十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

馬柵

2017-05-31 | Weblog
風光る一蝶馬柵を越ゆるとき
初蝶来天の洩れ日のやはらかし
たんぽぽの咲ける印象派の水辺
つちふるや曼陀羅に坐す仏たち


*「阿蘇」6月号、岩岡中正選

阿蘇では、山頂へと伸びる道路の両側に、柵が設けられています。これを「馬柵(ませ)」と教えられたのは、もう随分前のことです。道路と放牧地との境界を示す「馬柵」は、阿蘇の景観の一つだと思っています。(Midori
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花菖蒲

2017-05-29 | Weblog
熊本県北の玉名市の花しょうぶ祭に吟行に行ってきました。「開花状況 ちらほら」と書かれた黒板のとおり、花菖蒲は、一分咲きにも満たないほどでした。さて、「ちらほら」というオノマトペを詠み込んで一句です。(Midori)

    ちらほらと紫ちらと白菖蒲

2017-05-27 | Weblog
「蛇」というと、「見るのも詠むのも嫌!」という句友がいます。余程、蛇が嫌いなのでしょう。私はというと、見るだけなら、どうってこともないし、詠むのは好きな方です。「蛇の衣」「蛇皮を脱ぐ」など、私には何かしら艶めくものとして映るからです。この夏、物語性のある蛇の句をたくさん詠みたいものです。(Midori)

   六道の辻に脱ぎたる蛇の衣

竹落葉

2017-05-24 | Weblog
第4週水曜日は、わが町、南関町での句会です。会員11名のうち、町内在住は5名。俳誌「阿蘇」会員は、6名。毎月、指導者より兼題が出されますが、今回は、「竹落葉」でした。「竹落葉」というと、この春訪れた玉名市山田の建長の塔や、直方市の朱鳥の句碑を思い出しました。しかし、句にはできず、結局、八代市の五家荘の落人村を題材に詠みました。(Midori)

    落人のように踏みゆく竹落葉

睦五郎

2017-05-22 | Weblog
 
2017.5.22熊日新聞公式サイトより

今年も有明海の干潟に生息するムツゴロウの写真が紙面のトップを飾りました。今年の見出しは、「ムツゴロウも恋ダンス」です。昨年は、「恋のジャンプ」だったような・・・?東北の結社「滝」に入会して半年も経たない頃、同じようにムツゴロウの写真が掲載されていました。その時の見出しは、忘れもしません、「恋の空中戦」でした。ここで白状すれば、この時の見出しをそのまま一句にした句が、下の句です。決して褒められた句ではなかったと思うのですが、主宰の励ましだったのでしょう、佳作抄の末端に加えて頂いたのでした。正直、当時の私の美意識からして特に好きな句でもありませんでしたが、今では懐かしい記念の一句となりました。(Midori)

   むつごらう恋の決め手は空中戦
    *2006年「滝」7月号掲載

ブランコ

2017-05-21 | Weblog
夜のブランコ帰りたくない足が垂れ    長岡ゆう

「夜のブランコ」という映像から始まって、「足が垂れ」という映像に焦点が絞られた作品。「帰りたくない」のは作者自身でありながら、あたかも「足」が帰りたくないかの如く、心はブランコのように揺れ迷っているようだ。「垂れ」の2音の映像がいつまでも心に残る余韻のある一句である。同時発表句に、「啓蟄の土に逆立ちしてゐたり」など、いつも個性が光る作者である。「滝」5月号〈滝集〉より抄出。(Midori)

春炬燵

2017-05-19 | Weblog
夢なくし夢を見てゐる春炬燵     赤間 学

一句の中に、二つの「夢」があるが、同じではない。前者は、思い描いている将来への希望や願いであり、後者は、睡眠中に見る映像である。「夢なくし」という喪失感とは対照的に、見ている「夢」はきっと楽しいものであるに違いない。「春炬燵」の季語がそう思わせるのである。「夢」のリフレインがユニークな作品。「滝」5月号〈渓流集〉より抄出。(Midori)

霧島Ⅲ

2017-05-17 | Weblog

えびの高原では、「鹿に餌をやらないで下さい」との立札があるように、馴らされた観光用の鹿でなく、野生の鹿でした。あまり近寄れないので、遠くからではありますが、暗い映像でも白いハート形のお尻がはっきり見えます。鹿の尻が白いのは、敵から集団で逃げるのに、先頭がよく分かるように、白いのだそうです。(Midori)

   子鹿跳ね天降るひかり散らしをり

霧島Ⅱ

2017-05-16 | Weblog

大会2日目、霧島国際ホテルを出発し、高千穂河原から霧島神社へ。
広い石段を登りきると、朱の神殿が荘厳な佇まいを見せていました。
天照大神の孫、瓊瓊杵尊(ニニギノミコト)が祀られています。(Midori)

    松蟬か瓊瓊杵尊呼ぶこゑか

霧島

2017-05-15 | Weblog
日本伝統俳句協会九州支部の研修会が、神話の里、霧島市で行われました。熊本市民会館前を出発した大型バス一行は、宮崎県のえびの高原に到着。はじめて郭公を聞き大感激!晴れ間が出たかと思うと、松蝉も鳴きだしました。赤松の林では鹿が3頭。その美しい立ち姿がとても印象的でした。(Midori)

    子鹿佇つ天孫降臨の樹間

朝寝

2017-05-12 | Weblog
風のこゑ樹のこゑ空のこゑ朝寝     石母田星人

「こゑ」が畳みかけるように連なり、「朝寝」の着地がユニークな作品である。たぶん「空のこゑ」の後にも自然界のさまざまな「こゑ」が続くのだろう。人間社会の雑事に追われることのない朝の目覚めとは、きっとこのように、自然のこゑが溢れているのかもしれない。「朝寝」の句として、発想の独自性にも、心惹かれる一句である。「滝」5月号〈瀬音集〉より抄出。(Midori)

牧開

2017-05-11 | Weblog
空にまだ雨の匂ひや牧開     成田一子

「空にまだ雨の匂ひ」という、一見何でもない措辞だが、下五に「牧開」と置かれたことで、一句が生き生きと立ち上がってくる。「雨の匂ひ」という空気感は、やわらかな牧草を想像させ、早春のアンニュイな感覚にもリンクする。「牧開」の喜びとかすかな不安が交叉する作品ではないだろうか。「滝」5月号〈飛沫抄〉より抄出。(Midori)

質♡量

2017-05-09 | Weblog
しあはせの質量春の雪降れり
天平の日の斑遊べる雛の間
耳朶に風の甘噛み辛夷咲く
つなぐ手にいよよ華やぐ花衣


*「滝」5月号〈滝集〉成田一子選

幸せに質量などある訳はないのですが、あるとしたら、一体どのくらいでしょう?
幸せの形もまちまちですから、大きさも質量もちがってよいのでしょう。(Midori)

ガーベラ

2017-05-08 | Weblog

一株のガーベラが、少しずつ増えて、この夏も花を咲かせました。
真夏は休みますが、秋になると再び花を付けます。
はじめて、ガーベラで一句詠みました。(Midori)

    ガーベラの情熱の赤炸裂す

蛇穴を出づ

2017-05-06 | Weblog
蛇穴を出づれば更地ばかりなり     土屋芳己

虚子は、「蛇穴を出て見れば周の天下なり」と時空を超えた壮大なスケールで詠んだが、掲句は、「更地ばかりなり」である。虚子の句を踏まえながらも、こちらは目の前の景である。熊本地震から一年。崩壊した家屋は、次第に撤去され、ふと気づけば更地と化している。「蛇穴を出づれば」という俳諧の中には、言葉にできない思いと現実がある。「阿蘇」5月号より抄出。(Midori)