十七音のアンソロジー★。・.:・゜'☆,。.:・゜'★

虚と実のあはひに遊ぶ  Since 2008 by Midori♡ H

去年今年

2010-12-31 | Weblog
  会ひたしと思ふ人あり去年今年   高浜年尾

会いたいと思っている人と、きっと今年も会えなかったのだろう。
たとえ、新しい年に変ろうとも、「会ひたし」という思いは少しも変わらない。
去年今年の流れの中で、年尾の切ない思いが伝わってくる。
稲畑汀子編「ホトトギス新歳時記」より抄出。


 皆さま、よい年をお迎えくださいませ。 みどり  

返り花

2010-12-30 | Weblog
煌めきは風の存問返り花    大川内みのる

まるで、風と作者の相聞歌のようだ。
一瞬の風の煌めきを「風の存問」と感じた作者だ。
一筋の風が煌めいて、一つの返り花と化す・・・
透きとおるような空気の中に、淡く光る返り花が眩しい。
「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)


 

2010-12-29 | Weblog
   松林よりちらと湖ちらと冬    岩岡中正

「十月二十九日~三十一日、湖北の旅補遺」の前書のある四句の中の一句。
「ちらと」のリフレインに、どこか愉しげな臨場感を覚えるが、
松林の間から覗く湖は、すでにひっそりとした冬の佇まいを見せていたようだ。
幽玄の世界を覗くような、蠱惑的な一句に心惹かれた。
もうすぐ、新しい年が覗けそうだ。
「阿蘇」主宰。「阿蘇」1月号より抄出。(Midori)

2010-12-28 | Weblog
  傘をはばたかせて傘の雪払ふ  遠藤若狭男

雨だと、傘を閉じればすぐに雨は雫となって落ちてしまうが、
雪の場合はそうはゆかない。何度か傘をバタバタと、
「はばたかせて」雪を払い落さなければならない。
生活の中で得られた一句に、深い共感を覚えた。先日の、
BS俳句王国に出演された時の若狭男さんの笑顔が印象的だった。
角川学芸出版、平成21年版「俳句手帖」より抄出。(Midori)

マフラー

2010-12-27 | Weblog
利かぬ気の目がマフラーの上にあり  小島ぱおら

たっぷりの毛糸のマフラーを顎まで巻いて、
幼子の目は何を主張しようとしているのだろうか?
「利かぬ気の目」は、自我の目覚め・・・。
それでも言いたいことをじっと堪えているのだろう。
マフラーの上のあどけない顔と真剣な目が印象的な作品。
日本俳句伝統協会カレンダー2010年より抄出。(Midori)

年用意

2010-12-26 | Weblog
  婿殿に辛口の酒年用意    田中晃真

日本酒には、甘口、やや甘口、やや辛口、辛口の4段階の甘辛度がある。
婿殿に対する評価、という訳ではないと思うが、なかなか辛口の一句だ。
舅殿の密かな企みと、俳味が楽しい。
日本伝統俳句協会2010年カレンダーより抄出。(Midori)

短日

2010-12-25 | Weblog
  短日の三時四時五時六時かな    杉田菜穂

ただ一時間ごとの時間の経過を記しただけの作品だが、
一時間ごとに感じる短日の緊張感は、まるで違っている。
若々しいスピード感が、とても好きだった。
句集「夏帽子」に所収。2011年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)
 

クリスマス

2010-12-24 | Weblog
本売りて本を買い来しクリスマス   荒井千佐代

日常と少しも変わることのない暮らしの中の「クリスマス」
それでも、クリスマスであることの不思議。
古書店で手にした本は、果たしてどんな本だったのだろうか?
ひとつの物語が、クリスマスの夜にはじまるのも楽しい。
2010年「俳句年鑑」より抄出。(
Midori)

雪催

2010-12-23 | Weblog
  ばーちゃるな恋こそ恋ぞ雪催   山崎十生

バーチャル・リアリティは、「仮想現実」のことだ。
現実の恋より、バーチャルな恋を推奨している作者。
恋はもともと大いなる錯覚からはじまるものだ。
「紫」主宰。2011年版「俳句年鑑」とり抄出。
(Midori)

枯葉

2010-12-22 | Weblog
  フランスの国のかたちの枯葉かな    武藤紀子

手のひらサイズで、一箇所虫が食っていたりしている枯葉は、
確かに、フランスの国のかたちに似ている。
虫が食ったところは、ちょうど地中海あたりだ。
そう言えば、「枯葉」というシャンソンもあったはず。
フランス語に時折混じる、「枯葉よぉ~♪」が印象的な歌だった。
2011年版「俳句年鑑」より抄出。(midori)

2010-12-21 | Weblog
 冬と云ふ口笛を吹くやうにフユ   川崎展宏

「冬」は、ひゆ(冷)の意からきているらしいが、
一説には、寒さが威力をふるう(振)の意もあるようだ。
口笛を吹くように、フ~、ユ~、
何とも心もとない「フユ」になってしまった。
句集「秋」に所収。(Midori)

底冷

2010-12-20 | Weblog
底冷えを積んで立体駐車場    佐藤郁良

「底冷え」を積み重ねたような立体駐車場は、
いつも、鉄とコンクリートの匂いがする。
それもそのはず、鉄骨とコンクリートでできているのだから・・・
「銀化」同人。句集「海図」に所収。(Midori)

障子

2010-12-19 | Weblog
  がたつける障子がたつけて外す    山田六甲

もともとは、「がたがた」という擬音から来た言葉だと思うが、
広辞苑にもちゃんと「がたつく」という動詞として載っている。
がたつく障子の外し方としては上手い方法だが、
どこか、人間にも当てはまるようで可笑しみと哀感を覚えた。
「六花」主宰。2011年版「俳句年鑑」より抄出。(Midori)


「はいく待夢ー☆」  一度覗いてくださいね!by Midori(樹里)  

冬銀河

2010-12-18 | Weblog
自宅から国道3号線を下って一時間、熊本市内まで行ってきた。
夜が更けるにつれて、いろいろなイルミネーションが灯りだすと、
街はクリスマス一色に飾られる。街も人も、一年で最も華やぐ時だ。

冬銀河宛のメールを送信す    平川みどり


俳句のしりとり掲示板を作成しました。どなたでも参加できます。是非お出かけください。
こちらです→ 「はいく待夢ー☆」
by Midori(樹里) 
 

年忘

2010-12-17 | Weblog
  なんとなく尋ねて泣かれ年忘   鷹羽狩行

特に深い意味もなく、なにか尋ねてみたのだろう。
しかし、意外にも泣かれてしまったようだ。
どう慰めてよいのか、ただ途方に暮れるばかり・・・
たまたま隣り合わせに座った年若い女性だったのかもしれない。
忘れたいことほど、忘れられないものだ。
第十五句集、『十五峯』に所収。(Midori)