古いものは使うな?

 三洋電機が1970年に製造した扇風機からの出火が原因にお年寄りのご夫婦が焼死されたとのニュース。謹んで哀悼の意を表します。

 新聞報道によれば、「三洋は長期に使用した扇風機については、部品の劣化により、発煙・発火の恐れがあるとして、30年以上前に製造した扇風機の使用中止を呼びかけている。」(神奈川新聞)とのこと。

 「古くなったものは危険だから使うな」というコメントは、製造業者としては、いかにも無責任ではないか。出火した扇風機(EF-6EZ型)は670万台製造され、推定残存台数は6000-7000台だという。製造販売されたうちの0.1%に当たる台数が現在も大切に使われているということである。古い物は危険だから「使用を中止せよ」どころか、永年の愛用に対して、感謝の言葉の一つもあってよいのではないだろうか。

 Web上のニュースによれば、同社はこれまで、30年以上使用している扇風機について、使用上の注意などについて社告などで告知してきたということだが、新聞紙上の小さな社告では到底徹底できるものではない。社告をだしていたから「免責」であると、もし同社が考えているのであれば、一消費者として、郷秋<Gauche>は許しがたいな。

 ただ、消費者の側にも問題はある。これは電機器具だけではなく、ガス器具等についても言えるし、クルマも勿論そうなのだが、「機械は壊れる」という前提で、常に注意をするという意識に欠けているのではないかということである。

 中国製の粗悪なテーブルタップから発火して火事に至る事がある。確かに、無責任な国の無責任な会社が無責任な製品を造っていることに問題があるのだが、安いから、買う。郷秋<Gauche>も買う。でも、郷秋<Gauche>は気をつける。これは中国製だから、問題があるかも知れないと、時々発熱の状態や、異臭がしないかどうか確認する。定格電力の半分程度までしか使わない。また、埃がたまらないように、時々は掃除をする。

 別に、中国製のテーブルタップが必ず発火すると言っているのではなく、機械・機器類はいつ不具合を発生するかわからないから気をつけたほうが良いと言いたいのである。

 何に気を付ければ良いかと言えば、熱と音と匂い。困るのは火を噴くこと、極端な場合には爆発することである。だから発熱には時に気をつけたい。先に例にあげたテーブルタップなどは、多くの場合、許容電力は1500W(ワット)である。PC及び関連の周辺機器ならば3つや4つは平気だが、ポットと炊飯器を同時に使ったりすると、ほぼ1500Wをオーバーするから気をつけたい。電気ストーブは「最強」にすると1台でも危ない。また、ヘヤードライヤーも1000Wを越えるものが多いから、他の機器との併用は避けたい。

 モーターを利用した機器の場合には音にも気をつけたい。いつもと違い音がする場合には、何かの不具合があるということだ。そのまま使用を続けると発熱し、最悪の場合には発火の可能性がある。異音がしたら、すぐに使用を停止し、点検・修理だ。

 発熱は匂いで知る事もできる。匂いの原因は多くの場合、発熱であるからだ。発熱によりコードの被覆が匂いを発するケースが多い。現代の電気機器の筐体は多くの場合、プラスティックで出来ているので、熱によりプラスティック溶けかかり異臭を発するケースもある。

 「ドラムコード」と呼ばれる、延長コードがリールに巻かれた便利なものがあるが、これの使用にも注意したい。小電力の機器の利用なら不要な分のコードは巻いたままで良いが、電気ストーブのように消費電力の大きなものを使う時には、不要な分のコードも伸ばして床に広げておいた方が良い。巻いたままだと熱が発生し、長時間使っていると被覆の樹脂が溶けて発火する。郷秋<Gauche>は被覆が溶けて発火寸前のドラムコードを見た事がある。

 脇道に逸れたが、メーカーには、長期間安心して利用できる、信頼性の高い製品を造って欲しいのはもちろんだが、安易に買い替えを勧めるのではなく、長期間安心して利用できるように点検・修理の体制を整え、また、そのことを十分に広報して欲しいものである。また、それを利用する消費者にも、利用上の注意をよく読み、正しく利用することと共に、熱と音と匂いには常に注意して、事故のないように利用したいものである。
 

 今日の1枚は、昭和12年に建てられた「常盤台写真場」の写場。写真用の照明器具が未発達であったこの時代、太陽からの安定した光を得るために、写場を二階の北側に置いている。くもりガラスの入った大きな窓から入る光を使って撮影していたのである。[江戸東京たてもの園にて]
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