私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

年が暮れ、年が明ける

2019-12-31 20:58:51 | 日記・エッセイ・コラム

 年が暮れ、年が明けます。万感去来。櫻井元さんが寄稿して下さったお蔭で、有難いコメントを四つ頂きましたので、まずはお礼をしたためます。 

津久井様

 米国コネチカット州、ニューヘイブンからのコメント、有難うございます。私も、カナダと米国で暮らした経験を持つものとして、いや、どの土地に住むとしても、個人のレベルでは、心に残る懐かしい経験がいくらもあるのが当然と思います。北米を支配する権力機構に対する私の反感は決定的ですが、連帯できる素地のある普通の人たちは沢山いると思っています。「自分の周りにいる友人、知人たちに、煙たがられないよう気を使いながら「知らしめる」ことを続けていこう」というお言葉は、まことに humane で心に沁みました。 

近藤英一郎様

 多くのことを教えていただいたのは私の方です。他の読者の方々のご参考までに、2011年3月9日付けの私のブログ記事『ハネケの<白いリボン>』:

https://blog.goo.ne.jp/goo1818sigeru/e/e4c0b4065ae527a36c00dbb3e1d834d6

の前半をコピーします:

「 昨年の暮れ、私のブログを読んで下さったウイーン在住の近藤英一郎という方から、次のようなコメントを頂きました。:

----------

もしお時間がお有りでしたら、ミヒャエル-ハネケの<白いリボン>という映画をご覧になって下さい。

ハネケは、昨今のオーストリアが誇れる唯一の人物です。

日本で上映中のようなことを耳に挟みましたので。

16年間中欧で暮らして、ヨーロッパ人(様々な階層の)の、芯部底部にたびたび触れ、その時の、何ともいえないザラッとしたグロテスクな感触がそのまま描かれているので、心底、驚愕しました。

日本の能の様な印象でした。 

映画がお好きのようですので、お知らせ致しました。 

佳き新年を

近藤英一郎(在ウィーン)

----------               」(引用終わり)

同じミヒャエル-ハネケ監督の映画<AMOUR, 愛>は、今では私が最も愛する映画の一つです。ハネケは「これは介護についての物語ではない。私は愛について語ったのだ」という意味のことを言っています。死ぬまで私はこの稀有の芸術作品を想い続けるでしょう。

한국에서 様

 韓国語でいただいたコメントを翻訳アプリで翻訳すると「한국에서」は「韓国で」を意味し、「선생께서는 후학들에게 늘 모범이십니다.」は「先生は後輩の学者にいつも模範です。」となりました。私は到底このお褒めの言葉に値しませんが、与えてくださった機会に、提案したいことがあります。この頃のご時世では、現職の学校教師はなかなか思った通りのことを発言できない雰囲気の中にあると思います。しかし、定年退職した我々老人教師はもう首を切られる心配もないのですから、いじめを受けやすい若い人たちに代わって、言いたいことをどしどし発言したら良いのではありますまいか。

 もう一つ、ついでに、以前(2017年3月9日)、ブログに書いた文章の切れ端を以下に再録させて頂きます:

「マレーシア当局が証拠不十分のまま拘留期限が切れたとして釈放した北朝鮮国籍の人は、たしか、Choiという名前でした。私が在職したカナダのアルバータ大学でチョイさんという韓国人の夫妻とお知り合いになりました。人間的に実に気持ちの良い立派なご夫婦でした。化学教室内の地位では、チョイさんは万年ポストドックのような立場、私は教授でしたが、理論化学者としての力量は、その鋭さにおいて、むしろチョイさんの方が上だったかもしれません。チョイさんのお父さんは終戦前の朝鮮で反日的な思想の持ち主として当局から睨まれた経験を持った人物だったようです。一方、奥さんのお父さんは京都大学出身で戦後の韓国政界とも関連があったと聞きました。前にも書いたことがありますが、チョイさんは「中国語と違って、朝鮮語の語順は日本語に似ているから」と私を励まして、朝鮮語の個人レッスンを始めてくれたのですが、私がダメで続きませんでした。今でも私はそのことを後悔しています。」

セコイアの娘 様

ご親切なコメントを戴くのは、これで3度目ですね。ご指摘の「ポリティカリーコレクトネスの呪縛」、全く同感です。私が尊敬する Paul Craig Robertsさんも頻りに嘆いていますが、「白いものは何でも悪い」とするのも、実に馬鹿げたポリティカリーコレクトネスの一例でしょう。白いものに良いものが沢山あります。白人にも立派な人たちが沢山います。

以上、この度いただいた四つのコメントについてお礼を申し上げました。 

 2019年の、私にとって最大の痛恨事はボリビアのモラレス大統領が国外追放されたクーデター事件です。これは、カルロス・ゴーン氏の日本脱出などとは比較にならないくらい重要な事件です。世界史的な意義があります。2020年についての私の最大の願いは核戦争の阻止です。もう一つ、踏み込んで言えば、核兵器廃絶の達成です。

 

藤永茂(2019年12月31日)


最新の画像もっと見る

1 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
あけましておめでとうございます (セコイアの娘)
2020-01-04 04:38:04
藤永先生、皆さま、
あけましておめでとうございます。

ご丁寧にコメントをいただき、ありがとうございます。年末から読み始めた先生の著作、毎晩読んでおります。実は、先生の書かれたものは、他の本と違い、読み進めるのに大変時間がかかります。というのも、書かれてあること、全て気になり、いちいちネットで調べながら読むので、一晩で2,3頁しか読めないこともあります。それだけ興味深いということです。
歴史認識があってこその現状認識になるわけで、そう思うと、我が子がアメリカの公立学校で一体どんな歴史教育を受けているのか大変気になります。そのことへの危惧をずっと抱いています。折に触れ、子供には学校で学ぶ歴史への懐疑について、話すのですが、正直なところ今のアメリカでそれを実行するのは大変勇気がいります。(高度なネット社会ですので、ネット上での思想チェックというのは、確実に存在すると思っています。)
先生は核戦争の阻止とおっしゃっていますが、まさに、今アメリカーイラン関係が緊迫しており、大変心配です。
今年も先生のブログ、楽しみにしております。
返信する

コメントを投稿