私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

ベネズエラのコミューン運動(1)

2017-05-17 22:08:01 | 日記・エッセイ・コラム
 ベネズエラが大変なことになっています。今、米国が政権変換に最も力を入れているのはベネズエラのマドゥロ政権の打倒でしょう。「ベネズエラ」とグーグル検索してみてご覧なさい。明日にもベネズエラという国家が崩壊しそうです。ニューズウィーク日本版の記事を少し引用します:

http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2016/05/post-5123.php

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 原油の確認埋蔵量で世界一を誇るベネズエラの経済が、長年の社会主義政権のつけで崩壊寸前の危機にある。「経済的崩壊」が現実味を帯びてきたと言っていい。以下に、ベネズエラの状況を伝えた各メディアのレポートを紹介する。
1. ベネズエラ経済は、風が吹かれるクレーンのようなものだ。いつ倒れてもおかしくない。原因はただ一つ、同国の徹底した社会主義体制だ。米大統領選の自称社会主義者、バーニー・サンダースと彼の支持者が、なぜ身近にある社会主義の末路を気にも留めていないのか不可解だ。
[参考記事]南米の石油大国ベネズエラから国民が大脱走
 信じられないことだが、原油の埋蔵量で世界一のベネズエラが、今や原油を輸入している。ノーベル経済学賞を受賞したミルトン・フリードマンはかつて「もし社会主義政権にサハラ砂漠を管理させたら、すぐに砂が足りなくなる」と語ったが、ベネズエラの状況はその説明にぴったり当てはまる。
 社会主義政権の下、食料やトイレットペーパー、紙おむつ、薬などのあらゆる必需品の不足も深刻を極めている。すべて政府による計画経済や通貨統制、物価急騰が原因だ。
 IMF(国際通貨基金)によると、社会主義体制下の18年間に政府が浪費を続けたおかげで、ベネズエラのインフレ率は720%に達する。凶悪犯罪の発生率も世界最悪で、メキシコのNGOが発表した「世界で最も危険な都市ランキング」では首都カラカスがワースト1位になった。(2016年2月5日付「インベスターズ・ビジネス・デイリー」)
『肩をすくめるアトラス』の世界
2. 「飢えをしのぐために犬や猫、鳩狩りをする国民:ベネズエラでは経済危機と食料不足で略奪や動物狩りが横行」。(2016年5月4日付「パンナム・ポスト」見出し)
3. ニコラス・マドゥロ大統領が、操業を停止した工場の差し押さえや経営者の逮捕など、政府による取締りの強化を表明。(計画経済に移行したアメリカが衰退していく模様を描いた)アイン・ランドの小説『肩をすくめるアトラス』が現実に。(2016年5月15日付BBCニュース)
[参考記事]政府が商品を差し押さえて勝手に安売りの強引経済政策

4. 「瀕死の乳児にも投与する薬なし:機能不全に陥ったベネズエラの病院」
 ベネズエラでは経済危機の影響で命を落とす人が後を絶たない。とりわけ医療が危機的状況にある。ニコラス・マドゥロ大統領はついに経済緊急事態を発令し、国家崩壊の懸念もささやかれ始めた。
 医療現場は経済危機の影響をもろに受けている。治療に必要な手袋や石鹸がなくなる病院も出てきた。がん治療薬は闇市場でしか手に入らなくなってきている。電力不足も深刻で、政府は節電目的で公務員の出勤を週2日に制限した。(5月15日付「ニューヨークタイムズ」日曜版)
次のページ 社会主義とは血だまりで治療を待つこと
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これに続く2ページの論説を読んでご覧になるのも一興かと思います。
 今回、「ベネズエラ」とグーグル検索してみて分かったことですが、検索結果の第1ページから第10ページまで、マドゥロ大統領とその社会主義的政策を罵る記事ばかりで、それ以外の内容のものとして初めて出会ったのは第11ページ目の次の『ちきゅう座』というサイトでした:

http://chikyuza.net/about

http://www.labornetjp.org/news/2017/1494985804881staff01

 幸いに、ネット上には、ベネズエラについて、もっとバランスのとれた報道や論説も多数見つかります。https://venezuelanalysis.com がその一つです。次の『Venezuelan Revolutionaries Demand ‘Truly Communal State』と題する記事をぜひ覗いてみて下さい。ベネズエラのコミューン運動の最近の動きが分かります。ビデオもあります。

https://venezuelanalysis.com/news/13123

現在、人口3100万のベネズエラに、約4600の生活共同体協議会(communal councils)と約1600のコミューン(communes) があります。communal council というのは、ある地域社会の生活上の必要事項を、行政からの指図ではなく、住民たちが相談し、対処するための協議会であり、こうした協議会を持つグループがいくつか集まって、より大きな生活共同体が出来ると、一つのコミューンが成立します。このコミューン運動に参加している人々の数はおそらく総人口の1割ほどでしょうが、私には、この運動の盛り上がりは、ベネズエラの政局の将来を左右する力を秘めているように思われてなりません。

藤永茂(2017年5月17日)

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6 コメント

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ベネズエラ人民の闘いは続いています。 (海坊主)
2018-01-12 21:30:48
下記ブログにこの2017年におけるベネズエラの人々の闘いが要約されております。

鈴木頌の発言 国際政治・歴史・思想・医療・音楽 
「2017年、ベネズエラ人民はどう闘ったのか①〜③
http://shosuzki.blog.jp/archives/74449281.html
http://shosuzki.blog.jp/archives/74452865.html
http://shosuzki.blog.jp/archives/74465087.html

西側世界の視点から報じられるベネズエラのニュースは偏見に満ちたもので、私には読むに耐えられません。マドゥロ大統領が覚悟を持って自らに課した使命(故チャベスの後継者たれ)に最大限の努力を払って人々を導いていることがこの記事から伺い知れます。

西側世界から異端視されるベネズエラ。闘い続けることを運命づけられたチャベスの子供達。
かなり贔屓目には思える部分は感じますが、私はこれらの記事に触れ、久々に嬉しくなりました。
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Unknown (Executor)
2017-05-29 22:41:02
確かベネズエラ産の石油は硫黄分が多いため、上質の石油を輸入して混ぜて輸出していると聞きました。
石油輸入しているとはそのことでは?
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CIAによるクーデタあり (箒川 兵庫助)
2017-05-22 00:28:03
うろ覚えですが,ベネスエラの国難を見聞きするに付けて,CIAによるクーデタを思い出します。
2年前の2月だったと思いますが,クーデタがおこされ,失敗しました。アメリカ大使館員も数名国外追放になっています。おそらくCIA要員でしょう。

 ロシアが小麦を提供することが昨日報道されました(スプートニク日本語版)。ロシアはシリア紛争を抱える一方で,南米のレジーム・チェンジを防ぐべくいろいろ手を打っているのですが,7つの海に艦隊を送るアメリカ帝国主義の脅威を取り除くのは,容易ではないと思います。

 ベネスエラの次の標的は,アサンジ擁護のエクアドルか,ボリビアだと言われています。
 トランプ大統領は,ネオコンやWSあるいはCIAに恨みを買っているベネスエラまで手が回らないようです。
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出所怪しい、反政府派のお下劣レシピ (特命希望)
2017-05-18 10:21:37
>追いつめられた人々が持ち出したのは、究極のショック兵器、モトロフカクテルならぬ「大便カクテル」だ。中身はその名の通り。プラスチックボトルに人間の便と水を入れた新兵器である。(中略)
初めて使われたのは5月最初の週末。首都カラカスの郊外にあるロステケスの町で、デモ隊が国家警備隊の兵士たちに投げつけたのだ。報道によれば、兵士たちは戦慄し、嘔吐して、治安どころではなくなった。
>人々はオンラインであっと言う前に爆弾の「レシピ」をシェアしたので、新兵器は瞬く間に広がったと、スペイン語新聞エル・パイスは伝える。「政府が催涙ガスを使うなら、俺たちは排泄物を使う」というスローガンも生まれ、週明けまでには全国数都市とカラカスにも登場した。
http://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2017/05/post-7597.php
汚らしいスローガンと言い、PCかスマホか知らんが「オンライン」で獲得したと言い、出所はどこなんでしょうね(嗤)
あと、反対派は自身がコレラだか何だかで死ぬ覚悟をした上でのことなんだろうな?
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例によって歪曲報道の野田 香奈子 (特命希望)
2017-05-18 09:50:45
こんにちは。
ニューズウィークのベネズエラ報道の中に「野田 香奈子」なる人物の論調を見て「もしや」と思って調べました。
やはり奴でした。「ベネズエラで起きていること | 意味不明な国ベネズエラを読み解きます」なるブログです。
https://venezuelainjapanese.com/
ベネズエラの経済統計を曲解して事あるごとにチャベスや第五共和国運動派を中傷してばかりで、オリガルヒが未だに政治・経済に強い影響力を持っていること、アメリカ政府と癒着してることはなかったことにしようとしている輩です。
いつだったか、食料を大量に隠匿していた罪で逮捕された奴がいました。それを庇い立てして「チャベスの経済政策が悪い、いやむしろチャベスやマドゥロに近い支持者」などと言い張ってました。
私は「オリガルヒはおろか米政府と仲のいいサウジ王家が石油の生産量を左右して無茶苦茶した巻き添え、ベネズエラ政府は被害者」「食料隠匿は1000トンにもなる大規模なもの、政府の役人がやったらばれる、むしろオリガルヒのほうがやりやすいじゃないか」と資料を示して反論したのですが聞く耳を持たず。
残念ながら記憶があいまいですが、議論したのはたぶんこの3つのどれかだと思います。
http://venezuelainjapanese.com/2014/09/29/mythbusting/
http://venezuelainjapanese.com/2014/02/24/faq/
http://venezuelainjapanese.com/2014/06/03/whyprotest/
大体ニューズウィーク風情に連載してる時点でタカが知れてますわ。
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連帯経済 (グッキー)
2017-05-18 00:29:39
中南米は連帯経済が盛んです。協同組合方式、マイクロクレジット、地域通貨などです。
ベネズエラも政府が連帯経済を支援して居ます。生活共同体はこの一環として出来て居るのだと思います。
中南米発の連帯経済http://www.shukousha.com/column/hirota/2024/

世界ではスペイン、ポルトガル、フランス、カナダ、韓国、ブラジル、アルゼンチンなど連帯経済法を創って連帯経済を支援して居ます。

この中でも地域通貨が社会を変えて行く本命だと思います。
経済は通貨が決め手に成る。
残念ながらヴェルグルの奇跡のように、本格的に需要と雇用を増やすことを目的とした地域通貨は現在は有りません。

ブラジル、パルマス銀行https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%9E%E3%82%B9%E9%8A%80%E8%A1%8C

税金も給与も地域通貨で、不況脱却へ「ブリストル・ポンド」導入 英
http://www.afpbb.com/articles/-/2895660?pid=9360763

この他、いろいろな地域通貨が世界で行われて居ます。
これを発展進歩させれば不況、失業、貧困を根底から無くすことが出来ます。
http://blog.goo.ne.jp/gultuki24
すると人間が変わり社会が変わり文明が変わることに成ります。
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