十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

晩秋

2023-10-29 | Weblog
文学の入口はここ道をしへ
残暑なほ埴輪のやうに口開けて
かなかなや水色の空暮れのこる
眠りたし月下美人の香の中に

※「阿蘇」11月号、岩岡中正選

【選評】常日頃から「文学とは何か」、「文学としての俳句とは何か」と自問自答している作者。文学を追求すること自体が、ひとつの文学上の思索であって、大変貴重である。その入口を「ここ」と教えてくれる「道をしへ」に会えたらなあという、楽しく真剣な訴えである。(中正)

🍁長い残暑もようやく終わり、秋本番。「読書の秋」は、「灯下親しむ」という秋の季語からきているのだとか。俳句の吟行にも最も良い季節とも言えそうだ。(みどり)

賀正

2023-01-09 | Weblog
「阿蘇」の初句会、火の国探勝会が、1月8日に開催。吟行地は熊本市内の神社となっていましたので、前日に藤崎八幡宮、当日、手取天満宮に参拝しました。
 コロナ感染拡大が続いている中ではありますが、主宰はじめ皆さまのお元気な句に出会い、心新たにした一日でした。(Midori)

🎍竜の玉翳せば瑠璃色の天地
🎍日溜まりにひらく御みくじ春隣     ※岩岡中正選

枝豆

2022-12-08 | Weblog
枝豆の青きひかりの茹であがる
木漏れ日を蹴つて螇蚸の飛びにけり
銀河よりコントラバスの調べかな
眉のごと浮世の月や西鶴忌

※「阿蘇」12月号、岩岡中正選

「枝豆」は、9月の句会の兼題であった。あの青々とした枝豆の色を失わずに茹でるのは大変難しいが、塩味の効いた茹であがりの色艶は、何よりのご馳走である。そのイメージをそのまま一句にしてみた。(Midori)

翡翠

2022-10-12 | Weblog
かはせみの水面を昏めゆく高さ
暮れ際の水の匂ひや合歓の花
稜線の消えたる夜のほととぎす
空の端につづく水脈芭蕉林

※「阿蘇」10月号、山下しげ人選

【選評】水中にダイブして餌を捉えた後の翡翠の動きを詠んだ一句なのでしょうか。水を離れて行く翡翠を目で追って行くとその爽やかさ故に水面は単なる背景となって行くのです。飛んで行く高さに翡翠の爽やかさは増し、その爽やかさは川面の昏さにより一双引き立てられてゆきます。(しげ人)

🍊 何となく俳句を詠むことに行き詰まりを感じるこの頃。自分の好きな詩の世界だけでは、当然限界があるのはわかりきったことだが、なかなかここから抜け出せないでいる。やはりあるがままの自然に向き合うことが一番だか、自然を詠むのは難しい。まさしく修行。(Midori)

水母

2022-10-05 | Weblog
月の夜の水母は死して水となる  
書を閉ぢてよりの孤独や梅雨夕焼
古地図にはハーンの故郷きらら虫
くちなはの創世の闇脱いでをり

※「阿蘇」10月号、岩岡中正選

🍏 有明海の浜辺に打ち上げられた水母の死骸を見たことがあります。海中を漂う美しい水母と違って、それは無残で、私はしばし言葉をなくしてしまいました。その時の記憶をどうしても詠みたく一句にしたものなので、決して俳句と言えるものでなく、私の中のイメージを句にしたものです。しかし、思いがけず主宰に採って頂き、私の大切な一句となりました。(Midori)

朝焼

2022-09-12 | Weblog
戦場のやうな朝焼ビルの街
樹間より殺気ふはりと黒揚羽
水底のやうな一間や額の花
むらさきの系譜ありけり花菖蒲

※「阿蘇」9月号、岩岡中正選

一句目、熊本市街の公園から見た景色である。立派な高層ビル街もこうして距離を置いて眺めていると何とも心許ない思いがしたのは何故だろうか。(Midori)

巣立ち

2022-07-29 | Weblog
巣立ちたるあとの山々うすみどり
草木の眠れる真夜のほととぎす
母許の山はむらさき花樗
絹糸のやうな雨降る蓮浮葉

※「阿蘇」8月号、岩岡中正選

【選評】古代神話の天地創造の大らかさと美しさをたたえた幻想の一句。「巣立ち」に万物のいのちのはじまりが見える。(個性燦燦)

今年も数羽の燕が庭先に来た。巣を掛けるのに適当な場所を探しているようだ。一度は玄関のスリットをココと定めて作り始めたが、鴉が電線で見張っていたのか、やはり巣作りを断念した様子。燕にとって一番安全な場所とならなかったのは残念だが、いつか燕の巣立ちを見てみたいもの。(Midori)

花の昼

2022-07-14 | Weblog
河馬の背のうつすら乾く花の昼
一村の水の香うごく初蛙
疫病禍のまつ只中を入学す
髪切つてより花冷の耳朶二つ

※「阿蘇」6月号、岩岡中正選

「丁寧に生き己に言って聞かせるように小声で四季の感動を詠み記す」とは、今月号の主宰による俳句管見の中の一文である。俳壇について言及しながら、内省の言葉とも受け取れる。自然の営みはとても密やかで、うっかり見過ごしてしまいがちである。自然の小さな声にも耳を傾け、一人でも共感して頂ける句を詠みたいもの。(Midori)

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畑を打つ

2022-05-31 | Weblog
戦場へつづく青空畑を打つ
初雛ぽちと紅さし在します
沈黙の視線恐ろし夜の雛
薄氷の融けてかがよふ鯉の水脈

※「阿蘇」6月号、岩岡中正選

一坪ほどの菜園ではあるが、私の小さな楽しみの場所でもある。簡単なようで耕すのはなかなか手強く、骨の折れる作業だ。春の晴天が続くそんな中、海の向こうでは一つの国の平和が奪われつつある。一日も早く平和が戻ってくることを祈るだけである。(Midori)

バレンタインデー❣️

2022-05-13 | Weblog
草木も靡くよバレンタインの日
バレンタインデー小箱に愛の封をして
丹田に力をためて鬼は外
未来図の余白に植うる木の実かな

※「阿蘇」5月号、岩岡中正選

💝最近ではほとんど縁がなくなってきたバレンタインデーだが、スーパーの片隅を賑わせている存在として、ちょっと気にかかる。兼題として出題された「バレンタインデー」だが、なかなか楽しい時間だった。(Midori)

マスク😷

2022-04-08 | Weblog
金泥の虎の咆哮今朝の春
はればれとマスク外して一家族
青白き月に髪解く雪女
雪女血よりも薄き紅をひき

※「阿蘇」4月号、岩岡中正選

寅年の父が生きていたら95歳。亡くなってはや7年が過ぎたが、まさか外出にマスクが外せない時代が来るとは思ってもいなかっただろう。しかし、今年のお正月は、コロナも収束したかに見え、久しぶりに家族揃って楽しい時間を過ごすことができたのは、有難かった。「雪女」の句は、兼題。(Midori)

湯豆腐

2022-03-02 | Weblog
湯豆腐の角のぐらりと反抗期
界隈に古書店ひとつ漱石忌
しろがねの水の匂ひの冬銀河
ゆつくりと鴨が水脈ひく沼あかり

※「阿蘇」3月号、岩岡中正選

【選評】「ぐらり」までは写生。そこから一気に「反抗期」と飛躍したところが、作者の個性。ここは好みだが、読む者はどこか思い当たるふしがあって共感をよぶ。

✨「湯豆腐」の句は、実は兼題句。本格的な湯豆腐は、昨年津和野で頂いた湯豆腐が忘れられないが、我が家では、もっぱら一品足りないときのスピードメニューだ。反抗期はまだまだ続きます。笑。(Midori)

種採

2022-01-31 | Weblog
種を採る小さきときめきありにけり
合はす手の長き祈りや初しぐれ
騎馬像の甲冑濡らす初しぐれ
父母に祈れば小春めく心

※「阿蘇」2月号、岩岡中正選

「種採」「初時雨」それぞれの兼題で、出来た句。朝顔や向日葵の種はお馴染みだが、野菜の種になると本当に本当に小さい。こんな芥子粒ほどに小さな種の神秘を思って出来た一句である。(みどり)

待春

2022-01-23 | Weblog
今年初めてのレクリエーションダンスの日。南関町の公民館講座として開設されて早いものでもう3年目。3月で終了となる。ダンスと言っても簡単なステップと振付ではあるが、なかなか難しいもの。そこが又楽しい所でもある。俳句とは違う町内の方々との何気ない会話も又、小さな情報交換の場となっている。(みどり)

💝靴紐をキュッと結んで春を待つ

※P.Cを止めたので、スマホからの投稿です。日日の記録を綴って行きたいものです。

「阿蘇」1月号

2021-12-29 | Weblog
明月や森より出づる獣たち
神々のそぞろ歩きや野の錦
髪きゆつと束ねて仰ぐ十三夜
瑠璃色の太初の空や鵙の贄

*「阿蘇」1月号、岩岡中正選

【選評】 なかなか楽しい幻想的童話的な物語の一句。これもまた、「名月」の季語が十分に利いている句であって、その季語世界をさらに拡大した一句。どこかになつかしさも漂う。

これらの句はどれも小さなわが村の景色を詠んだもの。人の数より猪の数の方が多い、など笑えない話も聞かれます。小高い山を登り切れば、頂上には、小さな神社があって,じゃらんじゃらんと鈴を鳴らしては、祈る言葉はいつも同じです。(Midori)