『考える人』 5年目へ

 発売のたびに紹介しているが、またまた新潮社の季刊雑誌『考える人』の2006年春号が4日に発売になった。なんと通巻第16号、つまり季刊のこの雑誌が初号以来丸4年を経過したことを意味するのだ。

 この『考える人』がいかに売れない雑誌であるかということは度々書いてきた(本画面右側のカテゴリ「本」をクリックしください。過去の3号について語りさらにblog化以前の記事へのリンクもあります)が、これほどまでに売れない雑誌が5年目入ることができるとは、全くもって同慶の至りである。

 どのくらい売れないかというと、郷秋<Gauche>が仕事帰りに立ち寄る文教堂では毎号2冊しか入荷しない。それも私が1冊購入するだけで、もう1冊は一ヵ月後になってもまだ書棚に「綺麗なまま」残されているという有様である。果たして秋葉原あたりの大型書店での売れ具合はいかがなものなのだろうか。

 さて、今号の特集は「直して使う」である。表紙がいい。古いロードレーサー(ブレーキレバーからワーヤーが伊勢海老の触覚のごとく伸びている。郷秋<Gauche>はこんな自転車が好き)やらプロムナードが所狭しと並んだ店で親爺がリア・ディレイラの調整をしている図である。うぅ~ん、いい雰囲気だ。

 残念ながら本文のほうに古い自転車を直して乗る記事はないが、古い楽器、机、本、建築物を直して使う話が九つばかり並んでいる。先に書いた古い自転車をはじめとし、古いクルマやオーディオセットを直して使う話が登場しないのが郷秋<Gauche>としては若干不満ではあるけれど、まっ、それは許すとしよう。

 特集の冒頭には「新しいものを買い、古いものを捨てる爽快感は否定できませんが。けれども、古くなったものを手直しして使う楽しみもまたたしかにあります。」と書かれてある。確かに。でも郷秋<Gauche>としては古いものを手入れしながら、直しなしながら使い込む喜びの方が大きいな。

 新しいクルマやカメラを手に入れたときの喜びは勿論大きい。でもそれよりも、慣れ親しみ手や身体にしっくりと馴染んだクルマの不具合が直ってきた時の喜びや、修理から戻って来た古いカメラにフィルムを入れる時の悦びのほうが深い、と思う郷秋<Gauche>は変わり者だろうか。

季刊誌「考える人」2006年春号発売中 新潮社
B5判 295頁 定価1,400円(税込み)
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