銀漢 2019-08-29 | Weblog 今日の兼題は、『天の川』。銀河と銀漢は、どこが違うのか、いくら調べてもその違いを明確にしている歳時記はなし。「漢」に「おとこ」の意味があるので、「銀漢」の方が、生命感がありそう。(Midori) 銀漢の中に心拍ありにけり
銀河 2019-08-25 | Weblog 妻病むと銀河に棲める銀の蛇 野見山朱鳥 「銀河」の捉え方には、大きく分けて二通りあると思われる。一つは、天体としての銀河、もう一つは、大河に見立てた銀河である。朱鳥の句は、後者だと思われるが、「妻病む」ことと、「銀の蛇」との因果関係の解釈が難しい。しかし解釈を超えたロマン溢れる妻恋の一句であることに間違いはなさそうだ。野見山朱鳥句集『朱』より抄出。(Midori)
残暑 2019-08-23 | Weblog 秋暑し頼まれ事に字引ひき 高浜虚子 『虚子俳話』の中の一句。昭和31年9月虚子82歳の作品である。大虚子といっても、残暑厳しき中、「頼まれ事に字引ひき」とは、晩年の多忙さを思わせるが、冷房も電子辞書もなかった時代である。ふとした虚子の心情が吐露されて楽しい秀句ではないだろうか。(Midori)
底紅 2019-08-19 | Weblog 「木槿」は、日常の景と取り合わせることの多い季語だが、「底紅」というと、特に母を思わせる季語。母の亡くなった歳に近づいて、「母」を詠むことへの抵抗もあるが、いくつになっても母は母。8月24日は、母の24回目の忌日。(Midori) 底紅の中より母の子守唄 *土曜例会、中正特選
8月号Ⅴ 2019-08-14 | Weblog 癒えしより総身めぐる初夏の風 杉本康子 「癒えしより」という喜びの時、いかにも健やかな「総身」が見えて来る。「初夏の風」に、若々しい漲りが感じられる一句。「阿蘇」8月号、山下しげ人選。(Midori)
8月号Ⅳ 2019-08-10 | Weblog 二の丸に二の丸の風薫るかな 武藤たみ クレーンの先夏空に変はりゆく 〃 熊本地震による倒壊から、急ピッチで進む熊本城の復興。どこそこに立ち入り禁止の柵が設けられているが、自然の営みは変わることはない。「クレーンの先」は、三度目の夏を迎えた。「阿蘇」8月号より抄出。(Midori)
8月号Ⅲ 2019-08-07 | Weblog 表現の縦横無尽麦の秋 岸川八重 「表現の縦横無尽」とは、何と思い切った表現だろうか。「表現」という言葉を使って、詩の世界を構築した作品が、これまであっただろうか?「麦の秋」と題された一幅の絵画でも見るような大胆な構図がとても魅力的。「阿蘇」8月号より抄出。(Midori)
8月号Ⅱ 2019-08-04 | Weblog 弓道の初段免状立葵 太田和代 地元、南関句会で出句された句。弓を引く凛々しい立ち姿と「立葵」の取合せに、いかにも若い女性を想像させるが、作者の自解はさてどうだったか?意外なモデルに一同驚いたような記憶も少し。彼女の句は、いつも多くの見識に基づいた作品ばかりで、毎回学ばさせていただくばかり。同時句、〈葉桜や終生軍歌唄わざる〉は今月号の2席である。「阿蘇」8月号より抄出。(Midori)
8月号Ⅰ 2019-08-02 | Weblog 会ふ人のみんな梅雨入の顔であり 岩岡中正 あまつさへ激震の地へ梅雨出水 〃 梅雨深ければ世に遅れたるごとし 〃 「阿蘇」主宰による〈近詠〉10句の中の3句。一句目、例年にない梅雨入りの遅さに、不安感が生じる中、やっとの梅雨入りに誰もがホッとした。そんな喜びの顔が、ここにある。2句目、熊本地震から3年目、「あまつさへ」に作者の無言の痛みが感じられる。3句目、地方にあれば尚更感じられる焦燥感。自然を根底に詠まれた社会詠には心を打つ。(Midori)