100空港時代 ―弟子屈飛行場廃止―

 6月4日に「南北で両極端」と題した小文を書いた。静岡空港開港を報じる日本経済新聞に掲載された「100空港時代 開けぬ視界」と云う記事に触発されて書いたものだが、件の記事には静岡空港が日本で98番目の空港であると書かれていたのであった。

 そのわずか一ヵ月後に今度は「空港、初の廃止」の記事。北海道の弟子屈町立弟子屈飛行場が9月24日で廃止になるのだと云う。静岡空港開港で98になった空港の数か97に戻ることになる。もっとも2010年年3月には茨城空港が開港予定だからまた98となるが、果たして日経の記事タイトル通り100港になるかどうかは怪しいところである。

 弟子屈飛行場は1970年にオープンした、摩周湖や釧路湿原の上空を巡る遊覧飛行のための飛行場であるが2007年度の利用客数は170人と少なく、テロ対策の為に2億円もの投資が必要な金属探知機やゲート設置を求められたことが廃止の決め手となったものである。しかしだ、この狭い日本に98もの空港があったとはまったくの驚きである。

 と、ここまで読まれて「空港」と「飛行場」という言葉の違いは何なのだ?と思われた方がおいでだとすれば、その方は素晴らしい方である。飛行場か空港、どちらかに統一せよと思われたかも知れないし、飛行場と空港はどこが違うのかと思われたかも知れない。

 この飛行場と空港、実は違うものとも云えるし同じものとも云えて、実はなかなか難しい問題なのである。

 飛行場とは航空機、つまり飛行機が離着陸する場所の事を云う。ICAO(国際民間航空機関)の定義では、「旅客、貨物などの輸送に使われ、港のような役割を持つ公共用の飛行場を特に空港と呼ぶ」とされているが、日本の航空法においては航空機の離発着の用に供する施設を飛行場と表記している。

 さらには空港整備法では空港を国際空港路線に必要な第一種空港、主要な国内航空路線に必要な第二種空港、地方的な航空運輸を確保するために必要な飛行場を第三種空港の三種に分けているが、上記三種のどれにも属さない「空港的な飛行場」も存在している。

 「空港的飛行場」の代表が小松空港である。小松空港はジャンボジェット(ボーイング747)も就航する2700mの滑走路を持つ立派な空港であるが、既述の空港整備法が規定する三種の分類に属さないため「その他の飛行場」とされている。法律上の分類では飛行場なのに、空港と詐称しているとも云えるな。

 同様に「その他の飛行場」に分類される空港には丘珠空港、米子空港、徳島空港、三沢空港があるが、いずれも航空自衛隊あるいは米軍との共用の飛行場である。またこれらの空港よりも短い800mの滑走路であるにも関わらず、奥尻、新島、神津島、小値賀、上五島の各空港は第三種空港に分類される立派な空港である。

 ここまで書くとますます混乱してしまうのだが、法律上の明確な規定が無いから仕方の無いことなのである。最も判りやすい言い方としては、飛行場が空港を含む大きな概念であり、その中で民間航空機の定期便が運航されている比較的大きな飛行場を「空港」と呼び、空港以外の定期便が運行されていない規模小さなものが飛行場と理解すれば「ほぼ」間違いないだろうと云うのが郷秋<Gauche>の結論である。

 このような議論は不毛だと思われる方もいるここと思うが、だとすれば、卑しくも日経は「空港、初の廃止」「国土交通省は10日、北海道の弟子屈飛行場を9月24日で廃止すると発表した」などと、用語の説明なしにやれ空港だ、やれ飛行場だと書いたことが非難されてしかるべきである。って、まっ、郷秋<Gauche>としては人の揚げ足を取って楽しむ言葉のお遊びみたいなものなんだけどね(^^;。


 梅雨が明けて一気に暑い夏がやって来た今日の一枚は、例によって記事本文とは何の関係もない、先週金曜日に撮影した箱根山中(GP-1が取得したデータによれば、標高611m)の清流。多少なりとも涼やかな風を感じていただければ嬉しいです。
コメント ( 0 ) | Trackback (  )
« どうした、ブ... トヨタとホン... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。