亀鳴くや感染経路闇に消え
一幹をのぼる微熱や初桜
双蝶にひかりの天地ありにけり
おぼろ夜の扉はぎいと開かるる
*「阿蘇」7月号、岩岡中正選
【選評】 「感染経路」とは。今日私たちが直面している最大の関心事。つまりクラスター対策という社会的事象をとりあげて、「亀鳴くや」という俳句らしい遊びとユーモアに転化しつつ、それでもどうしても拭えない、「闇に消え」る不安を描いて見せた。(中正)
掲句を詠んだ3月上旬は、まさに新型コロナウイルス感染防止のため、不要不急の外出自粛は勿論、できる限りの手立てを講じていた頃。そして今7月1日。未だにマスクが外せない状況の中、新しいライフスタイルとは何か?以前の生活に戻る日は来るのか?と自問しながら、すでに今の生活に慣れてしまっている自分が居る。(Midori)