設計図で何を示すか・補足続き

2008-02-24 12:53:12 | 設計法

「古図にみる日本の建築」から、かつての「設計図」をもう一例。

上の図は、明和7年(1770年)に描かれたと考えられる「後桜町院御所」の「建地割図」の部分。
これは、後桜町院御所の造営にあたって、各建物の矩計を、1枚の紙の表裏に現寸で描いたもの。したがって、紙の大きさは、幅1尺5寸(約45㎝)、長さ27尺(約8.1m)という途方もない大きさ。多くの建物の矩計を重ねて描き込んである。

   註 後桜町院御所:後桜町天皇(在位1762~1770)の退位後の居所

建物を数棟以上同時に建てるとなれば、相互の高さ関係等の調整が必要で、それへの対応策として、各建物の矩計を1枚の紙にまとめて描くという方策を採ったのではないだろうか。

そして、各建物の工事は、建物ごとに、この図に基づいて「尺杖(しゃくづえ)」をつくり、仕事がなされたようだ。おそらく、この図と「指図」:配置・平面図:があれば、建物は施工できたのである。

   註 現在でも、自分で刻む大工さんは、
      建物ごとに「尺杖」をつくって仕事をする。


この図は、江戸幕府に京大工として抱えられていた中井家に所蔵されていた資料(通称「旧中井家文書」)の一。

なお、上の図の左列最上部と右列最下部とは重複しているが、これは、長大な対象を、書物の1頁に載せるため2列に分割せざるを得ず、それへの配慮と思われる。

また、上掲の図は、元図がA4判を超えているため、やむをえず2枚のスキャンを合成したので、左側最上部にズレが生じてしまっている。その部分は、右列最下部を見てください。

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