十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

瓢の笛

2011-01-31 | Weblog
 夢を見ぬ人には鳴らぬ瓢の笛    宮崎 勧

「夢」とは、寝ている間に見る夢ばかりではなさそうだ。
「瓢の笛は、イスノキの葉にできる虫瘤だ」なんて考えているような、
リアリストには、瓢の笛は決して鳴らない。
Dream comes true・・・
しかし、勧さんには鳴ったのだ。
私にも瓢の笛は鳴ってくれるだろうか?
「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

毛糸編む

2011-01-30 | Weblog
毛糸編む愛が殺意に変はるとき
千鳥来よひかりの翼ひるがへし
神木に触るる小春の生命線
わだつみに祈りの如く鯨の尾    平川みどり


*「阿蘇」2月号、岩岡中正選「雑詠」二席に掲載されました

行年

2011-01-29 | Weblog
  音立ててゐるゆく水も行年も    岩岡中正

「ゆく水」というと、どこか儚いものの喩えのように思えるが、
「音たててゐる」となるとどうだろうか・・・
「ゆく水」の内包するエネルギーが、聞こえてくるようではないか。
行年もまた、足音立てて確かな足跡を残してゆくのだろうか・・・
「阿蘇」主宰。「阿蘇」2月号より抄出。(Midori)

干布団

2011-01-28 | Weblog
  干布団叩く韻きの空ら元気   平井さちこ

布団を干せば、まるで決まり事であるかのように布団を叩く。
布団を叩く音は、カラカラに乾いた空にひびき渡る。
別に元気、という訳でもないのに、力いっぱい叩く。
から元気も、元気がないよりマシかもしれない。
「おほとり」所属。「俳句」2月号「作品8句」より抄出。(Midori)

2011-01-27 | Weblog
鯨の死地球は取れかけのボタン   宮崎斗士

命あるものは、必ずいつか死を迎える。
それは鯨とて同じだ。しかし地球はそうは行かない。
たとえ、地球が病んでいるとしても、
「取れかけのボタン」だとしたら悲しい。
地球はボタンのように扁平でもないのだから・・・
「俳句」2月号「作品10句」より抄出。(Midori)

冬日

2011-01-26 | Weblog
極上の冬日のわたる湖国かな   大石悦子

湖国の風光をこよなく愛した芭蕉、
芭蕉が愛した近江を、私たちもまた愛する。
「極上の冬日」がわたる湖国を訪ねてみたくなった。
「俳句」2月号「特別作品21句」より抄出。(Midori)

落葉

2011-01-25 | Weblog
落葉日々細かくなりぬ粉となる   加藤かな文

冬晴れの日がつづくと、落葉は乾燥し、踏まれるたびに、
細かくなってゆく。次第に「落葉」はその姿をとどめなくなって、
やがては、粉々になってしまう。その「落葉」の変容を、
「細かくなりぬ粉となる」と、淡々と叙されて面白い。
「平成秀句選集」より抄出。(Midori)

雪女

2011-01-24 | Weblog
   逢へぬ身は日々透きゆくと雪女    眞鍋呉夫

実態のない雪女ではあるが、眞鍋氏にとって雪女は特別な「存在」であるようだ。
ここに語られているものは、まるで作者と雪女との相聞歌のように切ない。
逢えない日々がつづくと、やがてその身は透きとおって消えてしまうという雪女・・
そして、逢えば「光の蜜」となって溶けてしまうのだろうか?
雪女溶けて光の蜜となり   眞鍋呉夫
2010年版「俳句年鑑」「平成秀句選集」より抄出。(Midori)

侘助

2011-01-23 | Weblog
 侘助や障子の内の話し声   高浜虚子

赤い一重の侘助は、閑寂な日本庭園によく似合う。
懐手に、庭を散歩している虚子先生。
障子の内では賑やかな話し声がしている。
虚子とて、時には孤独を感じることもあったかもしれない。
鍵和田秞子監修「花の歳時記」より抄出。(Midori) 

枯野

2011-01-22 | Weblog
よく眠る夢の枯野が青むまで    金子兜太

最近、兜太先生は、「尿瓶」の句を好んで詠んでいらっしゃるようだが、
尿瓶と一緒に、冬眠中という訳ではないだろう。
そろそろ、「夢の枯野」も青みはじめた頃だろうか?
「平成秀句選集」より抄出。(Midori)

風花

2011-01-21 | Weblog
風花となり朝空の剥がれ来ぬ    中田 剛

真っ青に晴れ渡った空から舞い降りてくる風花は、
とても不思議な現象だ。まさに、空が剥がれ落ちて来たかのようだ。
それは、きらきらと輝く宇宙の塵のように・・・
2010年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

冬景色

2011-01-20 | Weblog
  ひと列車やり過ごしたる冬景色    山口みちこ

この列車に乗ってしまえば、この冬景色ともお別れ。
ホームに入ってきた列車に隠れて、見えなくなってしまった冬景色が、
再び、目の前に現れたとき、とり残された「私」に去来するものは何だったのだろう・・・
作者にとって、生涯忘れることのない冬景色となるのだろうか。
2011年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)

2011-01-19 | Weblog
あたらしき雪の足跡だけ信じ    谷口摩耶

たくさんの足跡に、自分の進むべき道を見失う。
それは、まるで人生にも似ている。
先人の歩いてきた道に、あれこれと迷っていたら、
いつまでも先に進めない。
あたらしい雪の足跡だけを信じて、歩くしかないのだ。
「鴻」編集長。「平成秀句選集」より抄出。(Midori)

女正月

2011-01-18 | Weblog
 女正月をんなも酔へば世話やける    池原倫子

白状すると、飲み会に出かけて行って気がついたら朝になっていた、
という恐ろしい経験がある。ひどい頭痛を抱えながら、何か迷惑を
かけたのではないかと心配になり、友人に電話をした。もちろん、
記憶が欠落している「私」を知りたいためだ。真偽はわからないが、
「私」は少なくとも大きな迷惑はかけてはいなかったようだ。
でもきっと世話を焼かせたに違いない(深謝)
2008年山田弘子編「彩sai」より抄出。(Midori)

福袋

2011-01-17 | Weblog
    選択の自由なき福福袋    吉年虹二

たとえ「選択の自由」があったとして、そう簡単に決められるものでもない。
選択の余地のない方が、よっぽど気楽というものだ。
時には、自分の好みとはまるで違ったものに挑戦してみるのも、
また楽しいかもしれない。もしかしたら、大きな「福」が待っているかも~?
2011年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)