台樹木園」は、静かなオアシス。散り敷く落葉は、赤と黄色が交じりあって、ゴッホの絵かと見まがうほどの美しさ!自然の造形美にしばし見とれていました。(Midori)

落葉踏む太陽の色月のいろ



2017-12-01 | Weblog
まみえざる縁もありぬ獺祭忌      井芹眞一郎

9月の本部例会では毎年「子規忌」を修して、会場には子規の遺影と秋の草花が供えられる。そのときの一句が掲句である。「まみえざる縁」という「縁」があることにまず驚かされたが、思えば俳人の端に加えて頂いているのも、子規という先人のお蔭。その日の主宰特選句として、深く感銘を覚えた一句であった。「阿蘇」12月号の巻頭である。(Midori)