前回(1月9日)のブログ『Idle No More (1)』を出したすぐ後で、悪法C45 に強く反対してハーパー首相に直接面会を求めて拒否され、その実現のためにハンストに入っていた女性酋長テレサ・スペンスが、ハーパー首相の方が少し譲歩して1月11日に面会を申し出て来たのに対して、今度は、要求していた条件が満たされていないとして、彼女の方が会談を拒否したことを知りました。これは事態の重要な展開ですが、これを知ったのは、思いがけないPress TV というイランの国営テレビ局のウェブサイトからでした。
この放送局は、シリア情勢に就いて、シリア政府寄りの報道をするので、反政府武装勢力を全面的に支持する米欧側はこれを沈黙させようと試みています。昨年11月30日、シリアの首都ダマスカスでプレスTVなどの自動車6台が爆破されて炎上し、また12月20日には英国でプレスTVの放送ライセンスが取り消されました。プレスTVは米欧の世界マスメディア支配に対するイラン政権の対抗情宣活動の一翼を担っていることは明らかですが、全くの“大本営発表”ではないことは、この数ヶ月視聴を続けている経験から断言できます。どの報道機関にも特徴的な語り口のようなものがあります。国営的機関での、その良い例はキューバのGRANMA International やエリトリアのTesfaNews です。他にも沢山そうした興味深い例があるに違いありません。現場で仕事をしている人たちには、その気になれば、それなりのジャーナリスティックな自由空間が存在する筈です。そのあたりから、それぞれの報道機関に特有の一種の味わいのようなものが出てくるのでしょう。その意味から言えば、プレスTVとNHKのどちらがより忠実に“大本営発表”的か、分かったものではありません。プレスTVがINM(Idle No More)運動を素早く大きく取り上げ、NHKは殆ど何も取り上げようとしないのは、INMが反抗している暴力が、イランを苦しめている暴力と同じ、米欧(イスラエルを含めて)の帝国主義的植民地主義的暴力であるという意識をプレスTVのニュース報道編集員たちがはっきりと持っているからだと思われます。
INM運動を大きく取り上げている報道サイトに、もう一つ、VT(Veterans Today)という米国の退役軍人ジャーナルがあります。極めてアクの強い反イスラエル、反ユダヤの政治的発言体で、したがって、その筋から激しい非難攻撃を受けているので、ご存じの方もあるでしょう。この異色のウェブサイトとカナダ先住民のIdle No More運動との接点は何処にあるか。カナダの先住民人口は約120万,全人口の約5%、その内の数十万人は国内の「棄民」の状態にあります。アメリカの退役軍人は2600万人、全人口の約13%に上りますが、そのかなりの数が、やはり「棄民」的な状態にあります。退役軍人のホームレスの数が比率的に目立って高いことは度々指摘されていますが、精神的障害者、自殺者の多いこともVT(Veterans Today)が声を大きくして人々の関心を喚起しています。1月14日、アメリカ軍の新聞「スターズ・アンド・ストライプス」(我々の世代には懐かしい新聞)が、2012年の年間の米軍兵の自殺者数は349人でこれはアフガニスタンでの戦死者数を上回ることを報じました。このニュースはいち早くプレスTVの報じる所となりましたが、VT(Veterans Today) の主筆Gordon Duff は、これに就いての見解を発表して、この349人
http://www.veteranstoday.com/2013/01/16/press-tv-figures-describing-veterans-suicides-beyond-misleading-duff/
という数字がむしろ問題の本質を隠蔽していることを明らかにしました。ダフ氏によると、これまでに何万という数のアメリカ兵が不名誉な理由や精神障碍の故に除隊(discharge) を強いられ、民間人の身分に押し戻されて、退役軍人としての保障手当から外されて人生を狂わされてしまう場合が無数にあるといいます。そうした人々の自殺を含めれば、退役軍人の自殺者数は一年8、9千人にもなるだろう、だから、349人というまことしやかな数はマヤカシの数だとダフ氏は言うのです。このGordon Duffという退役軍人、実はプレスTVと密接な関係を持ち、しばしば報道記事を寄せています。上掲の記事の中にも、目を引く不思議な文章があります。:
■ Why Does Only Press TV Care About the Welfare of American Soldiers and Veterans? They are “Iran,” aren’t they supposed to be “the enemy?”?Is, just perhaps, someone lying to us? (なぜプレスTVだけがアメリカの兵士と退役軍人の福祉を気に掛けるのか? 彼らは“イラン”であり、“敵”であるはずではないのか?もしかしたら、誰かが我々に嘘をついているのかも?)■
ここでダフ氏の言説一般の信憑性を問題にする必要はありません。アメリカ軍の平の兵士の大部分がもともとアメリカの下層民出身であり、彼らが従軍中も退役後も一種の「棄民」として扱われて来たことは、ダフ氏から教えられるまでもなく、少し調べれば明白になる社会的事実です。ここに棄民的人間集団としての北米先住民の抗議運動INMをVT(Veterans Today)が積極的に取り上げる理由があります。同じ問題がそこにあるのです。カナダのレスブリッジ大学教授アンソニー・ホール(Anthony J Hall)の筆になる『アメリカ革命からアイドル・ノー・モアまで』と題する長い論文が1月7日付けのVTに掲載されています。ここにもVTジャーナルのINM運動への肩入れの強さが示されています。読み応えのある論文です。
http://www.veteranstoday.com/2013/01/07/from-the-american-revolution-to-idle-no-more/
今日はプレスTVやVTジャーナルのことに関わり過ぎて、肝心のINM運動の話の方が疎かになりました。明日はテレサ・スペンスがあくまでこだわる悪法C45の話から始めます。
藤永 茂 (2013年1月18日)
この放送局は、シリア情勢に就いて、シリア政府寄りの報道をするので、反政府武装勢力を全面的に支持する米欧側はこれを沈黙させようと試みています。昨年11月30日、シリアの首都ダマスカスでプレスTVなどの自動車6台が爆破されて炎上し、また12月20日には英国でプレスTVの放送ライセンスが取り消されました。プレスTVは米欧の世界マスメディア支配に対するイラン政権の対抗情宣活動の一翼を担っていることは明らかですが、全くの“大本営発表”ではないことは、この数ヶ月視聴を続けている経験から断言できます。どの報道機関にも特徴的な語り口のようなものがあります。国営的機関での、その良い例はキューバのGRANMA International やエリトリアのTesfaNews です。他にも沢山そうした興味深い例があるに違いありません。現場で仕事をしている人たちには、その気になれば、それなりのジャーナリスティックな自由空間が存在する筈です。そのあたりから、それぞれの報道機関に特有の一種の味わいのようなものが出てくるのでしょう。その意味から言えば、プレスTVとNHKのどちらがより忠実に“大本営発表”的か、分かったものではありません。プレスTVがINM(Idle No More)運動を素早く大きく取り上げ、NHKは殆ど何も取り上げようとしないのは、INMが反抗している暴力が、イランを苦しめている暴力と同じ、米欧(イスラエルを含めて)の帝国主義的植民地主義的暴力であるという意識をプレスTVのニュース報道編集員たちがはっきりと持っているからだと思われます。
INM運動を大きく取り上げている報道サイトに、もう一つ、VT(Veterans Today)という米国の退役軍人ジャーナルがあります。極めてアクの強い反イスラエル、反ユダヤの政治的発言体で、したがって、その筋から激しい非難攻撃を受けているので、ご存じの方もあるでしょう。この異色のウェブサイトとカナダ先住民のIdle No More運動との接点は何処にあるか。カナダの先住民人口は約120万,全人口の約5%、その内の数十万人は国内の「棄民」の状態にあります。アメリカの退役軍人は2600万人、全人口の約13%に上りますが、そのかなりの数が、やはり「棄民」的な状態にあります。退役軍人のホームレスの数が比率的に目立って高いことは度々指摘されていますが、精神的障害者、自殺者の多いこともVT(Veterans Today)が声を大きくして人々の関心を喚起しています。1月14日、アメリカ軍の新聞「スターズ・アンド・ストライプス」(我々の世代には懐かしい新聞)が、2012年の年間の米軍兵の自殺者数は349人でこれはアフガニスタンでの戦死者数を上回ることを報じました。このニュースはいち早くプレスTVの報じる所となりましたが、VT(Veterans Today) の主筆Gordon Duff は、これに就いての見解を発表して、この349人
http://www.veteranstoday.com/2013/01/16/press-tv-figures-describing-veterans-suicides-beyond-misleading-duff/
という数字がむしろ問題の本質を隠蔽していることを明らかにしました。ダフ氏によると、これまでに何万という数のアメリカ兵が不名誉な理由や精神障碍の故に除隊(discharge) を強いられ、民間人の身分に押し戻されて、退役軍人としての保障手当から外されて人生を狂わされてしまう場合が無数にあるといいます。そうした人々の自殺を含めれば、退役軍人の自殺者数は一年8、9千人にもなるだろう、だから、349人というまことしやかな数はマヤカシの数だとダフ氏は言うのです。このGordon Duffという退役軍人、実はプレスTVと密接な関係を持ち、しばしば報道記事を寄せています。上掲の記事の中にも、目を引く不思議な文章があります。:
■ Why Does Only Press TV Care About the Welfare of American Soldiers and Veterans? They are “Iran,” aren’t they supposed to be “the enemy?”?Is, just perhaps, someone lying to us? (なぜプレスTVだけがアメリカの兵士と退役軍人の福祉を気に掛けるのか? 彼らは“イラン”であり、“敵”であるはずではないのか?もしかしたら、誰かが我々に嘘をついているのかも?)■
ここでダフ氏の言説一般の信憑性を問題にする必要はありません。アメリカ軍の平の兵士の大部分がもともとアメリカの下層民出身であり、彼らが従軍中も退役後も一種の「棄民」として扱われて来たことは、ダフ氏から教えられるまでもなく、少し調べれば明白になる社会的事実です。ここに棄民的人間集団としての北米先住民の抗議運動INMをVT(Veterans Today)が積極的に取り上げる理由があります。同じ問題がそこにあるのです。カナダのレスブリッジ大学教授アンソニー・ホール(Anthony J Hall)の筆になる『アメリカ革命からアイドル・ノー・モアまで』と題する長い論文が1月7日付けのVTに掲載されています。ここにもVTジャーナルのINM運動への肩入れの強さが示されています。読み応えのある論文です。
http://www.veteranstoday.com/2013/01/07/from-the-american-revolution-to-idle-no-more/
今日はプレスTVやVTジャーナルのことに関わり過ぎて、肝心のINM運動の話の方が疎かになりました。明日はテレサ・スペンスがあくまでこだわる悪法C45の話から始めます。
藤永 茂 (2013年1月18日)
FBにシェアさせてください、宜しくお願いします。
10年近く前、オーストラリアのケアンズに寄港していたアメリカ海軍の兵士達を見ました。彼らは背があまり高くなく、白人でない子どもたちでした。職がなくぶらぶらしていた子を、スカウトマンたちが勧誘して兵士にするのですね。かれらがアメリカ社会の中で棄民された人たちなのでしょう。可愛い子たちが戦場で人殺しをしたり殺されたりするのです、無意味な戦場で心を破壊されてしまうのでしょう。
日本政府も徴兵制を叫んで威勢よくしています、その犠牲になるのが、小泉改革で作られた格差社会の犠牲者の子どもたちなのでしょう。作られた格差社会、作られた棄民、そして悲しい若い兵士達がたくさん生まれます。戦争で金儲けをしている人(人間ではないないですが)たちが、シャンペン飲んで札束を数えるのですね。狂った社会が、白昼堂々と出現しています。許せません。
INM運動を含めカナダの情報は報じられません。外国語が苦手な者にとって藤永先生が唯一の情報源です。やはり本の形で出版されて欲しいです。
ドヴィルパン元仏外相のマリ侵攻に対する非難を新聞で見ました。シリア、マリ、アルジェリア等について藤永先生に匹敵する論者を知らないので困っております。
御身ご大切になさって下さいませ。
元米財務省高官ポール・クレイグ・ロバーツ氏のブログで、「アメリカのマスコミがインターネット上の『信憑性がない』情報源」のレッテル張りを始めたと報告がありました。
ロバーツ氏のブログをはじめロシア・トゥデイやプレスTVなどを挙げて見苦しく喚いています。ロバーツ氏たちはすでに合衆国政府自身が公表済みの文書などで裏を取って発言してるのに、米政府べったりで裏とりの調査もろくにしないのあんたらマスゴミが信用できるだって?
盗人猛々しいですね ( ゚д゚)、ペッ.
元記事のURLはこちらです
http://www.paulcraigroberts.org/2016/11/27/the-western-war-on-truth-paul-craig-roberts/