十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

雪ばんば

2014-01-31 | Weblog
水買ふや風のいとまの雪ばんば     鈴木要一

それまで、いくらかの風が吹いていたのだろう。ふっと風が止んだ一時を、「風のいとま」と表現されて、詩情深い。雪ばんばの呼称も、昔話に出てきそうな親しみが感じられて、穏やかな日和を思わせる。さて、「水買ふ」という措辞に、少し遠出をしている作者が想像されるが、雪ばんばの棲む里に現代を持ち込んだような感覚を覚えてユニーク。「滝」1月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

2014-01-30 | Weblog
洋梨の断面ムンクよぎりけり      鈴木幸子

洋梨は、果物というより西洋の静物画を見るような歪な形が特徴的だ。そんな洋梨を切ったときにできる断面は、果たしてムンクの「叫び」・・・。「ムンクよぎりけり」と、想像豊かな作者だが、共感を覚えて楽しい。「滝」1月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

2014-01-29 | Weblog
ランボー忌ビニール傘の中の空      赤間 学

旅先での突然の雨に、とりあえず買う透明なビニール傘。視界を妨げない便利さが特徴だが、「ビニール傘の中の空」とは、意外な発見だ。それは自分だけの空であり、雨に滲んだ空は一つの小さな宇宙でもある。「ランボー忌」が配されて、都会的な雰囲気が感じられるが、どこか孤独感も漂う。「滝」1月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

毛糸

2014-01-28 | Weblog
新しき島の誕生毛糸編む      芳賀翅子

「新しき島の誕生」と、トップニュースの見出しのようなフレーズだが、「毛糸編む」が配されて、まるで赤ちゃんの誕生のような喜びが感じられる。誕生したばかりの島をふんわりと包みこむようなものを編んでいるような錯覚を覚えるのも、この作品の楽しさだろうか?「滝」1月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

凍星

2014-01-27 | Weblog
石臼を回し凍星ふやしけり      中井由美子

ごりごりという石臼を回す音が響いている静かな夜だろうか。しんしんと夜が更けゆくほどに、透明感を増して行く夜空には、凍てつく星が一つまた一つと増えてゆく。石臼を回すことと、凍星が増えることは、無関係でありながら、何かしら関連性を感じさせるロマン溢れる作品である。「滝」1月号〈瀑声集〉より抄出。(Midori)

星座

2014-01-26 | Weblog
紐引いて点す師走の星座かな     石母田星人

今ではスイッチをONにすれば点る灯りがほとんどだが、かつては紐引いて点すことが多かった。「紐引いて点す」にそんな郷愁の思いを抱いたが、紐引いて点したのは、灯りではなく、「師走の星座」だった。星座は、きっとやわらかな光を点したことだろう。期待を裏切らない作者らしい展開が魅力的な一句。「滝」1月号〈瀬音集〉より抄出。(Midori)

奇跡

2014-01-25 | Weblog
マンデラは南アの奇跡障子貼る     菅原鬨也

「南アの奇跡」とは、南アフリカ共和国がマンデラという一人の英雄を得たことだろうか。マンデラの功績は、多大な勇気と苦悩の結晶であり、彼は民族の偉大なる誇りとなった。障子は、日本の風土に適った日本固有の文化。「障子貼る」が配合されて、改めて風土へ思いが深まった気がした。偉大なる南アの英雄は、昨年12月、世界平和の星となった。「滝」1月号〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)

四温

2014-01-24 | Weblog
風神雷神四温に手持無沙汰かな     渡辺恭子

風神雷神と言えば、俵屋宗達の屛風画をすぐに思い出す。風神は風袋を両手に持ち、雷神は天鼓をめぐらし、ともに目を剥き何とも勇ましい姿だ。そんなイメージを覆して見せたのが掲句だろうか。四温に手持無沙汰な風神雷神の緩んだ顔や肢体が想像されて楽しい一句。2014年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

草の花

2014-01-13 | Weblog
残像に今も恋して草の花     磯 あけみ

初恋の人、あるいは、もう会うこともなくなった人だろうか。すでに実体もなく過去の残像となってしまった人に、「今も恋して」という作者。残像は、決して色褪せることなく、時とともに美しい記憶となって蘇るのだろう。案外、誰しも、心の隅っこの残像に今も変わらず恋をしているものかもしれない。「草の花」が配されて、詩情高い作品。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

水仙

2014-01-12 | Weblog
今日は、日本伝統俳句協会熊本県部会の「火の国探勝会」が、菊池市の菊池神社で行われました。近くの公園では冬桜が花を咲かせ、徳富蘆花文学碑、そして彼を支えた妻、愛子の髪塚もあり、歴史を偲ぶことができました。58名参加の5句出句。楽しい時間は瞬く間に過ぎましたが、よく見ることの難しさを改めて感じさせられた初句会でした。(Midori)

水仙の一輪ごとのしじまかな    みどり


*「阿蘇」主宰、岩岡中正選

メンバー

2014-01-11 | Weblog
プロジェクトメンバー四人秋高し     岡本 妙

「三人寄れば文殊の知恵」とは言うものの、プロジェクトメンバーとなると、3人はどこか心もとない。やはり4人がいい。4の階乗である24を「潔い数字だね」と言ったのは、小川洋子原作の『博士の愛した数式』の中で、博士を演じた寺尾聡の台詞だが、4はがっちりとスクラムが組めそうな数字だ。きっと素敵なプロジェクトが完成することだろう。「四人」と言い切って潔い作品。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

水音

2014-01-10 | Weblog
神域の水音ゆたかに赤のまま     市原初女

こんこんと湧く静かな水音。溢れんばかりの泉は、水底まで透きとおっている。青々と葉を茂らせた大樹は、水面に枝を差し伸べ、影を落していることだろう。そんな神域にあって、「赤のまま」は、まるで結界に咲く花のように神々しい。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

返り花

2014-01-09 | Weblog
墳の世を遊びて返り花に会ふ      山澄陽子

「肥後古代の森」での吟行句と思われるが、「墳の世を遊びて」の「を」が見事。まるで古代へタイムスリップしてそこに作者がいるような錯覚を覚える。そして返り花が、古代と現在をつなぐかのように咲いているのだ。古代と現在が錯綜して楽しい一句。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

茶の花

2014-01-08 | Weblog
茶の花の日和うれしきくまんばち    佐久間和子

「茶の花の日和」とは、どんな日和だろう。茶の花であれば、長閑な山里で冬菜畑も辺りに広がっていそうだ。くまんばちでなくても、嬉しくなるようなそんな日和だ。「くまんばち」という親近感のある呼び方も楽しく、いかにも嬉しそうに飛んでいる熊蜂が見えるようだ。「くまんばち」を見ている作者のやさしいまなざしが何よりいい。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

めく

2014-01-07 | Weblog
めくるめく高さ露けき都心の灯     介弘紀子

高層建造物はどこまでその高さに挑戦するのか?東京タワーに変わる電波塔、東京スカイツリーは日本一の高さを誇る日本のシンボルとなった。地震国日本の科学技術は、強度はもちろん、揺れにも強い柔軟な構造を造りだした。安全性は信頼できるとしても、やはり「めくるめく高さ」であることには変わりない。都心の灯・・・、日本の将来を明るく照らして欲しいもの。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)