十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

薄暑

2019-05-30 | Weblog
今回のカルチャーの兼題は「薄暑」。具象がない季語は、どこからどう詠めばいいのか、見当もつかず、なかなか詠めずにいたが、意外にも何にでも取り合わせることが出来ることを発見!「薄暑」の持つ様々な属性は、平凡な十二音に小さな詩情を与えてくれる。「薄暑にはかすかなエロスの匂いがある」と仰ったことがまた発見だった。(Midori)

  鰡跳ねて天心濡らす薄暑かな
  巡礼のごとくに雲や旅薄暑
  人を待つ人の多さよ街薄暑
  うす紅をさして出てゆく夕薄暑

2019-05-28 | Weblog
車窓に広がる麦畑は、決して一色ではない。麦の生育の早さや麦の種類もあるのか、どの麦畑も同じ小麦色ではなかった。熊本県下のビール工場の麦芽の原料となる大麦も多く生産されていると聞くと、まさしく地産地消の国産ビールに乾杯したくなる。(Midori)

あかがねにこがねに麦の熟れてをり      *中正特選 in NHK

蛇のごと

2019-05-25 | Weblog
双頭の蛇のごとくに生きなやみ     野見山朱鳥

川端茅舎に傾倒し、茅舎と同じく「如く俳句」と呼ばれた朱鳥の句。頭で悩んでも、身体は一つ。「なやみ」ではなく、「生きなやみ」とは何とも深刻。下五の連用形の効果は言うまでもない。『野見山朱鳥 愁絶の火』より抄出。(Midori)

世界遺産☆三池港編

2019-05-22 | Weblog
研修会の吟行地のもう一つの目玉は、大牟田市三池港の閘門式水門。世界遺産となって以来、地元のボランティアの方から詳しい説明を受けたが、イギリスからの技術の導入のために投じた財力や年月に、当時の日本の発展の原動力を見た思いがした。(Midori)

  大海へひらく水門夏つばめ    *岩岡中正選

世界遺産 ☆炭坑編

2019-05-20 | Weblog

            三川鉱跡(建築から100年を超えていないため世界遺産からは除外)
日本伝統俳句協会九州支部研修大会が、土日2日間に渡って、大牟田市で開催。大牟田市は、世界文化遺産となった炭鉱跡や三池港があり、日頃の吟行地としては特異な場所であったと言える。しかし、歴史や文化など様々な角度から詠まれた多くの佳句に出会うことができ、有意義な研修会となった。(Midori)
【前日句】   *岩岡中正選より                       
鉄釘も世界遺産や月見草        まり子
万緑や眉張つて見る鉱山櫓       まよ子
夏草や鉱山にのこれる貨車の音    みどり   (鉱山=やま)
【当日句】
坑口は立入禁止蟻の列          紀子
麦秋や言葉重たき廃鉱史         光子   
百年の鉄路の錆やるりとかげ      伸子   

薔薇

2019-05-17 | Weblog


国指定の史跡、南関町御茶屋跡で毎年開催されている薔薇展。古代ローマより今に愛され、さらに美しさを追求された薔薇はどれも魅惑的でした。(Midori)

今生に血よりも赤き薔薇を買ふ     *土曜例会、中正特選

5月号ⅶ

2019-05-13 | Weblog
山を消し城を消したる冬の雨     増田いと子

「山を消し」、「城を消し」と、「消し」のリフレインが遠近法によって迫ってくる。「冬の雨」らしい迫力のある一句。平明に叙されて、臨場感のある句にとても惹かれた。「阿蘇」5月号より抄出。(Midori)

5月号ⅵ

2019-05-10 | Weblog
もう一羽来て春禽となりにけり     八木花栗

寒中の鳥が寒禽ならば、寒が明ければ春禽となるのは、暦の上でのこと。さて、掲句。「もう一羽来て」と、鳥のお相手でも来たのだろうか?「春禽となりにけり」の断定が、どこか楽しい。「阿蘇」5月号より抄出。(Midori)

5月号ⅴ

2019-05-06 | Weblog
万蕾の梅に日の差す忌日かな     上村孝

忌日の句は、その人となりを知らなければ、詠むのは難しいと言われているが、掲句は、梅の頃に亡くなった先師を偲んで詠まれた句。「梅に日の差す」だけでは、それほど大きな感動は得られないが、「万蕾の梅」である。先師への一篇の供華として、思いの深い一句である。「阿蘇」5月号より抄出。(Midori)

5月号ⅳ

2019-05-05 | Weblog
掃き寄せしわづかな塵や寒の入     宮中千秋

科学技術が進歩し、人の生活はますます便利になったとは言え、人間の出すゴミの量の多いこと!一方で、「掃き寄せしわづかな塵」には、無駄のない慎ましい生活が見えて来る。「寒の入」と置かれて、余韻ある一句と成った。「阿蘇」5月号より抄出。(Midori)

5月号ⅲ

2019-05-03 | Weblog
春立つや娘の黒髪にあるちから     高橋満子
をみな等の長き黒髪針供養        介弘紀子


「黒髪」は、身近にありながら、陳腐に陥りやすい素材。自分の事として詠むには、あまりにも気恥ずかしく、やはり「黒髪」は、古代より若く美しい女性のものであるに違いない。さて「黒髪」の一句目。「娘の黒髪」に、「ちから」を見た作者である。「春立つ」という季語に、微かな青春性も感じられる。二句目、「針供養」との取合せが絶妙である。「長き黒髪」に女性の伝統と誇りを感じさせる。共に魅力的な作品である。「阿蘇」5月号より抄出。(Midori)