十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

「阿蘇」8月号

2019-07-31 | Weblog
今生に血よりも赤き薔薇を買ふ
夏草や鉱山にのこれる貨車の音
あかがねにこがねに麦の熟れてをり
二の腕にもどる弾力夏来る

「阿蘇」8月号、岩岡中正選

NHKの朝ドラ『なつぞら』は、昭和30年代のアニメーションを企画する若いアニメーターたちの物語。新しい構想に行き詰る中、「私は私を超えたいと思います。皆さんも皆さんを超えてください」という若い演出家の必死の台詞があった。俳句も同じ。自分を超えて行かなければ、いつまでも新しい詩の世界を構築することはできない。(Midori)

山陽の旅Ⅲ

2019-07-27 | Weblog


山陽新幹線姫路駅下車、大手門通りを徒歩15分ほどで、世界文化遺産、姫路城に到着。城内から見上げる姫路城は、白鷺城と言うより白い豪華客船のようにも見えた。意を決して大天守の最上階まで昇り始めたが、狭くて急な階段はいつ果てることもなく続く。汗びっしょりになり辿りついた最上階は、窓から涼風が吹き抜けふっと息づく。刑部神社に手を合わせ、下城。(Midori)

   戦国の城にこの世の汗拭ふ

山陽の旅Ⅱ

2019-07-26 | Weblog


JR倉敷駅より倉敷美観地区へと徒歩15分。かつては天領の町として栄えたところ。その中にあるのが大原美術館。本館、東洋館、工芸館とその展示の多さに驚いたが、何と言っても圧巻だったのは、「日本にあるのが奇跡」と言われる、エル・グレコの『受胎告知』。大原孫三郎氏により、世界の巨匠たちの作品をたくさん目にすることができた。(Midori)

   薔薇の香やまなざし深き聖母像

山陽の旅Ⅰ

2019-07-25 | Weblog




日本の三名園の一つ、後楽園へと旅一日目、山陽新幹線岡山駅よりバスで10分、後楽園前で下車。青々と広がる芝生と、豊かな水が印象的。中央の築山、「唯心山」が庭園らしい趣を添えています。宇喜多秀家による名城、岡山城は、旭川を周囲に巡らせ、今も変わらない威容を誇り、名園と対照的な美しさでした。園内には、涼風が吹き抜け、もう法師蟬が鳴いていました。(Midori)

   梅雨明や旅の途中の天守閣

7月号Ⅳ

2019-07-15 | Weblog
存在のその他大勢てふ朧     八木花栗

「存在」について詠まれた一句。「存在」とは社会における自己の立ち位置であり、その価値観にも通じるが、「その他大勢」とは、何とも愉快!「その他大勢」と言う一つの枠組みで括られたものは、「朧」。哲学のようだが、「その他大勢」という自嘲が共感を呼ぶ。「阿蘇」7月号より抄出。(Midori)

7月号Ⅲ

2019-07-12 | Weblog
作中のをとこに惚れて桜の夜      真弓ぼたん

作中の主人公は、とにかく魅力的。役者の演技であると分かっていても、「作中のをとこ」に惚れてしまうのだ。「をとこ」の平仮名表記は、光源氏や在原業平のようなどこか頼りない美男子を想像させる。「桜の夜」に、幻想的な物語の余韻が感じられた。「阿蘇」7月号より抄出。(Midori)

7月号Ⅱ

2019-07-08 | Weblog
霞より微醺の旅人現るる     介弘紀子

微醺の旅人が霞の中から現れた、とそのまま読めるのだが、「霞」が非現実的な空間だと考えると、「微醺の旅人」が、唐の詩人、李白にも思えてくる。あるいは、山頭火や放哉かもしれないが・・・。「阿蘇」7月号より抄出。(Midori)

7月号Ⅰ

2019-07-06 | Weblog
緑蔭にまなざし深き人となる     岩岡中正

今月号の主宰による俳句管見の中で、「写生を通じて人間や社会も含む自然と一つになって詠む花鳥諷詠こそ、(中略) 実は最も新しく現代的な文学であることを私たちは内外に明らかにせねばならない。」また、昨今の大震災や環境汚染などへの危惧を重ね合わせ、「伝統俳句こそ、最も文明の危機に立ち向かう可能性をもつ現代の俳句だと思っている。」と、伝統俳句への期待と決意、そして存在理由を明らかにしている。さて、掲句。まさしく主宰の深い思いと重なってくる一句ではないだろうか。「まなざし深き」の伝統俳句の未来を見つめる確かな眼差しは、伝統俳句の末端に居る幸せを感じたことだった。「阿蘇」7月号より抄出。(Midori)

「阿蘇」7月号

2019-07-03 | Weblog
行間に眠り落ちたる春灯
雲はまたかたちを変へて蝶の昼
しろがねの日矢に匂へる梨の花
からし菜のぴりりと父の恋しき日

「阿蘇」7月号、岩岡中正選

最も遅い梅雨入りとなり、やれやれと思うのもつかの間、大きな被害をもたらすかもしれない豪雨。さまざまな地球環境の変化がもたらす気象現象に、身の危険を感じる昨今。早めの避難しか身を守る方法ははなさそう。(Midori)